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魔女達に愛を  作者: リーゼスリエ
クロエ編⑨マリエとクロエ

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マリエ vs クロエ

リヴィエールの中心部。吹き荒れる魔力の余波が、木々を揺らし、家々の窓を震わせていた。健司は、目の前に立つマリエを見据え、拳を固く握る。彼女の背後には、捕らえられたルナとミイナが、時空間の檻に閉じ込められている。


マリエの瞳は、闇を抱いたまま、微笑むことさえ忘れていた。


「どっちを選ぶ? ミイナ? ルナ?」


静かで、深い井戸の底から響くような声だった。


健司は即答した。


「救うよ、全員」


「……どっちかしか選べないの、健司」


「そんなはずない。そんな世界、僕は認めない。マリエさん、ルネイアさんもだ」


マリエの目が一瞬大きく開かれ、すぐに怒りへと燃え上がる。


「そんなことできるはずない。私は魔女ランキング30位、時空間のマリエ!」


地面に刻むように、マリエが叫ぶ。


「――クロックバインド!」


空間が波打ち、時間の結界が弾けるように展開された。無数の時の刃が、時空の裂け目から飛び出し、ルナとミイナに襲いかかる。


2人は目を閉じた。


その瞬間――。


闇の鎖が2人を包み込み、時の刃を打ち砕いた。


「何?」


低く響く声。


マリエが振り向くと、闇を裂くようにクロエが立っていた。


黒髪を風に揺らし、怒りを押し殺した目がマリエを射抜く。


「マリエ……ここで決着だ」


闇の魔力がクロエの周囲に渦を巻き、重く、濃く、空気を染めた。


「ダークスパイラル!」


クロエの手から闇の荊が、竜巻のようにマリエへと迫る。地面を抉り、空を裂き、触れたものすべてを呑み込む魔力。


しかし、


「――クロックリワインド」


マリエの周囲の空気が逆流し、闇の荊は発動前に巻き戻されるように霧散した。


「当たらないよ、クロエ」


マリエはほほ笑んだが、その頬はかすかに震えていた。


クロエの足元から影が伸びる。


「まだよ……!」


次の瞬間、時空の刃が雨のようにクロエを襲った。


「クロックバインド!」


斬撃の嵐。避けられない密度。


だが――。


クロエの身体が闇に溶けた。


「ダークイリュージョン」


マリエの刃はすり抜け、影を斬るばかり。


いつのまにかクロエはマリエの背後に移動していた。


「クロエ!」


「マリエ!」


2人が叫んだ瞬間、空が割れるほどの魔力衝突が起きた。


黒い魔法陣と、時空の刻印が空中でぶつかり、火花を散らす。


クロエの魔力が渦巻く。


「――ダークイリュージョン・ノクス!」


闇が夜の海のように広がり、空間そのものを飲み込む。


マリエの魔法も同時に発動する。


「――クロックマジック!」


時間を切り裂く魔法陣が展開され、クロエの闇を断ち切ろうとした。


一瞬、世界が止まった。


そして――。


闇が、わずかに先にマリエへ届いた。


「……っ!」


マリエの身体を黒い魔力が包み込み、地面へ叩きつける。


膝をつき、荒い呼吸をしながらマリエは呟く。


「負け……た?」


クロエは、すぐに追撃をしなかった。


その瞳に宿るのは怒りではなく、深い悲しみだ。


「マリエ……レオンのことは、不運だった。あれは……あなた1人のせいじゃない。それでも――今ならやり直せる」


マリエは息を呑んだ。

心の奥底で何かがほどけるように、涙がこぼれ落ちた。


「健司の……力か」


その言葉に、健司は首を振った。


「違うよ。マリエさんが……本当は優しい人だからだ」


マリエが涙を流した瞬間――。


ルネイアの気配が、空気を裂いた。


「……甘いね」


低い声とともに、彼女の雰囲気が変わる。

一瞬で空気が重くなる。


「ここからが本番だよ。魔女なんて、いくらでも狩ってきたからね」


クロエが身構える。


だが――。


はるか、はるか後方から、異質な魔力が世界を揺らした。


「何……? この魔力……」


ルネイアが震え、後退する。


「西の……魔女か?」


恐怖を隠し切れず、彼女は舌打ちをした。


「……撤退するよ」


カテリーナが叫ぶ。


「逃げる気!? ルネイア!」


「またね、カテリーナ」


瞬間、ルネイアの身体は時空の裂け目に消えた。


闘いの余波が消え、静寂が訪れる。


クロエが崩れ落ちるように座り込んだ。


「……終わった」


健司は駆け寄り、彼女の手を取った。


振り返ると、ルナとミイナが泣きながら抱きついてくる。


「健司!」


「こわかった……!」


健司は2人を抱きしめた。


こうして、リヴィエールの戦いは――終わりを告げた。


だが、彼らの前には、まだ西の魔女という新たな脅威が迫っていた。

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