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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
ソレイユ編⑤血統

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魔女の国と血統の影

静かに海風の吹くザサンの街。

一時の戦いと混乱を経て、ようやく街は穏やかさを取り戻しつつあった。


夕暮れ時。健司は、街の古い塔の屋上にアウレリア、カテリーナ、エルネア、リーネ、セレナ、ソレイユら幹部魔女たちを集めていた。

皆、すでに心を許し合った仲間たちだったが、今回ばかりはただの談笑ではなかった。


健司は、静かに口を開いた。


「アウレリアさん……ダリアさんたちを襲ったのは、誰なんですか?」


問いかけに、場の空気がわずかに張り詰める。


アウレリアは、少し目を伏せ、言葉を選ぶようにして答えた。


「……“魔女の国”よ。私たちのような小さな集団とは比較にならない、大きな勢力を持った場所。そこに属する、ある魔女たちに……やられたの」


「魔女の国……?」


「そう。名前は《カリスト》」


その言葉に、リーネが即座に反応した。


「……やつらか」


その声音は、怒りと軽蔑に満ちていた。


「カリスト……それって、血統主義の魔女が支配している国ですよね?」


とセレナが続ける。


「ええ。彼女たちは、“純粋な魔女の血を引いている者”だけを魔女と認め、それ以外を下に見る。人間との混血なんて、存在そのものを否定するほどの、徹底した主義を持ってる」


アウレリアは遠くを見つめながら話した。


「私は……昔、あの国にいたわ。だけど、血統が不明確って理由で、外に追い出された。ダリア、リーベル、ガーネット、ユミナも同じ」


「……だから、自分たちだけで街を作ろうとしたんですね」


健司は言った。アウレリアは静かに頷いた。


「そう。でも、カリストの魔女たちは、私たちの“成功”を許さなかった。“下等な血”の魔女が人間を従えている。そう思われたのね。だから、見せしめのように、ダリアたちは襲われた」


健司の拳が静かに握られた。


「……最低だ」


その声には怒りと悲しみが混ざっていた。


「有名なんですか、その国?」


「ええ」


とエルネアが答えた。


「古来からの血統を重視する魔女たちの集まり。その中でも特に過激な思想を持った“審問派”という派閥が権力を持っていて、異端や弱者を容赦なく排除する。私も一度だけ視察で行ったけど、正直、息が詰まりそうだったわ」


リーネが腕を組んで言う。


「正確には“魔女の理想郷”を掲げている。でもその実、血統以外を徹底的に否定する世界。“魔女の中の魔女”と呼ばれるものがいて、光魔法を使うらしい。」


セレナは苦い顔をして言った。


「昔、私の姉がその国に憧れて、修行に行ったことがあった。けど、帰ってきたときには……心がボロボロだった。『月の力は不純だ』なんて言われて、差別を受けたって」


健司はその言葉を噛み締めながら、問いかけた。


「……じゃあ、今後また、あの国の魔女たちが襲ってくる可能性もあるってことですね?」


アウレリアは真剣な表情で頷いた。


「ええ。でも、彼女たちは直接手を出すようなことはしないわ。まずは情報操作や混乱を仕掛けてくる。じわじわと精神を削るような、汚いやり方をしてくるはず」


リセルが、拳を握った。


「なら……次は私たちが守らないと。ここは、健司たちの街。誰にも傷つけさせない」


ソレイユが言う。


「この街はもう、誰かの犠牲の上に立つような場所にはしない。過去の私みたいに、何もできず太陽の下に縛られた誰かが出ないように……」


その言葉に、誰もが頷いた。



その夜、アウレリアはダリア、リーベル、ユミナ、ガーネットと焚き火を囲んで座っていた。


「……アウレリア様。わたし、もう少しだけ、ここにいてもいいですか?」


ユミナがぽつりと言った。


「なによ、今さら」


リーベルが冗談めかして笑う。


「でも、あの時より……ずっと心があったかいの」


ガーネットがそっと言葉を継ぐ。


アウレリアは、静かに彼女たちの声に耳を傾けながら、空を見上げた。


――魔女の国、カリスト。


あの国と再び相まみえる時は、そう遠くないかもしれない。


けれど――今度は一人じゃない。

仲間がいる。

人間さえも、手を差し伸べてくれた。


アウレリアは心の中で、かつての自分に語りかけた。


(弱さを憎む必要はない。

 あの日、涙を流した私は――今、ようやく救われた)


夜空には、無数の星が瞬いていた。

その光の中に、彼女たちの未来がきっとあると、誰もが信じていた。


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