表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
アスフォルデの環⑧カテリーナ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/165

闇を生んだ真実

夜の中、健司たちが円陣を組んで座っていた。

月明かりが静かに差し込み、穏やかな夜風が頬を包む。

戦いの余韻はまだ消えず、だがその中心には、今や“人を救う側”となったカテリーナがいた。


クロエは初めて、その顔に刻まれた深い痛みを読み取った。


リセルも、ローザも、静かに見つめる。

そして――カテリーナ自身が、口を開いた。



「私の過去を話します…。信じてほしいわけじゃない。ただ、あなたたちに、私がどうして“あの闇”を背負うようになったのか知ってほしい」


その声音は震えていた。

しかし、その揺れには確かな重みが乗っていた。


「私はかつて…魔女と人間が共に暮らす小さな村で育ちました。仲間は私と同じ魔女、その家族、そして村に住む人間たち。互いに助け合い、笑い合っていた。


花を摘み、子供たちに魔法を教え、病気の子を癒し、収穫を喜び合う…。

誰も私たちを恐れず、偏見などなかった。人の喜びが、魔女の力になる。そんな美しい日々だった」


その言葉に、ミイナは涙ぐんできた。

「そんな暮らし…私たちが目指してるのと同じだね…」


と囁くルナ。


「そんな日々が…突然断ち切られました」


カテリーナの目が揺れた。

「ある夜、遠くから轟音が響き渡り、月の光に照らされた黒衣の集団が、私たちの村へと踏み込んできた」


場面が浮かぶようだった。

夜の村。

子供の笑い声。

カテリーナの手を握る兄弟…。

兵士のように整列した魔女たち――だが、眼には憎悪と高慢が宿っていた。


「彼らは言った。『我々は魔女なのだ。我らは偉大だ。人間とは違う。劣る』と。魔女至上主義を唱える集団。


仲間を皆殺しにした後、私に言った…『お前も同じだ』と。


皆…人間や魔力や力の差など関係なかった。

ただ、“お前たちは我々より下だ”。

それが、理由だった。全滅。

私は死にかけたまま…ただひとり、残されました」


その声は涙で崩れそうになりながら続いた。


「燃える家々。倒れる仲間。泣き叫ぶ子供たち…。すべて失った。

助けようとする人間も、逃げ惑う人間も皆殺されていた。


残ったのは憎しみだけ。

憎しさは、やがて私を闇に染め…“誰かを守る”ことより、“誰かを傷つける”選択へと向かわせた。


あの夜から…私は“救う者”を捨てた。

私の声で人々を率い…守ろうとした矢先に…裏切りだった。

あれは“救いの幻想”ではなく、“魔女の価値”を突きつけるだけの、暴力だった」


クロエは、しばらく静かに聞き、そして小さく頷いた。


リセルもローザも感情を抑えているようだったが、その眼はうるんでいた。


そして健司が、そっと手を差し伸ばした。


「カテリーナさん、その痛みを抱えていたからこそ。あなたの中には、誰よりも“守る心”があるんだと思います」


「……わからない」


カテリーナは首を振った。


「私は人を…信用できない。その夜、信じた人に裏切られた。全てを失ったの。

でも、あなたと皆は…私を、“救えと言わずとも”変えた。


私が捨てた“誰かを守ろうとする力”。それをあなたたちは思い出させた。

そこまで話すつもりはなかった。でも…みんなに知ってほしかった」


その言葉に、ローザが口を開いた。


「だから…カテリーナ様は逃げたんだね」


「逃げたくなかった。信じたくなかった。だから…あえて“敵”になろうとした」


「でも、カテリーナ様の本当は…守りたい人のために立っていたんでしょ?」


とリセル。


ミイナとルナも手を重ねてクロエに寄り添った。


「…もう一度、未来を信じてみませんか?」


カテリーナは静かに目を閉じたまま、ゆっくりと息を吐いた。


「…エルネアだけは、知っていたのですね」


エルネアが声に出して頷く。


「それを踏まえて、カテリーナが今ここに立っている。異例です。救いを願う者ほど、“囚われやすい”のに」


「カテリーナ様は…違った。闇を抱えながらも、“歩きたかった”んでしょう」


その言葉に、カテリーナは少しだけ微笑んだ。


「…本当に…笑って…いいの?」


健司は黙ってうなずいた。


「あなたの痛みには、僕と仲間たちが寄り添います」


その声を受け止めて、クロエがそっと手を伸ばした。


リセル、ローザ、ルナ、ミイナもそれに続き――一つの輪ができた。


カテリーナはじっと見つめ、そしてゆっくりとその輪の中に歩み寄った。


「…ありがとう」


彼女の瞳には涙と、少しだけの希望が浮かんでいた。



その夜、村の焚き火の前。

幹部だった者たちも、ただ一人の“仲間”としてそこにいた。


どれだけ闇が深くても――

人の心は、希望に触れた瞬間、少しずつ光を取り戻す。


たとえ、それが氷のように冷たくても。


そして、その夜は、魔女と人間が共に過ごす新たな朝への、ほんの小さな一歩となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ