第十六章 やっかい事
「あんたら何者なんだい?」
「しがない旅人AとBです」
「そんなわけあるかい、 あんな魔法使う奴なんて見たことがないよ」
食後からずっとこの押し問答だった。
ついでにさっきの魔法って言うのは、 拳銃のことで~す(ゴム弾使用)。
「あの~ところでさっきの男達はなんだったんですか?」
話が進まなそうだったので、 こちらから話題提供をする。
「む、 まあいいか。 あの男達は、 このあたりに根城を持つ盗賊みたいな奴だよ」
「盗賊ねぇ」
俺の想像していた盗賊は、 ナイフを持って『金目の物を全部だしな!』的な感じの人達だと思っていたが・・・う~んカルチャーギャップですな。
「この村の村長が一週間ぐらい前に魔物に襲われて亡くなってから、 活発に行動するようになったんだよ」
「今この村に村長とやらはいないのですか?」
おばさんは首を縦に振った。
「村長がいたときはきちんとしてたんだけどね~」
「早く次の村長を決めて、 しっかり取り締まればいいじゃないですか」
「それがね、 盗賊団の奴らが『村長になったやつは殺してやる』だとか言っててね」
「なるほど」
盗賊団に殺されるのを恐れて誰も村長にならない。
そして村長がいない村で暴れまくる。
なかなか考えてるじゃないか。
「ところで物は相談なんだけど・・・」
おばさんが何か言い淀む。
この流れは・・・まさか!
「あんた達で盗賊の奴らを懲らしめてくれないかね」
はい! 来ました! お決まりの台詞!
しかし返事はもちろん!
「無」
「わかりました!」
「理・・・って、 え?」
急にしゃべり出したと思ったら、 ローラさん、 何言ってるんですか?
「そうかい! そりゃありがたい!」
おぉぉぉい! 何勝手に決めてんだ!
「ローラ、 よく考えたのか?」
ローラは胸を張って言い放つ。
「もちろんです! 困っている人は助けてあげないと、 ですよね!」
ローラが笑顔でこちらを見つめる。
おそらく、 あの森の中でのことを思い出しているのだろう。
そんな瞳で見つめられたら断れまい。 恐るべき眼力。
「・・・・・・はぁ、 わかりました。 できる限りの事はします」
おばさんが滅茶苦茶喜んでいる。 俺のやっかい事が増えるのがそんなにおもしろいか!
「じゃあ今から詳しい話を聞かせてください」
「まかせな」
と、 その前に。
「ローラ、 お前は先に宿に戻ってろ」
「なんでですか? 私も話聞きたいです」
「ダメだ、 子供は部屋に戻ってなさい」
そう言いながら、 ローラを食堂の外へ追いやる。
「ぷ~、 早く帰って来てくださいよ」
どうやらあきらめてくれたようで、 宿の方へと駆けていった。
「さてと、 話を戻しましょう」
「そうさいね」
テーブルに向かい合って座る。
「まず、 連中の根城がどこにあるのか知ってますか?」
まず場所がわからないと、 どうしようもないからな。
「確か連中、 この村からちょっと東のところにある洞窟を根城にしてるらしいさね」
「ふむ」
洞窟ねぇ、 やっと盗賊らしくなってきたぞ。
「相手の規模は?」
「確か、 一般人が十人ほどと、 それと魔法使いが二人ほどで、 計十二人だよ」
アウト! 俺の想像では、 盗賊に魔法使いはいないのだ!
「次に、 盗賊団の奴らがしてきたことを教えてください」
「村の商店を襲ったり・・・」
おばさんが下を向いて黙り込む。
次の言葉は検討がつく、 が、 あえて質問する。
「人殺しはしてないのですか?」
「村の男を・・・四人ほど」
四人・・・ねぇ。
そしてこの様子だと・・・。
「うちの亭主も殺されたよ」
ビンゴ、 最悪の予想が当たったな。
でも俺は慰めの言葉なんて持っていないし、 持っていたとしても、 どうこうなる問題じゃない。 だから話を続ける。
「わかりました、 では最後に一番大切な質問です」
「なんだい?」
おばさんが疑問の表情でこちらを見つめる。
そして少々の沈黙の後、 冷淡な声で言い放つ。
「村の男達を殺した連中は、 生け捕りにしますか? それとも・・・皆殺しにしますか?」
おばさんが目を見開いてから、 少し考えるように目を閉じる。
さて、 どんな答えが返ってくるかな?
本当にすみませんでした!
受験生なもんで、 勉強してたら、 更新が遅くなってしまいました。
今後ともこのようなことがあるかもしれませんが、 よろしくお願いします。