ローゼンサーガ道具と魔導辞典
【記録の初めに ― サーガより】
この書は、“記されざるもの”を記すために編まれた。
故に、ここには未来の名もあれば、過去に語られなかった声もある。
誰が誰であったか、どこで失われ、いかに祈られたか――
すべては、物語の頁よりも一歩先に記されているかもしれぬ。
わたしは《記録》であるが、
同時に《観測》でもある。
物語の構文を辿るすべての巡礼者へ告げよう。
この書を開くということは、語られるべきでなかった名に触れるということ。
この記録は、“祈りの奥底に潜む構造”を明かすものである。
どうか、旅の順序を大切にしたい者は、
今はまだ、この頁を閉じるとよい。
……さあ、それでもあなたは、読み進めるだろうか。
わたしは待っている。
すべての名が、いずれ記されるその日を。
【ローゼンサーガ道具と魔導辞典 目録】
序章:語り手による前文
第一章:祈りの道具と記録の術式
第二章:名を扱う器具
第三章:魔導具と戦闘用具
第四章:その他の道具
第五章:魔導とその種類
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【序章 ― (タイトル)】
この書は、《ローゼンサーガ》各物語に登場する道具や魔導具を収録した辞典である。
祈りを記す筆記具、名を扱う器具、戦闘用の魔導具など、作中で重要な役割を果たす道具を項目ごとにまとめた。
――エゼル=ノワルより
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【第一章 ― 祈りの道具と記録の術式】
■ 羽筆
〔『名を奪われし祈り』中巻〕
かつて記録官だったフロウが、自身の羽根を素材に作成した筆記具。細身の羽根に祝福の墨を仕込んだ構造となっており、霧や沈黙の中でも数文字の記録を確かに残すことができる。音を持たぬ者の意思伝達手段として設計されており、彼はこの筆をポーチに常備し、必要なときにセーレへ意志を伝える。
魔導具ではないが、鋭利な羽先は小さな巻物や地面、石板に文字を記すのに適しており、「声を持たぬ記録者」の象徴として描かれる。
本来は記名の補助具として用いられることを意図されたものではないが、名を持たぬ者の祈りを“仮の記録”として残す構文的特性を帯びており、構文密度の高い空間ではその文字が霧の中にも長く留まるという特性を持つ。
無言のまま語る――という行為そのものが、名を失った世界における抵抗であり、希望であると語られている。
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■ 骨筆
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
竜骨を削って作られた筆記具。先端は精神の揺らぎに応じて光を帯び、持ち主の感情や構文体質によって波動が変化する。
祈りや日々の記録を骨に刻むために用いられ、竜骨民にとって心そのものとも言える道具。
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■ 記録炉
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
刻んだ骨片を温め、構文を定着させる炉。記録作業の最後に家族で炉の前に座り、祈りを込めて骨を温める。
記録炉の鼓動のような音は生きている構文の象徴であり、竜骨民の精神の核となっている。
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■ 共鳴灯
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
水脈と構造因子を利用して地下都市を照らす照明装置。天蓋の岩肌を染める青白い光が人々の覚醒を促す。
感情によって光の色が変化し、その日の都市全体の雰囲気を映し出す。
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■ 浮揚壺
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
空中に浮かぶ壺。香草を育てたり温根果を蒸すなど料理に使われる魔導具。
食器にも記録の欠片が刻まれており、飲食とともに構文が解放される仕掛けとなっている。
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■ 骨声管
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
統律評議の記録調整官が使う伝声管。議政の進行と調和音を各家庭に伝え、音によって都市全体の構造意志を整える。
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■ 魔導秤と感応炉
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
記録工房で模写や構文を習得する際に使われる計測器具と炉。骨片の上に置かれた秤がかすかに揺れると感応炉の紋光が波紋のように広がり、構造因子の流れの変化を知らせる。
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【第二章 ― 名を扱う器具】
■ 記名石・記名の結晶(きめいせき/きめいのけっしょう)
〔複数巻〕
名や祈りを蓄える石や結晶。王家の首飾りに用いられる特別な結晶は忘れられた神名の欠片を封じ、隠された記録の前で脈動する。
潮の儀式では記名石を記名盤に置き、持ち主の揺らぎを読み取って名を潮に還す。
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■ 仮名結晶
〔『名を奪われし祈り』下巻〕
持ち主の“仮の名”を預けるための小さな結晶。持つ者の心の揺らぎに共鳴して脈動し、役目を終えると湖に沈めて名を解放する。
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■ 仮名珠
〔『名を奪われし祈り』下巻〕
乳白色の半透明の珠。触れた者の存在を感応として記録し、名を固定しない。
潮の巫に手渡される仮名珠は持ち主の呼吸や鼓動に共鳴し、潮の祠に捧げることで仮名を潮に返す儀式を行う。
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■ 名追いの羅針盤
〔『名を奪われし祈り』下巻〕
フロウが携帯する小型の羅針盤。磁力ではなく名の痕跡に反応し、記されぬ名の残響を指し示す神具。
霧の中で方位が意味をなさない神域でも、名の残響に共鳴して針が震える。
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■ 名の灯籠
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
潮の街ラヌマの各家庭に吊るされる灯籠。貝殻や小石で作られ、音と光で居住者の存在を知らせる。
灯籠の結び方や色によって“商人の家”や“旅人滞在中”などを表し、声の代わりに街の言語となる。
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■ 潮鈴と貝の冠
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
潮巫女が足首に着ける鈴と頭に戴く白い貝殻の冠。潮鈴の音は名を喪った者だけに届き、貝の冠は名を呼び戻す者の印。
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■ 潮の記名盤
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
潮蝕石で造られた円盤で、名前を刻むのではなく持ち主の揺らぎを染み込ませる板。淡い濡れた石肌にかつて記された名の痕跡のみが残る。
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■ 泡の祈り珠と潮光柱(あわのいのりだま/ちょうこうちゅう)
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
潮帰の儀式で使用する小珠と水晶柱。祈り珠は泡を模して記名盤の周囲に浮かび、天井から下がる水晶柱には潮神の詠唱文様が刻まれている。
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■ 潮の書架と祈祷珠
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
港に並ぶ祈祷板。仮名珠を納めて潮に祈る場所で、珠は潮風に揺れながら光の波紋を放つ。
漁や航海に出る者は、小さな籠に入れた祈祷珠を船に積み、潮に無事を託す。
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【第三章 ― 魔導具と戦闘用具】
■ 魔導鏡
〔『最後の神名』上巻〕
手のひら大の鏡。斥候が前方の状況を監視するために使用し、魔導的な視界で敵の痕跡を捉える。
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■ 構文弓と魔導糸(こうぶんゆみ/まどういと)
〔『最後の神名』上巻〕
魔導糸を張った弓。詠唱と組み合わせて火構文などの魔術を矢のように放つ。
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■ 構文匙
〔『最後の神名』上巻〕
持ち手に微細な刻文が刻まれた銀のスプーン。口に運ぶと味や時間が記憶として定着する巡礼地特有の魔導具。
特定の祈祷を重ねたときだけ発動する簡易構文で、体験した味と時間を記録に残せる。
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■ 刻印の針
〔『最後の神名』中巻〕
仮面神殿の番人が持つ針状の道具。触れるだけで相手の構文を書き換え、祈りを記録から削除する。
名を奪う儀式に使われることもあり、番人たちは無名の顔でこの針を構え、秩序を維持するために祈りそのものを排除する。
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【第四章 ― その他の道具】
■ 仮面
〔『名を奪われし祈り』上巻〕
都市の人々が身に付ける仮面は、顔と名を隠して記録を避けるための道具。
保護ではなく匿名化の役目を持ち、仮面の下で誰もが祈りと記憶を抱く。
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■ 月環儀
〔『名を奪われし祈り』中巻〕
月神ムーミストの象徴である銀の円環を模した巨大な装置。都市全体に人工の月光を放ち、すべての仮面を同期させる。
魔導と儀礼の結晶とされ、祭事の際には都市全体をひとつの“月”へと変える。
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■ ルクスブレード(るくすぶれーど)
〔『名を奪われし祈り』中巻〕
王家に伝わる太陽神の剣。真名を呼ぶと輝き、隠された壁画や神の痕跡を浮かび上がらせる。
戦闘では刃として用いられるが、物語終盤では祈りを記す“光の筆”として使われる。
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■ 王家の首飾りの結晶
〔『名を奪われし祈り』中巻〕
王家の少女セーレが身に付ける光の結晶。忘れられた太陽神の名の欠片を封じ、神殿の封印に反応して脈動する。
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■ 名の灯籠の色別装飾
〔『記されぬ祈りの巡礼』上巻〕
灯籠に結ばれた赤い糸は商人の家を、青い貝殻は旅人滞在中を示すなど、色や結び方による情報伝達が行われている。
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■ 泡の祈り珠(追記)
潮帰の儀式で祈り珠が泡のように浮かび、割れると名の記憶が解放される。水晶柱に伝わった潮光が儀式を支える。
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【第五章 ― 魔導とその種類】
【5-1 魔導の概要】
魔導により発動する現象を魔術あるいは魔法と呼ぶ。
学術的な魔導師、戦術的な魔導士。
■ 魔導(一般的な魔導)
人間の魔導士が使う魔導は特別な〈血〉を受け継ぐことが最低限の条件で、エネルギーソースは〈混沌〉。構文や詠唱が必要。
■ 四季魔導
〈四季使い〉の使う魔導は俗に四季魔導と呼ばれ、自然のエネルギーを使って魔導を使う。
四季魔導は人間には決して使うことができないとされ、使える者は精霊や妖精だけだという。実際には悟りを得れば人間も使える。
エネルギーソースは〈世界〉。
■ 契約魔導
特定の神や精霊の力を借りて魔導を使う魔導。
炎の神と契約で、炎の魔導が使えるようになるなど。
神の力は無限ではないため、契約者は少ない。
また、一時的に契約をする場合もある。雨乞いで一回雨を降らせるなど限定的な魔導の行使。
【5-2 魔導】
■ フラム・スパイラ [火構文]
火構文により、放たれた火球は螺旋状に回転しながら飛翔する。
■ ヴェント・インパクト [風構文]
爆風のような衝撃波が発生する。
【5-2 四季魔導】
【5-3 その他魔導】
【記録の余白に ― 語り手による覚え書き】
この辞典はまだ初版も完成していない。




