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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
ソレイユ編③襲撃

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命と光の交差点

古びた図書館の奥深く。

湿った紙と埃の香りが漂うその場所に、ひときわ冷たい空気が満ちた。


「こんにちは、ソレイユ」


現れたのは、黒と紫の装束に身を包んだ、細身の女性。目は虚ろで、微笑みを浮かべているにもかかわらず、体温の欠片も感じさせない雰囲気をまとっていた。


リセルは即座に距離をとり、ソレイユの前に出た。


「誰?」


「ダリア。生命を奪う魔女」


そう名乗った彼女の言葉と同時に、空間がわずかに歪んだ。

まるで、空気の一部が抜け落ちるかのような感覚――呼吸が浅くなる。


「ぐっ……」


ソレイユとリセルは、同時に胸を押さえた。まるで肺の奥から命が引き抜かれるような感覚だった。


「この感覚……あなたね。鳥たちが突然死していた理由。生命の気配が薄れる街の原因……」


ソレイユが震える声で言った。


ダリアは微笑んだまま、図書館の柱の影から一歩前に出た。


「ええ、その通り。気づいてくれて光栄よ。始まりには、相応しい犠牲が必要だった」


「ふざけないで」


リセルの目が鋭くなった。闇魔法を纏い、すぐにでも構えに入る。


だが、ダリアは意にも介さず、言葉を続けた。


「あなたたちは、命を持っている。だけど、それはどこまで本物? 愛だの、希望だのを掲げて――ただ、脆い夢に縋っているだけじゃない?」


その嘲笑に、ソレイユの目が怒りに揺れた。


「違う。……私は、もう命を軽く扱わないと決めた」


「命を?」


「太陽の下で、私は長い時間、磔にされた。あのとき、死にたいほど苦しかった。でも……」


彼女は前へ進んだ。


「助けてくれたのは、“希望”だった。あなたの言う夢じゃない。“愛”だった」


ダリアの微笑みが少し消えた。


「……くだらない」


その瞬間、空気が爆発したように変化した。図書館全体が闇に包まれる。酸素が抜け落ちるような息苦しさ、足元から命が逃げていく感覚――。


「これが、私の“デスエリア”。この空間にいる限り、生きる意味は、剥がされていく」


ソレイユの足元の木板に、小さな動物の骨が見えた。


「……!」


「もう、幾千の命を奪ってきた。感情など、とうの昔に捨てたわ」


だが、その時――リセルが口を開いた。


「感情を捨てた? 本当に?」


リセルの瞳が闇に染まる。


「なら、これで試してみる」


《ダークソウル》


リセルの手から放たれた漆黒の光が、図書館の天井に広がり、闇の魂が呻き声を上げながらダリアへと迫った。


「……!」


その闇は、感情を持たない者には届かない。だが、もし心の奥に“痛み”や“迷い”があれば、魂を震わせ、魔法を相殺する。


ダリアのデスエリアが――一瞬、ひび割れた。


「私の……魔法が……消えた?」


「あなた、本当は……奪ってきた命のこと、覚えているんでしょう」


リセルの声は冷たいが、どこか哀しみを含んでいた。


「痛みから逃れるために、自分を殺しただけ……」


「やめてッ!」


ダリアが叫び、再び魔力を集中させようとした――その時だった。


ソレイユが、瞳を閉じ、手を天に掲げた。


「……光よ」


太陽の魔法が発動する。


《ザ・サンフレア》


天井を突き抜けるほどの純白の光が、ソレイユを中心に炸裂した。図書館中が明るくなり、空間の闇が一瞬で焼かれる。


「やめなさい! 私の世界を壊さないで!」


だが、遅かった。


その光は、直接、ダリアの胸元に差し込んだ。


彼女の魔力が、光の波に押されて霧散していく。けれど、痛みはなかった。ただ――


「……ああ」


温かかった。


久しく忘れていた、生きるという感覚。

心臓が打ち、血が流れる。


涙が、頬を伝った。


「これが……生きてる、ということ……?」


彼女は、力が抜けてその場に膝をついた。


リセルが慎重に近づいた。


「……どうする? 捕らえる?」


「いいえ」

ソレイユが首を振った。


「彼女はもう、負けを認めた」


ダリアはゆっくり顔を上げ、ソレイユを見た。


「……私は、何をしてきたの……?」


ソレイユは手を差し出した。


「一緒に考えよう。これから、どうすればいいのかを」


ダリアは、しばらく黙っていたが――その手を、そっと握った。


「ありがとう……太陽の魔女」


「ソレイユでいいわ」


――図書館に差し込む光は、少しだけ暖かくなっていた。


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