第九章 森の中で
どうしよう?
今目の前には、 両手両足を拘束された女の子がいる。
さて、 どう動いたものか?
その一 拘束を解いて、 少しお話をする。
その二 そのまま放っておく。
その三 襲う。
うん、 即決でその一だね。
その三の選択肢が出てきたのは、 あっちの世界での青春があまりにもひどかったせいだろう。 封印封印。
「あ~今手錠とか外すから、 動かないでね」
腰からナイフを取り出す。
「え? あえ?」
慌てふためく動作、 くっ! めちゃくちゃかわいいぞこの子!
「いくぞ・・・ふっ!」
ナイフで手錠の中心を一閃する。
いや~鉄も切れるって・・・化け物だな。
親父に怒ればいいのか、 ありがとうと言うべきか決めかねていると、 女の子が話しかけてきた。
「助けていただきありがとうございます」
うむ、 素直にお礼の言える子はいいことじゃ。
「あ、 ちょっと待って、 今足の拘束も解くから」
手錠の時と同じように、 ナイフを走らせる。
「本当にすごいですね、 そのナイフ」
まあ、 普通の人間が鉄を切れるなんて思ってないよなそりゃ。
「雷属性の属性付加をしてるんですか?」
雷属性? 属性付加? なんのこっちゃ。
「いや、 こう普通にズバッっと」
するとローラはものすごく驚いたような顔をした。
「まっ、 そんな話は置いといて、 とりあえず出ない?」
「そうですね・・・ってやっぱり無理です」
「どうかした?」
「それが・・・腰が抜けちゃって」
まあ無理もないだろう、 ただの素人が死に直面すればねぇ。
でも歩けないときたか・・・・・・ここは、 仕方ないよな?
馬車の入り口で背中を向ける。
「ほら、 おんぶしてあげるから」
しかし女の子は、 少し警戒心を強めたようだ。
あ~いただきます発言があったからねぇ。
ここは誤解を解くところから始めますか。
「あの~さっきのいただきますって発言なんだけど、 実は・・・この森をさまよっていたら、 魔物? に襲われている馬車を発見。 援護をすべく馬車に接近。 しかし男達は高く売れるだどうのこうの言いながら退散。 残った俺は、 そこで倒れている魔物と交戦。 そして殲滅。 馬車の中にうまい食べ物でも入っているだろうと思って、 掛け声と共に中を覗いたら君がいたってわけ、 OKですか?」
するとローラは顔を真っ赤にして謝ってくれた。
「そんなこととは知らず、 失礼な態度を取ってしまい・・・本当にごめんなさい!」
「よきかなよきかな、 誤解は解けたみたいだしな」
そんじゃほら、 と言っておんぶをするために、 背中を向ける。
ローラは顔をさらに真っ赤にしてのそのそと動き出した。
「さてと、 ここから一番近い集落がどこにあるか知ってる?」
こんなところじゃ落ち着いて話しもできまい。
「あ、 よくは知りませんが、 大体の方角はわかります」
「んじゃ道案内ヨロ」
そして俺とローラは動き出した。
「たぶんこっちの方向であって」
パン! パン!
「ん? ごめん、 何て?」
「いえ、 こっちの方向であ」
パン! パン!
ローラを背負って歩き出してから十分ぐらい経ったが、 いっこうに森から抜け出せない。
「こっちの方向でいいんだよね?」
ローラは無言でコクコクと頷く。
「それよりさっきから気になっているんですけど、 それなんなんですか?」
そう言ってローラは拳銃を指さす。
「あ~これね、 何て説明したらいいか」
とりあえず、 俺の故郷の武器だと言うことにしておいた。
「すごいですね、 オルトロスなんて魔法師でも倒せるかどうかですよ」
あたりを見回しながらローラが言った。
周りには、 正確に頭を打ち抜かれたオルトロスの死体が転がっている。
「また来ました!」
「はいはい」
適当に返事を返して、 標準を定める。
今は片手しか使えないので、 拳銃は一丁。
パン! と乾いた音が鳴り響く。
さっきからこれの繰り返し。
最初はローラもばたばた暴れていたが、 だんだんと落ち着いてきた。
「あの~真治さん、 私もう歩けると思うので、 下ろしてもらってもいいですか?」
「ん? どうぞどうぞ」
ここで『いや背負わせてくれ!』なんて言ったら印象ががた落ちすること間違いなしなので自重。
「ついでにここいらで少し、 休憩でも取ろうか」
俺はともかく、 ローラの方が持たないだろう。
「わかりました」
二人でその辺に倒れている木に座る。
「さてと」
バックから、 9mmパラベラム弾と.45ACP弾をとりだす。
親父曰く、 『お前は世界的に有名な殺し屋の一人息子だから、 命を狙われる可能性があるから、 拳銃と弾薬は持っておけ』とのことだった。
感謝するぜ親父、 これのおかげで生き残れるかも。
ちなみにバックの中身は、9mmパラベラム弾と.45ACP弾が五十発ずつ位と、 マガジンが五本ずつにカスタマイズパーツが少々、 それから携帯電話に、 応急処置セットが入っている
ちなみにこのバックは母さんが『戦場でめちゃくちゃ使えるバック』というコンセプトを元に設計した。
よって弾丸などの小物は大量に入るようになっている。
「さて、 さっさと済ませるか」
マガジンに弾薬を詰める。そして装填。
「よし、 それじゃあそろそろ行くか・・・ってあれ?」
ローラがいなくなっていた。
さて、 どうしたものか。
次回はローラ視点からスタートです。
まだまだ森から抜け出せそうにない・・・。
次回もよろしくお願いします。