遠征に行くことになりました
オリヴェルが去り、騎士団幼年学校に平和が戻ってきた。
「エイミー、会いたかったわ!」
「トリア、久しぶり」
早々にビクトリアから大歓迎を受け、帰ってきたなと実感する。
いくらエドヴィンから個別指導を受けていたとはいえ、集団でしか出来ない訓練もあるのだ。その遅れを取り戻すべく気合いを入れていたのだが、物事は思い通りに運ばない。
このタイミングで、魔獣討伐遠征の発表があった。
(やっぱりゲームの流れは変わらないのね)
まだゲーム自体は、はじまっていない。
魔獣討伐に行ったエドヴィンたちが亡くなるのは、ゲームの事前イベントとでも言うべきものかもしれないが、確実にその流れが迫ってきているのをひしひしと感じる。
ただ、ゲームと違うこともあった。
「ホント、遠征前にあのお子ちゃま王子がいなくなってくれてよかったわ! これで一緒に遠征に行けるわね!」
満面の笑みでビクトリアが話しかけてくる。
「ええ。本当によかったわ」
私も笑顔で頷いた。
そう、ビクトリアと私は、遠征に同行することになったのである。
理由は、ズバリ収納魔法。騎士団中を見てもビクトリアに匹敵する収納量を持つ人員はいないため、彼女は遠征への同行をお願いされ、その付き添い兼護衛として、同性で同学年の私が選ばれた。
「もちろん警護の騎士は他にもつける。君たちの安全は保証するから安心して同行してほしい」
幼年学校の教師からそう言われ、私たちは即決した。
(どうやって同行しようか悩んでいたけど、一緒に行けることになってよかったわ。もっともこれから待ち受ける事態を思えば、単純に喜んでばかりもいられないのだけれど)
やはり今回の魔獣討伐を、騎士団は軽く考えているのだ。危険の少ない任務だと思っているからこそ、収納魔法の利便性を確認する場に選ばれた。
その認識の甘さに焦りを覚えるが、注意喚起を行いたくとも術がない。
(ゲームの世界だなんて言っても、信じてくれるはずがないし)
出発は一週間後。
事前準備は、万全を期そう。
そんなわけで、私もビクトリアも張り切っていたのだが、エドヴィンとマルクは渋い顔をした。
「本当に行くのかい? 危険だよ」
「ああ。俺は反対だ」
とても過保護である。
「安全を保証するって言ってもらいましたから」
「そうよ! 大丈夫よ従兄さん、危険なことはしないもの!」
興奮しながら嬉しそうに話すビクトリアは、私でもその言葉を信じられないくらい興奮している。
「絶対に前にださせませんから」
仕方ないので、私はそう言った。
(ださせないとは言ったけど、出ないとは言っていないわよ)
「え~? なんで私だけそんなに信用がないの? 何か扱いがひどくない?」
「ひどくはないな」
「ああ。絶対前に出るな!」
プーッと頬を膨らませるビクトリアと、真面目に言い聞かせるエドヴィンとマルク。
それを温かな目で見ていれば。
「君もだからね!」
「余計なことをするなよ」
なぜか私まで注意されてしまった。
「……はい」
仕方なくこの場は頷く私だった。




