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魔女達に愛を  作者: リーゼスリエ
ソレイユ編③襲撃

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七色の月、揺れる心

南の村を出て、太陽の街ザサンに辿り着いてから数日。

健司たちは街の異様な空気に戸惑いながらも、それぞれの役割を持ち、慎重に動いていた。


ルナとミイナは、街の片隅にある広場――かつて子供たちの遊び場だったという場所に足を運んでいた。


「ここ、昔はにぎやかだったのかな?」


ミイナが、ブランコを揺らしながら言った。


「……でも、今は誰もいない」


ルナは静かに周囲を見渡した。異様な静けさが、広場を包んでいた。


その時だった。


胸の奥に、ドクン――と奇妙な衝動が走った。


「……イラッとする……」


ミイナがぽつりと呟いた。


「え?」


「なんでルナと一緒にいると、ムカついてくるんだろう……!」


「ミイナ、何を言ってるの……?」


ルナもまた、同じような衝動に駆られていた。


(ミイナって、なんで健司くんとばかり喋ってるの?)

(私のほうが先に好きになったのに……)


二人は、じりじりと距離を詰めていく。

本来は仲の良い友達だった二人が、今――敵意を向け合っていた。


「ふふふ……うまくいったみたいね」


物陰から、赤い髪の魔女が姿を現した。


攻撃性を生む魔女――ガーネット。


「感情の深層に眠る棘。それをほんの少し突くだけで、人間も魔女も狂えるのよ。ねぇ……セレナ?」


その名を聞いた瞬間、夜空に銀の輝きが走った。


「……やめなさい」


声とともに、月明かりが広場を照らした。


ガーネットが振り返ると、そこには月の魔女・セレナの姿があった。


ゆったりとしたローブに身を包み、銀髪をたなびかせる彼女は、夜の女王のごとき気品を漂わせていた。


「……セレナ。噂は聞いてるよ」


ガーネットはニヤリと笑った。


「野蛮な魔女狩りの中、唯一生き残ったっていう、月の魔女。あんた一人だけ助かったってね」


セレナの瞳が揺れる。


「……昔の話だ」


「でも、その過去は今もあんたを縛ってるんじゃないの? みんなを見捨てて、あんただけ生き延びたその罪の意識が」


「黙りなさい!」


セレナの杖が天を指す。


「ムーンライト――!」


月光が集中し、一点に放たれる。

ルナとミイナの瞳が、それに奪われた。


「……あ」


「あれ……なんで、私……」


二人の攻撃的な感情が、光に溶けていく。


「感情の鎖は、光で断ち切ることもできるのよ」


セレナの声は静かだった。


しかし、ガーネットはその光を睨みつけた。


「やっぱりあんたは、ただの偽善者だ。罪を忘れたフリして、平和の顔して、まわりを照らしてるだけじゃない!」


彼女の右腕に、赤黒い魔力が宿る。


「アタックソード!」


魔力が剣の形をとり、セレナに向けて放たれた。


だが、セレナはひるまなかった。


「……私は、変わったの」


「何?」


「過去の私なら、罪を抱えて消えようとした。でも、今は違う。健司という人間に出会って、あの夜の孤独が意味を持った」


セレナの杖が輝き出す。


「ムーンレボリューション」


その瞬間、七色の月の粒子が広場に舞った。

淡い紫、蒼、金色、緑、白、赤、銀――その全てが一つの流れとなり、ガーネットへと向かう。


「チッ、数で押す気? 甘い!」


ガーネットは、アタックソードを振るい、月の粒子を斬り裂いた。


――だが、次の瞬間。


「数が……多すぎる……っ!」


彼女の剣が粉砕された。


「こんな……! まさか……!」


月の粒子がガーネットを包み、彼女の体内に眠る“攻撃衝動”を洗い流していく。


「や、やめて……! 私は……っ!」


ガーネットの瞳に、恐怖が宿る。


「なぜ……? なぜあんたは……こんな力を持ってる……」


セレナはそっと言った。


「あなたと同じよ。私も、かつては“怒り”に生きていた。許せなかった。人間も、自分も、あの日の月も」


「……」


「でも――月は、満ちて欠けるもの。怒りも、悲しみも、照らしてくれる人がいれば、形を変えられるの」


セレナはルナとミイナのもとに歩み寄った。


二人はようやく我に返り、目を潤ませていた。


「セレナさん……」


「ありがとう……」


セレナは、そっと微笑んだ。


「礼なら、健司に言って。私も……彼に救われた一人だから」


ガーネットは地に膝をついたまま、何も言えずにいた。


その肩に、優しくセレナが手を置いた。


「……あんたも、変われるわ」


月が、静かに空を照らしていた。


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