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魔女達に愛を  作者: リーゼスリエ
ソレイユ編④1人

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幸せになってほしいだけ

朝の光が差し込む太陽の街ザサン。

昨夜までのざわめきが嘘のように静まり返り、あたたかい陽射しと穏やかな風が街全体を包み込んでいた。

かつて恐怖と支配に満ちていたこの街は、健司たちと魔女たちの手によって、ゆっくりと“人が住む場所”へと戻りつつあった。


健司は、街の中央広場のベンチに座るアウレリアのもとへと向かった。

彼女は今、ひとりで空を見上げていた。背筋を伸ばし、かつての威厳を湛えたその背中には、どこか柔らかくなった気配があった。


「アウレリアさん」


声をかけると、アウレリアはゆっくりと振り返る。微笑みを浮かべていた。


「おはよう、健司」


「おはようございます」


健司は彼女の隣に腰かける。しばし、無言の時間が流れた。


やがて、健司は静かに口を開いた。


「アウレリアさん。……ぼくたちと、一緒に歩きませんか?」


アウレリアは目を見開いた。


「……それは、どういう意味?」


「文字どおりの意味です。一緒に街を作っていきましょう。これから魔女と人間が共に生きられる世界を、皆で――」


その時、少し離れた場所でその様子を見ていたカテリーナが、ぽつりと呟いた。


「ねえ、やっぱり健司、また口説いてるよね?」


クロエ、リセル、ソレイユ、そしてルナとミイナも、その声に振り返る。


「だよね……」


とリセル。


「間違いない」


クロエは、ため息まじりに言った。


「アウレリア様、美人だから……」


ミイナがぽそっと言うと、


「ちょ、ミイナ!」


ルナがあたふたして制した。


その声が聞こえていたのか、健司は慌てたように手を振った。


「ち、違うんだ、みんなっ! 口説いてるんじゃない。アウレリアさんたちは、みんな……美人だから、幸せになってほしいだけで……」


その言葉に、アウレリアは一瞬目を見張り、それから――ふっと、優しく笑った。


「……ふふ、変な子」


健司は、耳まで真っ赤にしながら、それでも言葉を続けた。


「アウレリアさん……あなたの魔法は、仲間のためのものだった。だけど、あなた自身が“幸せ”ってなんなのか、忘れてしまっていた気がするんです」


「……」


「ぼくは、あなたにも笑っていてほしいんです。戦うためじゃなく、誰かを傷つけるためじゃなくて。幸せのために魔法を使っていいんだって、そう思ってほしくて」


アウレリアは視線を下げ、そっと手を胸に当てた。


――なぜ、この男の言葉は、こんなにもまっすぐで、胸に刺さるのだろう。


「……まだ、答えは出せないけれど……でも、もう少し、ここにいてもいいかしら?」


健司は力強く頷いた。


「もちろんです」



その日の午後。


ソレイユの家の前。太陽の魔女ソレイユは、かつて自分が生まれ育った場所を見つめていた。


どこか懐かしい、けれども少し違う。静かに変わっていく街の中で、彼女は深く息を吐いた。


そこへ健司が現れる。


「ソレイユさん」


「健司……」


「……おかえりなさい、って言っていいのかな」


ソレイユは、ゆっくりと頷いた。


「うん。……ただいま、健司」


「……故郷、取り戻しましたね」


その言葉に、ソレイユの目から、涙が一粒、頬をつたって落ちた。


「……ありがとう」


その一言に、すべての感情が込められていた。


「あなたがいなかったら、きっと私はここに戻れなかった」


「そんなこと……」


「本当よ。あなたがいてくれたから、私たちは希望を信じることができた。たとえ魔法が通じなくても、あなたの言葉が、心に届いたの」


ソレイユは、ゆっくりと健司の手を取った。


「だから、これからは……私も、その光の中で生きていきたい」


健司は、優しくその手を握り返した。


「……一緒に生きましょう、ソレイユさん」


遠くからその様子を見ていたカテリーナが、またため息をついた。


「……やっぱり口説いてるじゃないの」


「ま、まあ、でも今回はソレイユからだったし……」


とクロエ。


「……健司って、ほんとずるいよね」


リセルがぽそっと呟く。


けれど、そこにあるのは嫉妬ではなかった。

どこか安心したような、安堵の混じった眼差し。


それは、健司が真に“信頼されている”証でもあった。



その夜、ザサンの街では焚き火が焚かれた。

人々が集まり、魔女たちも肩を並べ、笑顔が溢れていた。


健司はその火を囲みながら、皆の笑い声に耳を澄ませる。

隣にはカテリーナとクロエが座っていた。


カテリーナはそっと言った。


「ねえ、健司」


「はい?」


「……あなたに会えて、よかった」


「……ぼくもです。カテリーナさん」


カテリーナは火を見つめながら、微かに笑った。


「……幸せって、こういうことを言うのかもね」


火の揺らめきの中で、それぞれの魔女たちは静かに語らっていた。

争いのためにではなく、未来のために。


ザサンの街は――ようやく、夜明けを迎えていた。


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