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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
アスフォルデの環⑨解散

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想いと距離

新たな旅の道は、緑に包まれたなだらかな丘陵地帯へと続いていた。


かつて滞在していた南の村を離れ、健司たちは、魔女と人が共に暮らせる「本当の居場所」を求めて歩みを進めていた。


朝露に濡れた草の香りが、ほんのりと風に乗って流れてくる。


そんな道の途中――健司は、隣を歩くミイナとルナに笑顔を向けた。


「いい村だったよね。静かで、自然も多くて。……でも、僕たちには、もっとふさわしい場所がきっとあるさ」


ミイナは、まっすぐな目で健司を見上げた。


「……私は、健司が一緒にいればどこでもいいよ」


ルナも頷きながら、笑顔を浮かべた。


「うん! 場所じゃなくて、一緒にいる人が大事だもん」


健司は、そんな二人のまっすぐな思いに、少しだけ照れながらも優しく笑った。


「ありがとう。……よし、じゃあ、もっと素敵な場所を探そう」


一方、その少し後ろを歩いていたカテリーナは、少し沈んだ顔で空を仰いでいた。


「……やっぱり、私はあの村に迷惑をかけたな」


ぽつりと呟くその言葉は、風に紛れて消えていきそうだった。


彼女は強かった。誰よりも。けれど、誰よりも心が繊細だった。


――もう少し、ゆっくり変われればよかった。


そう思っていたその時。


「……あのさ」


突然、健司が後ろを振り返り、立ち止まった。


「?」


カテリーナが顔を上げると、健司が手を差し伸べた。


「一緒に、歩こう」


その言葉に、カテリーナは少しだけ驚いた顔を見せたが、やがて微笑んで、その手を取った。


「……遠慮しないよ?」


「うん、遠慮しないで」


そのまま、カテリーナは健司の左隣にぴったりと体を寄せて並んで歩いた。


肩と肩が触れるほどの距離。


まるで――恋人のように。


それを後ろから見ていたエルネアは、目を細めて軽く咳払いをした。


「……ちょっと、近すぎるんじゃないかしら」


その言葉に、ソレイユとセレナ、リーネまでもが同時にうなずいた。


セレナがそっと言う。


「えっと……付き合ってるの? あの二人って」


リーネがじっと観察しながら呟く。


「……脈ありどころか、これはもう付き合ってると見ていいレベルじゃない?」


エルネアは冷静なようで、声に微かな棘を含ませて言った。


「公衆の面前で、あの距離感はどうなの? いや、別にいいんだけど、目のやり場に困るわね……」


その時、カテリーナがぴたりと足を止め、ふっと振り返った。


「なに? 文句でもあるの?」


「文句ってわけじゃないけど……あの、近いよね。普通に」


すると、カテリーナは堂々とした態度で返した。


「普通よ。恋人同士だったら、これくらいするじゃん?」


「――っ!」


エルネアが息を飲む。


リーネは咳き込み

ソレイユは


「あらら……」 


と小さく目を伏せ、セレナは耳まで真っ赤になった。


ミイナが


「え?」


と呟き、

ルナは健司をじっと見つめた。


「ねえ、けんじ? 恋人って、誰のこと?」


「えっ、えっと、それは……」


健司は慌てて言葉を濁した。


「いや、あの、まだそこまでは……その……」


カテリーナは口元を緩め、からかうように健司の腕をぎゅっと抱いた。


「いいじゃない。こうしてると、落ち着くし」


「か、カテリーナさん……」


「さん、いらないって。カテリーナでいいよ」


周囲の女性陣は、思わず声を飲み込んだ。


その後、ひとときの沈黙のあと――セレナがぼそりと呟いた。


「……なんか、負けた気がする」


ソレイユが静かに応じる。


「油断してた。あのカテリーナ様が、そんな……」


リーネが言葉を濁しながらも、視線を健司に向けていた。


「……あれだけのことをしておいて、ちゃっかり愛も掴むなんて……ずるい」


ヴェリシアが微笑むように言った。


「でも、カテリーナ様……今、すごく幸せそう」


ローザは少し照れくさそうに、ぽそっと言った。


「私も……一回、告白してみようかな……」


その言葉に、一瞬ざわつく幹部たち。


リセルは口元を引き結び、健司をじっと見つめていた。


そして、ふっと笑って言った。


「ま、誰が隣に立っても、私は私。あんたが選ぶなら、それでいい」


健司は皆の視線に気づきつつも、あえてそれには答えず、ただ前を見ていた。


「……本当に、ありがとう」


小さな声だったが、それは確かに全員に届いていた。


陽は傾き始めていた。


金色の光が木々を染め、草原に優しい影を落としている。


誰かが前を歩き、誰かが隣に並び、誰かが後ろから見守る。


そのすべてが、健司というひとつの光に引かれるように――


未来へ、続いていた。


それはまだ不確かで、形もない、理想の世界。


けれど、それでも信じたいと思える。


想いの距離が近づいたその日、

彼らの心にもまた、新たな絆が結ばれていた。

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