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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
ソレイユ編①太陽

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闇を語る夜に

夜。


焚き火のぱちぱちとした音だけが、静かな草地に響いていた。


魔女たちも皆、今日はよく戦い、よく怒り、よく笑った。ソレイユとカテリーナの“闘い”を見届けた仲間たちは、いつもより早く眠りについていた。


だが、ひとりだけ。


クロエだけが、焚き火のそばで腕を組み、無言で月を見上げていた。


(……やっぱり、ちょっと怒ってるよな)


健司は迷いながらも、毛布を持って近づいた。


「クロエ」


「……なに?」


振り返ったその表情は、いつもの落ち着いたクロエの顔だったが、目だけがすこしだけ冷たかった。


「怒ってる?」


「……怒ってない。呆れてるだけ」


「それって怒ってるってことだよね……?」


「……かもね」


健司は苦笑した。


「ごめん、ソレイユさんに悪気があったわけじゃないし、僕も……その、油断してた。腕枕とか、正直初めてで……」


「言い訳はいい。あの人が素直なことはわかってる」


「じゃあ、どうして?」


クロエは焚き火を見つめたまま、小さく呟いた。


「……気づいたの。私、自分が“信じてた以上に”あなたを大切に思ってたって」


健司はそっと彼女の隣に座り、毛布を広げた。


「じゃあ、一緒に寝よう?」


「……は?」


「ちゃんと、寝よう。今日はいろいろあったから。クロエにも安心してほしい。今日は僕の隣で寝て」


「……はあ。ずるい」


クロエは肩をすくめた。


「……じゃあ、今日は特別ね」


毛布の下で、二人は背中合わせで横になった。


焚き火のぬくもりと、背中越しに感じる互いの体温が、どこか安心感をくれた。


少しして、健司が口を開いた。


「クロエ……ソレイユさんの過去、すごく辛そうだった」


「……ええ」


「太陽の下で磔にされるなんて、普通じゃないよね。あの街の人たち、どうしてそんなことを……?」


クロエは、しばらく黙っていた。


やがて、ぽつりと呟く。


「……心当たり、あるわ」


健司が息をのむ。


「それって……あの街に、他の魔女がいたってこと?」


「うん。私も直接見たわけじゃないけど……魔女の間で噂になってた」


クロエは起き上がり、焚き火に手をかざすようにして語り始めた。


「――魔女の力には、“恐れ”が根源にあるっていうのは、健司が言ってたとおり。けど、その恐れを“利用する”ことで、街を乗っ取ろうとする魔女の集団がいる」


「……」


「その魔女たちは人間の街に紛れ、混乱を引き起こす。そして、“魔女が原因だ”という空気を作り、人間同士を疑心暗鬼にさせて、支配する」


「それって……ソレイユさんの街も?」


「可能性は高いわ。あのやり方は、いくつかの街で似たパターンがあった。たとえば、誰かが病にかかったとき、魔女の仕業だと騒ぎ立てるとか。水が濁った、作物が枯れた……そんなことで、罪をなすりつける」


「誰かが意図的に……?」


「そう。魔女狩りが起きるとき、実は裏に“操ってる魔女”がいることもある。人間だけじゃない、魔女をも騙す魔女……」


クロエの声には怒りが込められていた。


「……私の仲間も、そのせいで何人か殺された」


健司は思わず手を伸ばして、クロエの手を包んだ。


「……辛かったんだね」


「……健司」


「でも、そういう魔女がいるなら、ちゃんと止めなきゃね。ソレイユさんがあんな仕打ちを受けたのも、そのせいかもしれない」


「……だから、あなたが必要なんだと思う。誰にも染まらず、誰かを変える力を持ってる人間」


クロエは少しだけ微笑んだ。


「……でも、ソレイユには近づきすぎないように」


「え?」


「ちょっと、嫉妬するから」


健司は驚いたように、けれどどこかうれしそうに笑った。


「了解しました、クロエさん」


「……寝ましょ」


二人は再び毛布に潜り込んだ。


静かな夜だった。


けれど、クロエの言葉が、健司の胸に小さな炎をともしていた。


月が照らす森の奥。


ソレイユは、少し離れた岩の上で空を見上げていた。


彼女の金の髪が、月の光に照らされて輝いている。


その後ろに、静かに足音が近づいた。


「……眠れないのか?」


カテリーナだった。


ソレイユは少し肩をすくめて、振り向かずに言った。


「……昔を思い出してた。健司くんが、よく眠れたかどうかも気になってた」


「甘いな、あいつは誰とでも寝られるよ。特に魔女相手にはね」


「ふふ、そうね」


ソレイユは寂しそうに笑った。


カテリーナはその横に腰を下ろした。


「……ソレイユ」


「なに?」


「お前を太陽の下で縛った奴ら……もし本当に“闇の魔女たち”が関わってるなら、私が斬る。遠慮なく、全部」


「……ありがとう、カテリーナ」


「だからお前は、お前のままでいろ。笑え、泣け、怒れ。――守る奴ができたなら、私も戦える」


「うん。私、変わりたいって思えるようになったから」


二人はしばらく黙って星空を見上げた。


夜が明けるまで、残された静かな時間だった。


だが、遠く、森の奥では、何かが蠢いていた。


――それは、次に動き出す者たちの気配。


魔女に化けた、魔女すら騙す者たち。


真の“闇の魔女”たちが、次なる舞台の幕を開けようとしていた。


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