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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
アスフォルデの環⑧カテリーナ

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闇の奥に咲く光

「嘘……」


クロエが、信じられないというように呟いた。


「エルネアまで……」


リセルも、息を飲む。


ローザはただ、ぽつりと呟いた。


「まさか、アスフォルデの環の幹部たちが……認めるなんて……」


三人の魔女の目には、同じ驚きが宿っていた。


ソレイユ、セレナ、リーネ、そしてエルネア。

幹部たちが健司という一人の人間の言葉に心を動かされた――


魔女の誇り、魔女の絶望、魔女の怒り。

それらを抱えた彼女たちが、健司に“救われて”いた。


それを見ていたカテリーナは、ゆっくりと前に出た。


唇が歪む。表情には、怒りと焦り、そして――


「……危険すぎる」


静かな声だった。


だが、その言葉には確かな“殺意”があった。


「ここで終わりだよ、健司」


手を掲げると、空気が震えた。


「――ブラックアンビション」


真っ黒な闇が、空から降り注ぐ。


それはただの闇ではなかった。

恐怖、怒り、絶望、裏切り――すべての負の感情を具現化した魔法。


健司の周囲に、黒い霧のような闇がまとわりつき、心をむしばんでいく。


「怖いだろう?」


カテリーナは言った。


「これが、魔女の本当の姿だ。希望なんて、幻想だ。愛なんて、裏切られるだけ。信じたって、捨てられるだけ!」


健司は、闇に包まれながらも、前を見ていた。


「……カテリーナさん」


「何だ」


「あなたが一番……怖かったんですね」


闇の中で、健司の声は穏やかだった。


「誰もいなくなったあの日。何も信じられなくなった夜。誰かの名前を呼んでも、誰も振り返ってくれなかった。――違いますか?」


「黙れ……!」


「カテリーナさんは、すべてを失った経験がある。だから、“失うこと”が、何よりも怖いんですよね」


「黙れ!!」


怒声と共に、カテリーナが手を振る。


「ブラックソード――!」


闇の中から、漆黒の剣が無数に現れる。

その一本一本が、呪いと絶望を宿した刃。


刃が一斉に健司に向かって放たれた。


だが、健司は逃げなかった。

そのまま歩いていく。


闇が、心を試すように絡みつく。

剣が、魂をえぐるように迫ってくる。


――でも、それでも。


「カテリーナさん」


健司は、声を張った。


「あなたの光になります。……いつまでも、あなたのそばにいます」


カテリーナの動きが、止まった。


「……何を……言って……」


「一人で泣かないでください。もう一人で闇に沈まないでください。僕がいます。あなたを、ずっと見ています。あなたの中にある小さな光を……見つけていますから」


漆黒の剣が、目の前で止まった。


まるでその言葉に、心が揺れたように。


カテリーナの身体が震えていた。


「……やめろ……」


「あなたは誰よりも優しい。仲間が傷つくのを見たくなくて、自分が悪者になった。全部、自分のせいにして……それで皆を守ろうとした」


「……やめろ……!」


「――でも、そんなあなたの背中が、僕にはとても悲しかったんです」


カテリーナの目から、涙が一粒、落ちた。


「やめてよぉ……」


剣が消えていく。


空を覆っていた闇も、少しずつ晴れていった。


「私は……誰かのために生きたかっただけなのに……全部……壊れちゃった……!」


膝をついたカテリーナに、健司はそっと歩み寄った。


「……間違ってません。あなたの想いは、今も……ここにいます」


彼は、カテリーナの肩に手を置いた。


「一緒に、また歩きませんか。未来を、もう一度信じてみませんか」


カテリーナは震える唇で、やっとの思いで呟いた。


「……私には、もう何も……」


「僕がいます。クロエさんも、リセルさんも、ローザさんも……きっとあなたを待ってます」


その名を聞いたとき、カテリーナの顔がわずかに上がった。


「……私が戻っても……彼女たちは……」


「大丈夫。あなたが謝れば、きっと受け入れてくれます」


カテリーナは、もう一度だけ泣いた。


それは、怒りでも、憎しみでもない。


自分を許すための、涙だった。


やがて、彼女はゆっくりと立ち上がった。


その瞳には、少しだけ光が戻っていた。


「……あなた、本当におかしいわね。敵を救おうなんて」


健司は、笑った。


「そう言われるの、慣れてきました」


後ろで見ていたクロエ、リセル、ローザは、言葉を失っていた。


「……本当に、この人は……」


ローザが震えた声で言った。


「人間なんて、思えないわ……」


その言葉に、リセルはぽつりと呟いた。


「でも、だからこそ――惹かれるのかもしれない」


カテリーナは立ち上がり、肩に手を置いた健司の手を、そっと振りほどいた。


「……今すぐ、あなたの言葉を信じたとは言わない。けど……もう一度だけ、世界を見てみる。そう思ったわ」


健司は、力強くうなずいた。


「それで、十分です」


闇が晴れ、空に星が瞬いた。


魔女たちの心にも、少しずつ光が差し込んでいた。

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