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魔女達に愛を  作者: リーゼスリエ
セレナ編③セレナの姉レリア

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裏切り者達との再会

高原の街スラリーを出て間もない山道。霧の立ち込める朝、クラリーチェとリズリィ、そして数名の審問官の魔女たちは、早急な帰還を目指していた。


「……健司は異常だ」


クラリーチェが言葉を吐いた。怒気に似た震えを帯びた声だった。


「見たでしょう、あの光。セレナの姉——レリアが、肉体を伴って蘇った。あれは……魔法じゃない。認識できない何かだわ」


「私もそう思う。死者を生き返らせるなど……魔法の理を逸脱している」


リズリィが唸るように言った。月の魔法の名手であり、死に近い領域を知る彼女ですら、健司の魔法の理は理解の外だった。


「アスフォルデの環の魔女たちも従わせ、死者を蘇らせる。何者なの?」


「……審問しないといけない。生かしておけない存在かもしれないわ」


クラリーチェが苛立ちを抑えきれず、吐き捨てた瞬間だった。


霧の中から人影が浮かび上がる。5人。女たち。


「……っ、まさか」


リズリィが警戒し、魔力を指先に集めた。


「裏切り者のアウレリアか」


クラリーチェが静かに言った。


現れたのは、アウレリア、ダリア、リーベル、ガーネット、ユミナ。かつての審問官たち、今はアスフォルデの環の一部とされる者たちだった。


「何をしに来た」


リズリィが鋭く問いかけた。


アウレリアが静かに笑った。


「……懐かしいわね。クラリーチェ、リズリィ。あの頃の私を思い出すわ。信じていたのに、すべてはただの命令だった。私たちの正義は、誰のためだったのかしら?」


「ふん、お前の戯言には興味はない」


クラリーチェが吐き捨てるように言い、手を上げた。


「すぐに消えて。貴女たちの存在そのものが、カリストへの裏切りよ」


リズリィはアウレリアを一瞥し、冷たく言った。


「孤独だったお前が、寂しさ紛れに幻術で仲間ごっこをしているだけだろう? 偽物を見せられても、我々は騙されない」


その瞬間だった。アウレリアの隣に立つダリアが一歩前へ進む。


「……あの日、あなたたちは私たちを見捨てた」


彼女の声は静かだったが、その奥に確かな怒りがあった。


「死んだはずだ!」


クラリーチェが叫んだ。


「あのとき、確かにダリアたちは敵に襲われて——」


「……違うわ。私たちは生き延びた。でも、見捨てられたの」


リーベルが続けた。


「私たちは、審問官の誇りを捨てなかった。ただ、カリストが私たちを捨てただけ。気づいたのよ」


ガーネットが言った。


「真の正義を。アスフォルデの環にいたからこそ、救われた命がある。健司という存在が、私たちを変えたの」


ユミナが口を開いた。


リズリィが黙って、アウレリアを睨みつけた。


「じゃあ、証明してみせろ」


リズリィは魔力を解放し、月光のような光を指先に集めた。空気が震え、銀色の奔流がアウレリアに放たれる。


だが。


――パァン。


銀の光がアウレリアに当たる直前、ダリアが手を翳すと、まるで神聖の盾のように光を弾いた。波紋のように拡がる結界が、リズリィの魔法を無効化した。


「……っ。そんな……!」


リズリィが驚愕する。


「幻術じゃない。私たちは本物。生きて、信じ、そしてここに立っている」


ダリアの声は揺るぎなかった。


クラリーチェが奥歯を噛みしめる。


「……ならば、裏切りの証明だ。全員、この場で捕らえる。抵抗すれば——」


「その言葉、今の自分たちにこそ向けるべきだわ」


アウレリアが強い口調で言った。


「カリストは、審問官たちを使い捨てにし、健司という真の希望を敵と見なしている。あなたたちは、何のために戦っているの?」


リズリィの手が震える。


「私たちは……秩序のために……」


「秩序とは誰のもの? 本当に人々のための正義だったの?」


問いに答えられない沈黙の中で、ユミナが一歩踏み出した。


「リズリィ、あなたの魔法は確かに強かった。けれど、力がすべてではない。信じる心も、守りたいという意志も、それが私たちの力なの」


ガーネットも続く。


「カリストの正義に疑問を持ったことは? 感じていたはずよ。あの街の空気は、愛じゃなくて、管理と命令だった」


クラリーチェは唇を噛み締めた。言葉が出ない。


アウレリアは、静かに振り返るように言った。


「私たちの正義は、健司がくれたもの。……彼は命を弄ぶ存在ではない。命の尊さを、他の誰よりも知っている」


しばしの沈黙の後、クラリーチェが背を向けた。


「……今日はここまでよ。報告すれば、きっと……あの方が動く」


「ラグナ?」


アウレリアが問う。


クラリーチェは頷きもせず、霧の中へと消えていった。リズリィも黙ってその後を追った。


彼女たちは敗れたわけではない。だが、揺らぎを心に残していた。


残されたアウレリアたちは、深く息を吐いた。


「……信じて、よかった」


ダリアが呟く。


「戻りましょう。健司が待ってる」


アウレリアの言葉に、皆が頷いた。


そして彼女たちは、新たな覚悟を胸に、高原の街へと歩き出した。


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