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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
セレナ編③セレナの姉レリア

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セレナとレリア

高原の街の宿屋、午後の柔らかな陽が差し込む窓辺で、健司はセレナの隣に座っていた。


「ありがとう、健司……」


静かに言葉を紡いだのは、蘇ったレリアだった。彼女は、あの日のままの姿――黒髪を風に揺らし、穏やかな微笑みを浮かべている。けれど、その眼差しには長い時間、冷たく暗い世界に閉じ込められていた痛みと、今を生きる希望が織り交ざっていた。


レリアは健司の手をそっと取った。


「あなたが……わたしを呼び戻してくれたのね。あの冷たい闇の中で、ただ名前を呼ばれる声が聞こえた……“レリア”って。あたたかかった……」


「生きていてほしかったんだ」


健司は真っ直ぐに見つめ返した。


「セレナが、君のことでずっと心に傷を抱えていた。だから……」


「健司!」


セレナが割って入った。ふだんは穏やかで控えめな彼女の声が、今は怒気と嫉妬を孕んでいた。


「お姉ちゃん、健司の手を……」


セレナの瞳が潤む。だが、それは喜びではない。


「……健司は、わたしの、大切な人だから……」


レリアはその言葉に少し驚いたように目を見開いたが、すぐに優しい笑顔に戻る。


「ごめんね、セレナ。そんなつもりじゃなかったの。ただ、どうしても感謝を伝えたかったのよ」


セレナは何も言わなかった。けれど、健司の手を取り返すように、ぎゅっと握った。


そのとき、背後の扉が開いた。


「……ああ、もう、そうなると思ってた」


呆れたような、でもどこか楽しげな声が響く。


振り返ると、そこにはクロエとリセルがいた。二人とも腕を組み、微妙な表情を浮かべていた。


「セレナ、先に言っとくけど、健司はあんたの所有物じゃないよ?」


「同感。しかも私たち、ずっと一緒に旅してきたしね」


クロエがやや挑発的な視線をセレナに向け、リセルはどこか落ち着いた口調で話す。


「こ、これは、その……」


セレナが言葉を詰まらせた。


レリアは、苦笑しながらも、席を立った。


「ごめんなさいね、健司。セレナ……少し休むわ」


彼女は静かに部屋を後にし、場には不穏な空気が残された。


「ふぅ……」


健司は頭をかいた。


「そんなつもりじゃなかったんだけどな」


「でもさ、健司、あの魔法は……すごかったよ」


クロエが話を戻した。


「完全な復活だった。魂だけじゃない。肉体まで……あれ、どうやったの?」


健司は視線を落とし、少しの沈黙のあと、口を開いた。


「僕の魔法は……『想いを形にする』ものなんだ。心から強く願えば、それが実現する。今回はセレナの想いが強くて……」


「それにしてもだよ」


リセルが真顔になる。


「リズリィとクラリーチェの顔色、見た?あれ、マジでびびってたって」


「……うん。カリストの魔女たち、あのまま引き下がるとは思えない」


クロエの声が真剣味を帯びる。


「これからもっと強い連中が来るかもしれない。ラグナ……いや、それ以上の存在が」


「……覚悟はできてる」


健司は言い切った。


「この力が脅威になるのなら、僕は逃げない。僕のやったことの意味を、ちゃんと伝えたい」


そのとき、セレナが再び口を開いた。


「健司……私も一緒に戦う。お姉ちゃんのこと、守ってくれてありがとう。でも、これからは私も……!」


彼女の声は、まるで別人のように強かった。


「私、もう逃げない。あの日のことも、リズリィも、全部と向き合う」


健司は彼女の手を取り、真剣なまなざしでうなずいた。


「一緒に行こう、セレナ。君の想いが、僕をここまで連れてきたんだ」


静かに、けれど確かな絆が、その場に結ばれていった。


だが――


リセルが窓の外に目を向けた。


「……誰か、来てる」


クロエも気づいた。


「この魔力……間違いない、またカリストの魔女だ」


外の空は、すでに夕闇に包まれつつあった。


誰かが、静かにこの街に足を踏み入れた。


それは――クラリーチェでもリズリィでもない、さらに異質な気配。


「……セレナ。守ってみせるよ、君も、レリアも」


健司は立ち上がり、再び戦う決意をその胸に刻んだ。


愛する人を、過去を、そして未来を守るために――。


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