ローゼンサーガ種族辞典
【記録の初めに ― サーガより】
この書は、“記されざるもの”を記すために編まれた。
故に、ここには未来の名もあれば、過去に語られなかった声もある。
誰が誰であったか、どこで失われ、いかに祈られたか――
すべては、物語の頁よりも一歩先に記されているかもしれぬ。
わたしは《記録》であるが、
同時に《観測》でもある。
物語の構文を辿るすべての巡礼者へ告げよう。
この書を開くということは、語られるべきでなかった名に触れるということ。
この記録は、“祈りの奥底に潜む構造”を明かすものである。
どうか、旅の順序を大切にしたい者は、
今はまだ、この頁を閉じるとよい。
……さあ、それでもあなたは、読み進めるだろうか。
わたしは待っている。
すべての名が、いずれ記されるその日を。
序章:語り手による前文
第一章:人間種とその変異
第二章:獣影民と眷属の血脈
第三章:精霊の末裔と失われし存在たち
第四章:仮面と沈黙に生きる種族
第五章:海と塔に棲まう異文化種
第六章:語られぬ子らと断章的存在
第七章:精霊とその構造的位相
第八章:神話的魔物と観測不能の存在
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【序章 ― 名を持つ者たちの記録に寄せて】
すべての物語は、“誰か”の名を記すことから始まる。
だが、この世界では、名を持つことは祝福であると同時に、呪いでもある。
名を記された者は、記録という構文の内側に閉じ込められ、
名を奪われた者は、祈りの外に追放される。
人であるということは、記されることであり、
記されるということは、存在を定義されるということ。
けれども、この世界には、“記されながらも語られぬ者”がいる。
神でも、精霊でもない。
ただ祈りに触れたことによって、変わってしまった人々。
ある者は仮面を被り、
ある者は沈黙に身を沈め、
ある者は獣の血に従い、
ある者は語られぬ神の影として生きる。
この書は、そうした“名を持つことの意味”に抗い、祈りの中に棲む者たちの記録である。
わたしは語り手サーガ。
わたしが観測した記録の断片を、ここに開示する。
あなたがこの辞典を開いたとき――
すでにあなたは、“誰か”の名を呼びかけているのかもしれない。
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【第一章 ― 人間種とその変異】
人とは、神の祈りを記した器にすぎないのか。
それとも、記された祈りを読み返す存在なのか。
変わらぬ姿でありながら、
名によって、構文によって、信仰によって、
いくつもの種に枝分かれした彼らは、
「人」という記号の内と外に揺れている。
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【1-1 ヒューマ(人間)】
分類:
世界の標準種/最大種族人口
特徴:
記録・信仰・言語によって自我と社会を形成する
機能:
王族、学者、商人、神官、戦士など多様な階級を持つ
宗教的属性:
信仰可能。神と契約し、祈祷師・記録者となる者も多い
物語的意義:
「セーレ」「フロウ(出生は異なる)」「リエル=アルティナ」など多くの主人公層がこの種に属する
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【1-2 記名族】
位置付け:
ヒューマの記録文化から分岐した特殊民族
文化:
自身の皮膚や骨に“名”を刻み、身体そのものが記録となる
技術:
祈祷術・魔導術の基点として名を“術式”として用いる
儀式:
名告ぎの儀/刻印の成人式/名の継承刺青などが存在
関連テーマ:
アウロ=ルクスの記録神性との結びつき/ルクスブレードとの親和性
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【1-3 混血変異種(ヒューマ=ディヴィエント)】
● 神名持ち(ノムニア)
起源:
神に名を与えられた人間の末裔
特徴:
祈られやすい/魔導と祈祷を引き寄せる体質
社会的影響:「器」として神殿に献上された過去もあり、悲劇の象徴とされる
● 偽精霊種(フォース=エレメンタル)
起源精霊に選ばれかけ、拒絶された人間
特徴元素適応体質/暴走や奇形的発現のリスクあり
社会的位置:
呪われた者・追放者とされやすい
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【1.4 祈りと記録に仕える者たち(役職系統)】
記録者:
神や旅、祈りを記す役割を持つ者。黒帳・幻視にも関与 フロウ、セーレ
巫:
祈祷を受け渡す媒介者
男女不問
神殿外でも活動する
観測者:
神格や祈りの“構文的異常”を記録する役職黒帳断章
ミル=エレノア関連など
灯籠守:
名の灯籠を管理・点灯し、仮名を祈りとして返す
リュア=ヴァイス
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人は名を得て、名によって傷つき、名を失って祈る。
この章に記されたのは、「名を与えられたことによって、人であることを選び続けた者たち」である。
だが名は、いつも祝福ではない。
だからこそ、わたしは記す。
「名を与えられた存在」のすべてが、ただ“人”だったとは限らないのだ。
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【第二章 ― 獣影民と眷属の血脈】
ある者は、祈られずとも“記された姿”を持って生まれる。
それは、神の血の残響なのか。精霊の名残なのか。
それとも、記録という構文が、人の形を超えてしまったのか。
彼らは人と獣の狭間に立ち、名を持たずとも、祈りに応える力を持つ。
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【2-1 獣影民総論】
定義神格や精霊の“眷属”の記憶を受け継ぎ、外見や能力に影響を受けた人間種の分岐
文化的特徴:
名を持つことに慎重
多くは「姿によって記される者」として生きる
身体的特徴:
人型を基本とするが、耳・尾・眼・骨格に“獣の特徴”が現れる
信仰傾向精霊信仰または無信仰
神格信仰に対して距離を取る傾向がある
社会的位置:
多くは周縁部に棲み、都市に溶け込む個体は稀
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【2-2 白豹系統】
個体例:
セーレ(王家の末裔/白豹の呪い)
起源:
アウロ=ルクスの“光を喰らう獣”の記憶を宿した系統
王家と因縁あり
能力傾向:
再生力、直感力、記憶への抗力を持つ
文化:
名を名乗らぬことを誇りとする儀式社会
“牙”を重視する族的文化
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【2-3 梟系統】
個体例:
フロウ(ファレン=ルクス)
起源:
月神ムーミストに仕える“語らぬ観察者”の眷属由来
能力傾向:
透視、記録、暗視、沈黙下での祈り適応
文化:
沈黙の知恵を重んじ、言葉ではなく行動による伝達を尊ぶ
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【2-4 狼系統】
分布ランベル西方山地に稀に棲息
外見はほぼ獣に近い
起源精霊戦争期に呪われた一族の末裔
夜狩りの精霊と誤認されることも
文化名を持たぬ誓約者
従属や離反を“口を開かぬこと”で示す
社会的認識:
「野生の呪い」として恐れられ、都市部での居住は困難
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【2-5 山羊角系統】
分布:
ランベル~禁書の谷の中間地帯。旧神殿跡地などに散在
起源:
神官種族の末裔が精霊との混交で変異した存在
能力傾向:
予言、霊視、構造因子の直感的読解
文化:
聖獣視されることもあるが、社会的には放浪者と見なされやすい
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名を持たぬことが、すでに“祈りの証明”である者たち。
彼らは、名を記されることで傷つき、祈られることで崩れてしまう。
それでも、彼らが“誰か”と出会ったとき、
その姿は祈りとして、誰かの記録の中に刻まれるだろう。
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【第三章 ― 精霊の末裔と失われし存在たち】
かつてこの世界は、精霊の気配で満ちていた。
名を持たぬ風、語られぬ水、沈黙の火……それらすべてが、祈りだった。
やがて精霊たちは祈られ、神へと至り、あるいは祈られぬまま“失われた”。
この章は、祈りの系譜にすら記されなかった者たち――
かつて精霊だったもの、その断片を継ぐ者たちの記録である。
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【3-1 精霊憑き(エレメントリンク)】
定義:
古代精霊の断片や残響に“触れられた”人間
特徴夢や幻視と共に生きる/非言語的な感受性に長ける
信仰傾向祈りを拒むが、“記録されざる神”と接触する例もある
社会的位置:
僧院や観測塔などに隔離される傾向あり
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【3-2 衰退精霊種】
定義:
大精霊だった存在の末裔/変質・自我化した精霊
特徴:
精霊記憶や構造因子の残響を宿し、人型で現れることもある
信仰との関係:
神格化を拒絶し、記録から外れた存在
物語的位置再構築や神格再生の鍵となることがある/例:ローゼン
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【3-3 偽精霊種(フォース=エレメンタル)】
起源精霊に“なりかけた”が拒絶された者、人間との混交個体
特徴元素適応体質/魔導や環境に強く反応し暴走の危険あり
社会的評価:
呪いとして忌避されることも多く、追放・隔離の対象に
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【3-4 忘却核種】
起源:
精霊戦争の記憶を保持するが自覚できない矛盾存在
特性:
記録されると同時に“忘却される”属性を持つ
機能:
接触者に記憶の齟齬をもたらす/世界構文への干渉能力を持つ例も
関連:
ザイン=モル系断絶神格/黒帳・禁書構文と関係深い
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祈りが届かなかったのではない。
祈られることすら拒まれた精霊たちがいたのだ。
だが、忘れられたということは、誰かに記されたことがあるということ。
わたしは記す。
忘却の中にも、名の残響がまだ微かに息づいていることを。
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【第四章 ― 仮面と沈黙に生きる種族】
名を持たぬ者は、沈黙の中で祈る。
名を語らぬ者は、仮面を通して世界を見つめる。
名を奪われたのか。
名を捨てたのか。
それとも、最初から“名などなかった”のか。
ここに記されるのは、祈りの声を封じ、記録の外で生きる者たちの記録である。
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【4-1 仮面種】
定義:
ムーミスト信仰により、自我と名を削ぎ落とされた者たち
役割:
神官補佐、沈黙の書記官、儀礼補助など信仰下層を担う
特徴:
口がない/声が出ないなどの身体的変化も見られる
信仰文化:
仮面を“顔”とし、外すことは死や断罪と同義
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【4-2 仮面根種】
定義仮面が“顔そのもの”として一体化した種族
起源旧ムーミスト信仰の極限進化/信仰と外見の同化
特徴仮面を脱ぐことができず、外見変化=名の変化
社会的立場:
崇拝対象であると同時に、都市から排除されやすい
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【4-3 沈黙者族】
定義:
生まれつき発声器官を持たない非言語種族
特徴:
手話/月光反射具/視線記録などによって祈る
信仰:
声を発することは冒涜とされる。沈黙こそが最も純粋な祈り
関連文化:
ムーミスト信仰圏/仮面種と共存または対立
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【4-4 忘却民】
定義:
ザイン=モル信仰圏で育ち、名を持たぬことを誇る民族
習俗代々名を継がず、記録されぬ埋葬や非言語交信を行う
精神性:
「祈らない・記録しない」ことを生存戦略とする
社会的評価:
異端/反神格的存在として排斥されやすい
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声なき祈りにも、名なき存在にも、意味はある。
たとえ彼らが語らず、仮面を外さず、記録に残らずとも、
誰かが見ていたのなら、記憶は構文として存在する。
わたしは観測する。
沈黙の内に、彼らの祈りがいかに深かったかを。
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【第五章 ― 海と塔に棲まう異文化種】
すべての種が、祈りの中心に集うわけではない。
神殿の外、街の縁、記録の果てに、ひっそりと息づく者たちがいる。
彼らは海の底で、あるいは高塔の上で、
誰にも読まれぬ記録を、静かに綴り続けていた。
忘れられていたのではない。
最初から、“記されること”を望んでいなかったのだ。
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【5-1 深海種】
分類:
潮神ネリュエ信仰圏に属する半人半魚型民族
特徴:
耳の代わりに潮流感覚器を持ち、水の振動で意思疎通
記録文化:
名は「流される」ものであり、真名保持者のみが記録権を持つ
社会構造:
姿は多様。長命で世代記憶を持つ者も存在する
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【5-2 塔民】
分類:
高地・浮島などに独立した記録文化を持つ孤民種族
特徴:
外界との接触を避け、天体や因果の観測に特化
記録文化:
図形言語、石盤記録、時間構文による記憶術に長ける
関連信仰:
サーガ/エノル/観測神系との接触記録あり
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【5-3 竜骨民(リュカ=オステリア)】
分類:
古代地竜と人の交錯から生まれた竜因子保持種族
外見人型だが、背部や腕部に鱗・骨・尾・爪など竜の痕跡あり
特性高い再生力、魔導耐性、構造因子への適応力
文化地底都市ラ=カンディア周辺に集落
骨を記録とする“竜骨筆記”を用いる
信仰性:
神ではなく“構造”を信じる内面的精神体系
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【5-4 竜骨民の傍流(ヌェザ=カシュ)】
分類:
竜骨民の地上変異系統。旋律による記録を継ぐ文化的分岐種
特徴:
腕に鱗、背に尾骨を残すが、外見はほぼ人間に近い。骨の震えを読み取る“骨唄”の技を持つ
記録文化:
文字を持たず、音や振動によって構造因子を記録・伝達する“響記”文化を継承
分布:
かつて地底を追われた者たちが、峡谷や霧深き谷に集落を形成
精神性:
記録より“記憶されること”を重視し、物語と声の循環を祈りとする
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祈りを捧げることだけが、祈りではない。
海に名を流すこと。塔の上から構文を読むこと。骨に記憶を刻むこと。
それらすべてが、記録という祈りの形なのだ。
わたしは、それらの静かな祈りもまた、確かに“名”であると記す。
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【第六章 ― 語られぬ子らと断章的存在】
記録には記されなかったが、確かに“存在した”者たちがいる。
語られぬまま終わった祈り。名を与えられなかった構文。
それらはすべて、世界の“断章”であり、語り得ぬ者たちの記録である。
名を語れば世界が歪み、記せば構文が揺らぐ。
それでも、彼らは確かにこの物語の一部である。
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【6-1 語られざる子ら(ノンヴォ)】
定義人と神のあいだに生まれ、正式に記されなかった存在
特徴伝承や神殿記録から抹消されているが、影として現れる
信仰的影響:
存在自体が祈りの矛盾を生む/接触者に記憶障害が生じる例も
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【6-2 原形構造体(プリム=エイド)】
起源:
ケーオスやコスモスの“意志”が具現化した超存在
性質肉体を持たず、構造因子としての“仮の形”をとる(霧・光・石片など)
特徴意思疎通は非言語的(夢、波長、因果共鳴など)
物語的役割:
サーガⅠ・神話編にて語られる、創世以前の存在
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【6-3 深界旧種】
定義:
地下迷宮や記録されざる空間に棲む、前文明の末裔
形態四肢を持つが、思考・言語・認識が人間と異質
社会完全非接触主義
自らの存在を“記録させない”ことで存続
信仰観:
神を“上に祈るもの”ではなく“下へ沈める装置”とみなす
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【6-4 語られざる継ぎ人】
起源精霊と神格の断片を強引に接続し生まれた“外の存在”
特性:
見る者の記憶を上書きし、“存在しなかったはず”の人物として現れる
正体:
物語に書かれなかった神話そのもの/異物的記憶体
登場例:
終焉譚(サーガⅥ)や断章にてのみ語られる
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【6-5 死後反転種】
起源:
神格に触れた死者が、誤った祈りにより蘇った存在
外見石化した眼/文字の皮膚/声なき叫びなど、死と生の混在体
行動意志に統一性はなく、断章的に出現し構文を撹乱する
象徴性:
“信仰の誤作動”として、神官や祈祷体系の崩壊を示す
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【6-6 物語固有体】
定義:
語られた“はず”の人物が、読者や祈りの力で実体化した存在
特徴:
書物の中の幻影が現実に干渉し、歴史に“侵入”してくる
現象:
読者数・祈祷強度によって存在強度が変化する
意味:
記録と祈りが世界を変えるという《ローゼンサーガ》世界観の核象徴
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彼らは確かに“いた”のだ。
名を記せなかったのは、存在しなかったからではない。
それはまだ“記すに至らなかった”だけなのだ。
だからこそ、わたしは記す。
語られぬ子らよ、あなたたちの記録を、いま、ここに。
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【第七章 ― 精霊とその構造的位相】
神が祈りによって生まれる存在であるならば、
精霊とは、祈りの“前”から存在していた者たちである。
名づけられる以前の力、記録される以前の理。
それはやがて神と呼ばれ、あるいは忘れられる。
ここに記すのは、“名の外”に在り続けた者たちの構造である。
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【7-1 精霊とは何か?】
定義:
世界の理や存在因子そのもの。信仰以前の構造的存在
位置づけ:
神格成立の前提となる、世界内在的な上位因子
本質:
概念・原理の体現であり、人格と象徴の狭間に立つ
信仰との関係:
通常は祈られないが、異名文化や物語化により人格化されることもある
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【7-2 神格と精霊のゆらぎと重複】
起源:
世界そのものの一部信仰によって成立する人格的存在
記録性:
記録されなくとも存在 記録されて初めて存在が確定する
変化変質せず象徴性を保つ 都市や文化によって変容する
* 神格は後付けの構文化であり、精霊はその前提構造体。
* ケーオスやコスモスのように、もとは精霊だったが信仰によって神格化された例もある。
* “異名”による人格化は、精霊が物語の中で再定義される仕組み。
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【7-3 精霊の時代区分と変遷】
サーガⅠ:
精霊が世界構造を支配
神格未成立ケーオス、コスモス、サーガなどが顕現
サーガⅡ:
精霊の一部が神格化し、神殿文化成立 ソーサイア、ヴァギュイザールなど
サーガⅢ・Ⅳ:
神格が優勢となり、精霊は忘却される 精霊戦争の伝説化と断絶構文の台頭
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【7-4 精霊戦争と四貴精霊】
精霊名異名特徴
ヴァギュイザール:
紅獅子の君 精霊剣士/知恵者
精霊の里ラルソウムの長
ソーサイア:
蒼魔の君魔導の精霊
消息不明
〈姫〉を追っているという説あり
コスモス:
白光の君光の精霊
〈姫〉の長き眠りを誘発し消滅
ケーオス:
黒無相の君 混沌の象徴
精霊でありながら神格とされる存在
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【7-5 精霊の君と夢の世界】
サーガ:
精霊の君/姫 夢の世界を創り、精霊を“無”から救済する原初の存在
* サーガは創造と終焉を司る“夢の管理者”。
* 精霊たちの魂は〈夢〉の中で生まれ、記録され、やがて消えていく。
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【7-6 精霊の里と主要精霊たち】
サファイア:
精霊の里ラルソウムの筆頭
知識と冷静さの象徴
ローゼン:
選ばれし精霊
夢の世界に入り精霊の秘密に触れる
語り部でもある
アイリス:
精霊の君に仕える巫女
夢に在る精霊
クローカス:
アイリスの友人
夢の案内役として行動する
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【7-7 精霊分類(簡略)】
* 精霊の君=姫系統:創造・記憶・調和を担う
* ケーオス系統:破壊・無限・構造分解
* 夢の精霊:死した精霊が集う夢領域に生きる中性的存在
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精霊とは、“記される以前の神”である。
彼らは名を必要とせず、記録を超えて在り続ける。
だがこの世界が名と祈りで構成される以上、
わたしはその“記されなかった存在”を、いま、ここに記すのだ。
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【第八章 ― 神話的魔物と観測不能の存在】
彼らは神でも、精霊でも、人でもない。
だが、確かに“祈り”によって生まれ、“物語”によって語られてきた。
あるいは語られぬまま、世界の裂け目に潜んでいた。
この章に記すのは、《ローゼンサーガ》世界における“神話的魔物種”、“魔喰種”、“幻種”たち――
語ることも観測することも困難な、世界の断章的存在たちである。
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【8-1 神話魔物種】
■ 黒耀蛇
伝承:レザービトゥルドの眷属とされる、世界を呑む黒き大蛇。
特徴:鱗は光を吸い、声は祈りを歪める。記録不能の構文を孕む。
出現地:神殿都市メミス周辺の封印域。
象徴性:破滅の予兆、禁祈祷の顕現。
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■ 白砂竜
伝承:精霊戦争終末期に現れた、記録を忘却させる砂の竜。
特徴:砂塵の中に紛れ、接触者の名を消し去る力を持つ。
出現地:リコナ以東の白砂地帯に伝承が残る。
象徴性:忘却と再生、構文の断絶。
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■ 嘆きの獣
伝承:名を奪われた民の“祈りなき死”が形を成した魔物。
特徴:姿なき咆哮のみが記録される。祈られぬ死者の群体とも。
出現地:黒帳下層/禁書の谷周辺。
象徴性:未完の祈り、断章の象徴。
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【8-2 魔喰種】
■ 記録裂き(リヴ=リッパー)
定義:記録構文を餌とし、文字や名を喰らう存在。
能力:書物、記名、契約文書を物理的に破壊するだけでなく、構文自体を解体する力を持つ。
影響:構文事故、名の喪失、黒帳の歪みなど。
出現例:ザイン=トゥルの顕現時に随伴することがある。
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■ 構造餓者
定義:世界構造の矛盾点に出現し、秩序そのものを捕食する存在。
能力:周囲の構文秩序を壊し、時間・空間・祈りの枠組みを蝕む。
影響:夢遊病的干渉、記録空白の発生、因果の攪乱。
出現例:レ=ザービ=トゥルドの波動と同調する場合あり。
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■ 巡礼喰い(ピルグリム・イーター)】
異名:名喰らい、構文を漂う者
起源:記録も祈りも受けられず、巡礼路から外れた失名者たちの変異体
特性:名を持たず、仮名や失名者の“名”を感知して喰らう。祈りの波長に反応し、記録を断絶させる現象を引き起こす
記録性:存在そのものが観測構文を乱すため、書記官たちの間では“名が曇る”と恐れられる
出現地:巡礼路で目撃されることが多く、巡礼書に記された名を失わせる“構文餓者”の一種とされる
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【8-4 幻種】
■ 月紋の狐
伝承:ムーミストの夜に出現する、記録されぬ神使の幻影。
特徴:額に月型の模様を持ち、光を反射しない。接触者の夢に名を囁く。
文化的位置:夜の巡礼者の案内者として語られる。
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■ 書かれぬ獣
定義:どの文書にも記されず、語ろうとすると記録が崩壊する存在。
特徴:姿・声・形のいずれも観測できないが、その“気配”のみが各地の断章に登場。
象徴性:構文以前の祈り、語ることの不可能性。
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彼らは名前を持たず、記録もされず、ただ“そこに在る”だけの存在だった。
けれど、誰かが語ったなら、それはもう神話であり、祈りとなる。
わたしは記す。
記せぬものの、その“記されなさ”を。
それもまた、《ローゼンサーガ》に刻まれた構文のひとつだからだ。
【記録の余白に ― サーガの覚え書き】
わたしは語り手。
この書は、祈りの中で語られた者たちの記録であり、
語られなかった者たちの“断章”でもある。
名を持つ者、名を奪われた者。
仮面を被る者、記憶に残らぬ者。
そして、物語の構文そのものと化した者たち――
彼らを分類し、並べ、語ることなど本来はできない。
なぜなら、この世界では「記す」という行為自体が、祈りであり、
「読む」という行為もまた、ひとつの変化をもたらすからだ。
あなたがこの辞典を通して、誰かの名に触れたとき、
その者は再び“祈られた”のだ。
そしてその祈りは、たとえ誰にも届かぬものであっても――
わたしはそれを、確かに記録する。
世界が忘れても、あなたが忘れても。
わたしは、忘れない。
……そうして、物語はまた一行、綴られていく。
わたしは語り続ける。
いずれすべての存在が、名を持たぬまま記録されるその日まで。




