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魔女達に愛を  作者: リーゼスリエ
アスフォルデの環⑨解散

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別れと始まり

朝の光が、谷の深部にあるアスフォルデの環の本拠地にも差し込んでいた。

長く続いた闇の幕が、静かに明けようとしていた。


ヴェリシアは、牢の中に座り、目を閉じていた。

だが、カチャリと扉の開く音に、ゆっくりと目を開ける。


そこにいたのは――カテリーナだった。


「……起きていたのね」


ヴェリシアは無言のままカテリーナを見つめていた。

だが、その瞳はどこか、安堵に近いものをたたえていた。


カテリーナは鍵を差し込み、ガチャンと音を立てて、拘束具を外す。


「もう自由よ、ヴェリシア」


「……本気で言ってるの?」


「ええ。あなたは、もう“敵”じゃない。私は、あなたを処罰するつもりも、責めるつもりもない」


ヴェリシアの頬に、一筋の涙が伝った。


「……ありがとう、カテリーナ様」


「“様”は、もうやめましょう」


そう言って、カテリーナは微笑んだ。


ヴェリシアは、その笑顔にどこか戸惑いながらも、心からほっとしたように笑みを返した。



その後、本拠地の大広間に、アスフォルデの環の幹部たちが全員集められた。


エルネア、ソレイユ、セレナ、リーネ、ローザ、リセル、ミリィ、そしてヴェリシア。

皆、一様に重苦しい空気を感じながら、中央に立つカテリーナを見つめていた。


「……今日は、みんなに伝えたいことがあるの」


カテリーナの声は静かで、だが決して揺らがなかった。


「今日をもって――アスフォルデの環を解散します」


その一言が落ちた瞬間、空気が止まったかのようだった。


「……何を……言ってるの?」


最初に言葉を返したのは、リーネだった。


「冗談でしょ、カテリーナ様!」


「……そうだ。これは私たちの居場所だった……!」


ソレイユが叫ぶ。


リセルも声を上げた。


「理由を……教えてください。なんで、いきなり……」


カテリーナは一歩、前に進んだ。


「目的が……なくなったのよ」


「目的が、なくなった……?」


エルネアが問いかけるように呟いた。


「私はずっと……世界を変えるために戦ってきた。魔女の権利を守り、人間との抗争に備えるため……でも今は、それが虚しいことだって気づいたの」


セレナが目を伏せた。


「……健司が、そう思わせたのですね」


「ええ、彼の言葉も、みんなの変化も……私の心を揺さぶった」


カテリーナは微笑んだ。


「健司は、世界を救おうなんて大層なことを言いながらも、誰よりも“今ここにいる人”を大事にしていた。私には、それができなかった。でも……もう一度、信じてみたいの。“共に歩む”という未来を」


その言葉に、場の空気が震えた。


ミリィが涙ぐみながら声を上げた。


「私……ずっと、カテリーナ様について行こうって……信じてました。でも……今、初めて“あなたが救われた”って思えました……!」


リーネも涙を浮かべたまま、言葉を絞り出した。


「……ありがとう、カテリーナ様……。この場所が、私たちのすべてだった。でも……それ以上に、あなたの幸せを……望んでる」


そのとき――リセルが、前に出た。


「カテリーナ様……」


少しだけ、意地悪そうな笑みを浮かべて。


「もしかして……健司のこと、好きになりましたか?」


その問いに、場が一瞬静まり返った。


ローザが


「な……」


と小さく呟き、ソレイユが


「えっ……」


と顔を赤らめた。


セレナがそっぽを向いて、


「そ、そんなわけ……」


とつぶやいたが、耳が真っ赤だった。


カテリーナは、肩をすくめた。


「……どうかしらね。でも、彼の言葉がなかったら、私はまだ、あの闇に囚われていたと思う」


「……ふん。いくらカテリーナ様でも……そこは譲れませんから」


リセルはそう言って、少しだけ唇を尖らせた。


その言葉に、みんなが笑った。


笑い声なんて、ここでは久しく聞かなかった。


すると、エルネアが口を開いた。


「ならば、私たちも健司たちのそばにいればいい」


全員が彼女の言葉に、目を向けた。


「未来が見えないのなら、見える場所で、歩けばいい。私は……もう“可能性”を切り捨てたくないの」


「……エルネア……」


「私も……行こうかな」


セレナがそっと言った。


「健司に……もう一回、月を好きになってもらいたいし」


ソレイユが笑いながらうなずいた。


「太陽の下で、もう一度、ちゃんと笑いたい……。彼がいてくれたら、できる気がする」


リーネが続いた。


「薬や魔法じゃない“癒し”……彼が、教えてくれたから」


ヴェリシアもそっと言った。


「私は……もう一度、信じてみたい。人も、自分も」


ミリィも、クロエのことを思い出しながら言った。


「私は……クロエ様と同じ世界に立っていたい」


ローザは小さく


「まったく、仕方ないわね……」


とため息をついてから、笑った。


「私ももう一度、戦いたい。今度は、守るために」


カテリーナは、彼女たちを見渡しながら、小さく、しかししっかりとした声で言った。


「ありがとう。みんな……本当にありがとう」


その言葉は、涙と共に、大広間の空気を優しく包んだ。



そして、アスフォルデの環の本拠地――

そこに刻まれた紋章は、ゆっくりと魔法によって消えた。


その代わりに、残されたのは――新たな旅への決意と、絆だった。


魔女たちはそれぞれの想いを胸に、未来へと一歩を踏み出す。


そして、健司のもとへ――


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