第十三章 森を抜けて
「ほら、 起きろ。 お~いローラ起きろ~」
「むにゃ、 交代ですか?」
「まさか、 もう出発するぞ」
「出発って・・・えええええ!」
ローラが大声を張り上げる。
「なんで起こしてくれなかったんですか?」
「いや~あんまり気持ちよさそうに寝てたもんで」
ちなみにこれは、 四割本当で六割ウソだ。
「近くの集落まであとどれくらい掛かるかわかる?」
ローラは何を言っても無駄だと悟ったのか、 大人しく答えてくれた。
「はあ、 たぶん歩いてあと・・・2時間ほどだと思います」
「ん、 じゃあ飯はそこで食うか」
ここでローラが訝しそうに俺を見る。
「2時間と言っても普通に歩いてですよ。 途中で魔物に会ったらもっと掛かります」
「まあ大丈夫だって」
そうですかといってローラは歩き出す。
「? 行かないんですか?」
こちらを向き言った。
「いや行くことは行くんだけど・・・」
喋りながらローラの前に移動、 そしてしゃがむ。
「何してるんですか?」
「いや、 おんぶするから乗って」
瞬間ローラの顔は真っ赤に染まった。
「い、 いやいや。 もう腰なら大丈夫ですよ!」
明らかに慌てるローラ。
「いや腰とかの話じゃなくて、 こうした方が早く着くかな~と思って」
「う~う」
結局承諾してくれたようだ。
ローラが背中に乗ったのを確認して立ち上がる。
「方角は?」
「こ、 こっちです」
ローラは、 右の方向を指さす。
「さて、 これから走るけど・・・しっかりつかまってろよ」
「? わかりました」
「それじゃあ・・・行くぜ!」
足に力を込めて大地を蹴る!
「にゃにゃ~」
ローラがかわいらしい悲鳴を上げる。
それもそのはず、 現在俺は相当な早さで森の中を駆けている。
いや、駆けているというより、 飛んでいるだな。
一度足を踏み出すたびに、 六メートルくらい飛んでいる。
「いやぁ、 爽快爽快!」
「ふにゃ~~~」
相変わらずローラはかわいいなと思った。
「見えてきました!」
そう言ってローラが指さす方向には村らしきものがあった。
「うまい食い物があるといいな~」
ちなみに洞窟を出発してからおよそ十分くらい経過。
「それにしてもすごい身体能力ですね」
「いや、 これ魔法だけど」
「魔法? シンジさん魔法が使えるようになったんですか?」
「まあな」
昨日の訓練でやりたいことはほとんどできた。
「一晩中訓練したかいがあったな」
「シンジさん一晩中訓練してたんですか!」
ローラが声を張り上げる。
「人間は生まれた時から魔力を持っていると言いましたが、 それは魔術を使うためでもありますが、 生命維持のためでもあるんです!」
「へぇ」
つまり魔力が無くなったら死ぬ、 ということだろう。
「体は何とも無いですか?」
心配してくれるローラ。
「ああ大丈夫、 すこぶる快調さ!」
どうやら安心してくれたようだが、 続けて質問された。
「ちなみに・・・今どんな魔法を使ってるんですか?」
「風だよ」
「風・・・ですか?」
ローラの頭の上にクエスチョンマークが出現する。
「こうさ、 風を丸めた球体を着地地点に発生させて、 それをバネみたいにして飛んでるんだよ」
「へえ~器用な使い方をするんですね」
身体能力が上昇する魔法も考えたが、 うまくイメージできなかったので代わりに風の魔法を代用した。
「到着!」
話し込んでいる内に集落に着いたようだ。
「ほら、 飯食いに行こうぜ」
「そうですね」
俺たちは、 食堂を探すことにした。
やっと森を抜けました。
次は集落でのお話です。
感想などよろしくお願いします。