第十五章 食堂で
『創造魔法とは、 現代魔法の中で、 もっとも困難なものだとされている』
俺は創造魔法のことについて調べることにした。
攻撃魔法はもういらないし、 治療系の魔法も簡単なものなら扱えるようになっていたからだ。
『創造魔法には、 大量の魔力、 繊細なイメージが必要とされている。 たとえば時計を創るとする。 ここでイメージしなくてはいけないのは、 時計の表面だけでなく、 内側の構造まで繊細にイメージする必要がある。 表面だけのイメージだと動かないハリボテができあがってしまうわけだ』
「・・・なるほどね」
『しかし、 簡単なものなら、 魔力しだいで、 創ることができる。 たとえば剣。
これのイメージは、 鋭い刃をイメージするだけで、 中の構造などイメージしなくてもいいからである。 しかし、 剣一本創るのにも大量の魔力を使うので、 創造魔法はあまり実用的ではないと言えるだろう』
「ふむ」
どうやら創造魔法とやらを習得するのは大変そうだ。
「でも・・・使ってみたいよな~」
よし! 今日から訓練だ!
そんな決意をもとに、 集合場所へと足を向けた。
「シンジさ~ん。 こっちです!」
集合場所の宿の前には、 両手いっぱいに袋を持ったローラが立っていた。
「待たせた?」
「いえ全然」
そんなやりとりをしながら、 部屋に向かっていった。
「ふぃ、疲れました」
「ご苦労さん」
ちょっと考えたんだが、 この荷物全部持ち歩くつもりなのだろうか?
まあいいか。 それよりも目下の目標は。
「飯食いに行くか?」
「そうしましょう!」
向かうは昼飯を食べたあの食堂。
「お腹減ったですぅ」
相変わらずかわいいなと考えながら、 食堂に向かって歩くのだった。
「いらっしゃい! ってまたあんた達かい」
昼間のおばさんが、 大声で迎えてくれる。
「またご飯食べに来ました。 昼間と同じやつ二人前お願いします」
「はいよ!」
おばさんが厨房に駆けていく。
「何か興味のある本は見つかりましたか?」
「まあね」
「ちなみにどんな本だったんですか?」
「魔法の本なんだけど・・・創造魔法についてちょいとね」
「創造魔法! すごいですね!」
ローラが尊敬の意を込めたまなざしを向けてくる。
「いや、 使えるわけじゃないからね」
「でも属性魔法の時のように、 すぐに使えるようになると思います!」
「ありがと」
そんなやりとりをしている内に、 おばさんがハンバーグもどきを持ってくる。
「へいお待ち! 残さず食べるんだよ!」
「モチです!」
ハンバーグもどきをを食べるために、 ナイフとフォークと手に取った瞬間、 食堂のドアが勢いよく開け放たれた。
「よぉ、 くそババア、 さっさとここから出て行ってくれませんかねぃ」
一目見てわかった。 もとの世界で言うヤのつく人達だ。
「うるさいね! ないにされたって、 ここを出て行くつもりはないよ!」
ふむ、 どうやら立ち退きを要求されてるみたいだな。
関わるべきか、 関わざるべきか・・・。
面倒なことになるのはイヤだしな~。
なにやらゴチャゴチャ言っているが・・・はあ、 またこのハンバーグもどきををまた食うためだ、 一肌脱ごう。
ちょいちょい、 なんだねぇ君たち。 と言おうとしたが、 勢いよく立ち上がったローラにかき消されてしまった。
「ちょっと、 うるさいですよ! こっちは食事中なんです!」
一瞬食堂の時間が止まった。
そして、 数秒と待たずに再び動き出す。
「おうおうなんだお嬢さん! 俺らにけちつけようってか?」
ヤクザの一人がローラに詰め寄ってくる。
「こんなところで騒いでいたあなたたちが悪いんです」
ぷいっとローラはそっぽを向く。
「なんだとこら! って、 お嬢さんなかなかかわいい顔してんねえぇ」
ヤクザがローラのほっぺたに手を触れる。
「っ! イヤ!」
ローラがヤクザの手をはたく。
ヤクザは怒ったのか、 額に青筋をたてる。
「生意気なガキだな! おい! こいつを連れて行くぞ!」
なんでそんな結論にたどり着くんだ? 甚だ疑問である。
「誰があんた達みたいなのに連れて行かれるもんですか」
ローラがあっかんべをする。
やべぇ、 あれ滅茶苦茶かわいいぞ!
と、 そんなこと考えてる場合じゃないよな。
このヤクザ達の罪は、 俺たちの食事を中断させたこと。 それから・・・ローラの頬に触れたこと。
これだけあれば、 少々手荒なことになってもかまわないだろ?
「おい、 そこのカス共、 俺の妹に手を出すんじゃない」
警告をしつつ席を立つ。
「なんだとコラァ! 死にてえのか坊主!」
ヤクザはポケットからナイフを取り出す。
「「ひっ」」
声を上げたのはローラとおばさん。
「まずはてめえをズタボロにしてやるぜ!」
ヤクザAが勢いよく駆けてくる。
「無駄無駄」
人数は四人、 獲物は全員ナイフだろう。
ホルスターから、 M92Fを取り出し・・・ヤクザAに向かって放った。
パン! と言う乾いた音と共にヤクザAの悲鳴が食堂に木霊した。
「うぎゃあああああ!」
着弾地点は太もも。
しかしそこからは、 血は流れていない。
「やっぱ便利だなこれ」
今俺が撃ったのは鉛球でもなく魔法でもない、 あっちの世界から持ってきたゴム弾だった。
続けてヤクザB, C, Dの太ももにもゴム弾を打ち込む。
「「「ぎゃああああああああ!!!!」」」
「うるさいです! 食事の邪魔です!」
その言葉を聞いた瞬間ヤクザ達は悲鳴を上げなくなった。
おそらく、 ローラの言葉に逆らえば、 また撃たれると思ったのだろう。
しかしそいつはきついですよローラさん、 ゴム弾って言っても、至近距離なら骨を砕きますよ。
結局ヤクザ達は「覚えてやがれ!」と負け犬ムード満載の台詞を吐いてどこかに行ってしまった。
「これでゆっくり食べられますね」とローラ。
「あんた達・・・何者だい?」とおばさん。
はあ、 説明が面倒くさいな。
「とりあえず、 これ食ってからでいいですか?」
おばさんは首を縦に振ってくれた。
拳銃最強です!
魔法なんて怖くないぜ! って感じです。
さて、 シンジは創造魔法が使えるようになるのか?
そしてヤクザ達にまた出番はあるのか?
感想・・・欲しいです。