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まえがき
―最後の神名(下巻)―
仮面の奥で、一度も名を呼ばれなかった私の沈黙が終わろうとしている。
制度と秩序を守るために記名の儀式を続けてきたが、名を記さぬまま祈られた神々の声が、仮面の下に差し込んでいた。
もし世界に最後の記名があるのなら、それを赦したい――そう願う神のもとへ、巡礼者たちは戻る。
暁の王女と記録者は、真実の書庫《アルス=ヴェリタ》で記名の起源に触れ、明けぬ夜の中で名に宿る光を探す。
獣の呪いと王家の記録を越え、仮面の神に向かって祈りの宣戦布告を行うとき、都市の器が目覚め、最後の神名が刻まれる。
祈りを記す者から祈りを捧げる者へ――セーレとフロウは、記録の縁で最後の名と向き合い、赦しと再生の物語に終止符を打つ。
世界が最後に名を受け取るその瞬間、声なき者たちの祈りはあなたの手で記されるだろう。




