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まえがき
ザルファトを後にし、ふたりは記されぬ頁の余白へと歩み出す。
地図にない境界の街では、名を拒む共同体が祈りの脱構築を試み、石碑は祈りを複層化する儀式となって、名なき子供たちが風と草の中で生きる。
記名の倫理を問い直し、祈りの不在に耳を澄ます旅の先には、綴られなかった記録と声なき文が待っていた。
やがてふたりは、黒帳と呼ばれる禁じられた頁に向き合う。
鏡の奥に潜む名を読む祈り、骨を刻む筆記、形なき契約――沈黙の中で結ばれる祈りに立ち会い、彼らは記録が持つ呪縛と祈りの本質を見つめる。
書かれぬ契約と無言の合意の危うさを抱えながら、巡礼はさらに深い闇へと進む。
この巻は、記されぬ祈りを受け止め、継ぐ者として目覚める旅の中継点である。




