表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
セレナ編④高原の街スラリー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/161

アスフォルデの魔女会議

高原の街スラリーは、昼下がりの穏やかな風に包まれていた。公園のベンチに並んで腰掛ける七人の女性たち。カテリーナ、エルネア、ソレイユ、ヴェリシア、ローザ、ミリィ、そしてリーネ。彼女たちは皆、健司と旅を共にしてきた魔女、あるいは関係者だった。


 木陰に風が揺れ、落ち葉がさらりと舞う。だが、彼女たちの表情は静かで、どこか緊張感を含んでいた。


 最初に口を開いたのはカテリーナだった。


「見たわね、あれ……健司の“魔法”」


 彼女の言葉に、全員が一瞬息を止めた。


 ソレイユが静かに頷いた。


「見たというより……体験した、という感じかな。リズリィとクラリーチェがあそこまで驚愕するなんて、ちょっと信じられなかったよ」


「でも、当然よ」


ヴェリシアが腕を組みながら言った。


「死者が蘇ったのよ。ただの幻じゃない。肉体を伴って、魂も戻っていた。魔法の域を越えてるわ」


「カリストの魔女たちは、“あってはならない”って言ってたけど……あれがもし本当に可能なら、世界は変わる」


エルネアの声は低く、しかし確信を帯びていた。


 ミリィがぽつりとつぶやいた。


「でも、あの時、怖くなかったんだ。むしろ、すごく……あたたかかった」


「それが一番、不思議なのよ」


カテリーナが眉をひそめた。


「普通なら、生と死の境を越える行為には、どこか不気味さがつきまとう。自然の摂理に抗うことだから。でも健司のそれは……違った。まるで、あれが当然であるかのように、誰にも疑問を抱かせなかった」


 沈黙が一瞬、公園に降りた。


 ローザが顔を上げ、遠くの空を見つめるように言った。


「きっと、魔法じゃないのよ。健司の力は。少なくとも、私たちが知っているような、体系化された力じゃない。もっと……根源的な何か」


「愛の力……?」


と、リーネが口にした。


「だとしたら、あまりにも強すぎる。世界を塗り替えるほどの……」


「本気でそう思ってるの?」


ヴェリシアがからかうように笑うが、その笑みは曇っていた。


 カテリーナは言葉を探すように視線を落とし、そしてゆっくりと語り始めた。


「……私たちはずっと、魔法の強さ、才能、血統に縛られてきた。特にカリストでは“純血”が絶対の価値。だから、リズリィやクラリーチェのような魔女が育ち、あの国を動かしている」


「でも、健司はそのどれにも当てはまらない」エルネアが続けた。


「血統も、純粋な魔力の量も特筆すべきものじゃない。でも……世界が彼に応えている」


 ミリィが、そっと手を握りしめた。


「だって、レリアさん、笑ってたよ。あの時、“ありがとう”って言ってた。そんな死者、見たことない……あれが幻覚なんかじゃないって、私、心で感じた」


「私もだよ」


とソレイユ。


「不思議だったけど、あの瞬間だけは、どこにも“争い”がなかった。リズリィも、クラリーチェも、あの光の中では……止まっていた。魔法も、心も」


 誰かがふと、空を見上げた。真っ白な雲が、ゆっくりと流れていた。


「健司がやってるのは、“癒し”なのかもしれないな」


ローザがつぶやいた。


「破壊でも制圧でもない。誰かの心をほどく力。魔法のようで魔法じゃない」


 カテリーナが深く息を吐く。


「……カリストは、きっと動くわ。ラグナも、クラリーチェも、リズリィも、健司を止めようとする。あんな存在を、彼らが放っておくはずがない。でも……」


 彼女は言葉を切り、皆を見渡した。


「私たちは、あの時の光景を知ってしまった。レリアが目を開き、妹の名前を呼び、微笑んだ。あの瞬間の“奇跡”を、私は信じたい」


 全員が静かに頷いた。誰も口には出さなかったが、心の中で、確かにあの時の感動は刻まれていた。世界がほんの一瞬だけ、争いも、悲しみも、痛みもなく、ただ温かな光に包まれたのだ。


「……でも、逆に言えば、それだけのことをしたってこと。健司は、世界中の注目を集めた。これからは、誰かが“殺しに来る”かもしれない」


エルネアの言葉に、皆の顔が引き締まる。


「そうね。でも、それでも私は、健司についていくわ」


カテリーナがきっぱりと宣言した。


「彼の力を恐れるより、信じたい。私が選んだ道だから」


「私もだよ」


ソレイユが微笑んだ。


「健司を見てると、心が楽になるんだ。あの人がいるなら、私は何度だって立ち上がれる」


「私も」


リーネが頷く。


「健司が見せてくれる世界を、もっと見たい」


 ヴェリシアも、わずかに口元をほころばせた。


「……面倒な男ね。でも、飽きないわ」


 ローザとミリィも静かに笑い合い、うなずいた。


 カテリーナは、皆の視線を受け止めながら、最後に小さくつぶやいた。


「さあ、次は何が待っているかしら。カリストの“本当のトップ”……神聖魔法の使い手と、いずれ向き合うことになるかもしれない」


 エルネアが、遠くを見ながら答えた。


「その時も、健司ならきっと——恐れずに、手を差し伸べると思うわ」


 七人の心は、静かに一つになっていた。恐れではなく、希望の中で。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ