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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
アスフォルデの環⑥ミリィ編

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動く闇と、囚われの希望

アスフォデルの環――


月光すら届かぬ地下深く、儀式の間。

その中央に浮かぶ巨大な水晶が、淡い青光を放ちながら、ひとつの映像を映し出していた。


画面の中には、南の村に暮らす健司たちの姿があった。


健司の声。

彼のそばで笑う魔女たち――クロエ、リセル、ルナ、ミイナ、そして、つい先日加わったミリィ。


どの顔も、穏やかだった。


「……これが、“魔女と人間が共に暮らす”っていうの?」


カテリーナが、嘲るように口元を歪めた。


水晶を見つめるその双眸は、冷たく、しかし確かな焦りが滲んでいた。


「気持ち悪いくらい、馴染んでるじゃない。笑って、手を取り合って……そんなことが、できるはずがないのに」


その隣に立つエルネアも、映像を無言で見つめていた。


「……このまま放っておけば、どうなると思う?」


カテリーナの問いに、エルネアは静かに答える。


「秩序が崩れる。“魔女は人を支配するもの”という価値観が、揺らぐ」


「そう。だから私は動く」


カテリーナがくるりと水晶の前を離れ、玉座に腰を下ろす。


その足元に、ヴェリシアが捕らえられていた。

両手を後ろで縛られ、魔力を封じられた彼女は、うつむきながらも、健司の映像をしっかりと見つめていた。


(あれは……“作られた”ものじゃない。心から……自然に生まれた関係)


ヴェリシアは、胸の奥に温かな痛みを覚えていた。


(あの時、確かに見た。ローザの笑顔、リセルの戸惑い、クロエの優しさ、そして健司のまなざし)


(偽りのない心……あれが、愛――)


「……健司は、脅威だ」


カテリーナの声が響く。


「魔法でも、力でもなく、心で魔女を変えるなんて……そんなもの、広がってしまえば、この世界の支配構造は崩壊する」


「それに、彼の周りの魔女たち――今や、アスフォデルの環の中核を担っていた者たちばかり。リセル、クロエ、ヴェリシア、そしてミリィまで」


エルネアは首を縦に振った。


「私も、同意する。健司を放置すれば、私たちは“人間に屈した魔女”と呼ばれ、崩壊は避けられない」


「だったら……他の魔女に落とされる前に、私がやる」


カテリーナの目が、鋭く光った。


「健司を殺す。そうすれば、“幻想”は壊れる」


「魔女と人間が共存できるなんて甘い夢を、叩き潰してやる」


水晶に映る健司の笑顔が、逆にカテリーナの心をざらつかせていた。


彼のような存在は、ただの“異端”ではない。


理論や恐怖、支配を超えて、“魔女自身の心”を揺さぶる力を持っている。


それが、何よりも恐ろしかった。


「動くのね」


エルネアが言う。


「動くわ。計画は私に任せて。私の“ブラックホール”で、あの村ごと――無に還す」


ヴェリシアが、苦しげに口を開く。


「やめて……あの人は……世界を変える人……!」


「は? 囚われてる分際で、よく言えたわね」


カテリーナは笑った。


「あなたまで落ちたんだね。あーあ、本当にめんどくさいわ」


だが、ヴェリシアはその冷笑を恐れなかった。


「……健司なら、きっとあなたたちをも……変えられる」


「は?」


「カテリーナ様達は“信じること”を捨てた。でも、健司は違う。あの人は、自分が傷ついても、人を信じ続ける」


「……そういうのが、一番ムカつくのよ」


カテリーナの声が、低くなった。


「救うとか、希望とか……“そんなの無理”って言われた私たちの努力や苦しみを、まるで“間違い”だったかのように……否定するんだから」


「でもね、私の中にある空虚は、誰にも埋められない。“正しさ”なんて信じない」


カテリーナは、立ち上がった。


その背に、暗黒の魔力――“重力の闇”が揺れていた。


「終わりにしましょう。“幻想”は、壊すためにあるの」


◆ ◆ ◆


一方その頃。


南の村では、健司たちが朝の支度を進めていた。


クロエは火を焚き、リセルは近くの泉から水を汲み、ミリィは静かに空を見上げていた。


(カテリーナ様が……動く気配がする)


その気配は、風に乗って、微かにミリィの魔力に触れていた。


「……どうしたの?」


健司が声をかける。


ミリィは微笑んだ。


「いえ……何でもないです」


(この平和を、私は守りたい)


その思いが、彼女の胸に小さな火を灯していた。


そして、その想いは……やがて戦いの決断を迫るものとなるだろう。


ヴェリシアの言う通り、希望があるのなら。


それはきっと、あの青年の中に――

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