表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

7.呪い

 リサとクリスは夫婦になった。


 日照りが続くとリサが雨を降らせたから、領内の農作物の収穫量が飛躍的に増えた。コーエン子爵領で暮らせば食べ物に困らない、と移住してくる者が増えた。

 領地が豊かになり、生活が充実するにつれて、リサの不安は大きくなった。フェルディアの予言「クリスの死」が呪いのようにリサを苦しめた。


 ミルズ伯爵がコーエン子爵領に侵略してくる、と噂が立った。


 かつてのミルズ伯爵領は豊かな土地だった。次第に農作物の収穫量が減り、住民が減った。干ばつによる不作が深刻で、飢饉に見舞われることもあった。リサがミルズ伯爵領に雨を降らせなかったことが原因だった。


 領民に同情したクリスは、ミルズ伯爵領に食料を届け、領民が餓死しないように努めた。

「雨を降らせたらどうか」とクリスに何度も言われた。しかし、ミルズ伯爵領での生活を思い出すと、助ける気にはならなかった。


 ミルズ伯爵は食料を得るために豊かな農地が欲しかった。こともあろうか、食料を援助するコーエン子爵領に攻め込もうとした。


 クリスは父の指示に従って、領地の内外から兵を集め、領地の境界に堀を作った。守りを固め、領内に侵入させないことが目的だった。


「話し合いで何とかならないだろうか?」


 戦が迫っているのに、クリスは楽観的だった。侵略者との話し合いほど無駄なものはない。


 この戦でクリスが死ぬ。それがフェルディアの予言に違いない。

 クリスを守りたい。領民を守りたい。リサは山へ向かった。


**


 フェルディア、話があります――リサは念じた。


 これで本当に呼べるのか? 不安にかられた瞬間、強い風が吹いた。風がリサの体を揺さぶり、木の葉が体にまとわりついた。風が止むと、白い衣を身に纏った女がいた。


「やっと決心したのか?」フェルディアが笑った。


「まだです。先に確認したいことがあります。あなたの力を使ってクリスを救う。具体的にどうやって救うのですか?」

「お前が守ればよい。そうだな……たとえば」


 フェルディアは木を拳で突いた。木は吹き飛び、音を立てて崩れた。


「こういうのはどうだ?」


 フェルディアが手のひらを横に振った。木は風の刃に切り刻まれ、ちりぢりになった。この力があればクリスを守れる。


「力を得る代わりに、わたしはあなたの手伝いをする。それはいつまでですか?」


 フェルディアは「いつまで? ああ、そういうことか」と一人で納得した。


「神に寿命はない。老いないし、死なない。私の力を得れば、お前は神になる。期限はない」

「クリスが死んでも?」

「当然だ」

「一人で……生きていく」


 いつかクリスは死ぬ。クリスが死んだ後もリサは生き続ける。


「心配せんでもいい。夫が死んでも、また会える。生まれ変わった夫にまた会える」

「いつですか?」

「それはわからん。私は豊作の神。担当が違う」


 クリスを救いたい。けれど、次に会えるのは十年後? 百年後? 千年後? いつ会えるか分からないクリスを待ち続ける、その苦痛に耐えることができるのか?


「残念だが、猶予はない。敵兵が迫っておる。早くしないと、お前の夫は死ぬ」


 いつかクリスに会える。なら待とう。リサは拳を握りしめた。


「やります!」


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、下の☆☆☆☆☆で評価していただけると大変励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ