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魔女達に愛を  作者: リーゼスリエ
クロエ編⑧反射の魔女 シミラ

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209/219

9位の魔女ルネイア

ルメが去った後のリヴィエールは、一見いつも通りの静けさに戻っていた。

 だが、誰も知らない。

 その静けさは“嵐が来る前の気配”そのものだった。




 ルネイアはマントを払って立ち上がると、仲間の2人に向き直った。


「作戦開始だよ。私とシミラが注意を引きつける。その間に――」


「私がルナとミイナを攫う」


 マリエが落ち着いて続きを言った。


「そう。あの2人は健司が最初に助けた魔女。

 ここを狙うなら、まず“心の揺さぶり”からだよ」


 ルネイアは唇を歪めて笑った。


「健司がどっちを選ぶのか――その答えを見たいんだ。

 選ばれなかった方には、“絶望”を見せてあげる」


 シミラは無表情のまま頷いた。


「結界の用意は整っています。時間を稼ぎます」


「うん、よろしくね。じゃ、行こ」


 3人は森を抜け、リヴィエールへ向かって歩き出した。



 夕日が傾き始めた頃。

 広場にいた住民たちは、突如空気が重くなったように感じた。


「ねぇ、何か……寒くない?」


「魔力の気配……?」


 空気がざわめき、影のように2つの人影が現れた。


「やぁ。リヴィエールの皆さん、ごきげんよう」


 現れたのは――ルネイア。

 その横には、人形のように無表情なシミラが立っている。


「っ……!?

 お、おまえは――9位の魔女、ルネイア!」


 そう叫んだのは買い物帰りのファルネーゼとヒシリエだ。


 ルネイアは軽く手を振ってみせた。


「久しぶりだね、炎の魔女たち。元気にしてた?」


「どうしてここに……!」


「ふふ……ここからが絶望の始まりだよ」


 その瞬間、シミラが手を広げた。

 淡い青色の結界が広場全体を包み込む。


「結界……!」




 健司たちはリビングに集まっていた。

 クロエが不在なのは珍しかったが、それ以上の異変が起きる。


 廊下を全力で走る足音が聞こえたかと思うと――


「大変です、ラグナ様!」


 リズリィが部屋に飛び込んできた。

 息は荒く、顔は強張っている。


「どうした?」

 

ラグナが眉をひそめる。


「敵襲です。 野蛮な魔女達が――来ました」


「……相手は?」


「9位の魔女ルネイアと、シミラ……二人です」


 その瞬間、空気が震えるほどの怒気が部屋を満たした。


「ルネイア……!!」


 怒りの声を上げたのはカテリーナだ。

 握りしめた拳が震えていた。


「前の戦いの“借り”、返させてもらうわ……!」


 健司がすぐに立ち上がる。


「みんなで行こう。リズリィ、場所は?」


「――広場です!」


「よし、行くぞ!」




 健司たちが広場に到着すると、そこではすでに戦闘が始まっていた。


「ファルネーゼ! ヒシリエ!」


 健司が叫ぶと、二人はこちらを振り向いた。


「健司! 来てくれたか!」


 ファルネーゼの腕が炎を纏い、ヒシリエは広範囲に炎を放っている。


 だが――


「当たらない!? なんで……!」


 ヒシリエが叫ぶ。

 炎が確かにルネイアに向かっているのに、彼女の身体に触れる前に風のように逸れていく。


「落ち着け、炎の魔女!」


 背後から厳しい声が飛ぶ。


「ルネイアは“物理型”の魔女だ。炎は読まれる」


「フラム様が言っていたな……」


 ラグナが剣を構えながら呟く。

 ただその一瞬の隙に――漆黒の魔力が走った。


「――ブラックホール」


 カテリーナの魔法が、ルネイアを飲み込まんと迫る。


 しかし。


 ルネイアは軽く跳んだだけで避けた。


 その動きは、まるで風が踊ったように滑らかだった。


「おっと、危ない危ない。カテリーナ、久しぶり」


「ルネイア!!

 前の戦いの仲間の仇、ここで返させてもらう!」


 カテリーナの怒気は膨らみ、黒い魔力が渦を巻く。


 だが、ルネイアは少しだけ首を傾げた。


「仇……? カテリーナ。

 あなた……“守られていただけ”のおまえに、何ができるの?」


 その一言で、広場は一気に張り詰めた。


 カテリーナの表情が歪む。


「黙れ……。

 私は――守られっぱなしじゃない……!

 健司に出会って……私だって……!!」


 叫ぶように魔力を放とうとした瞬間――


 ルネイアの目が、鋭く細まった。


「健司がいなかったら、あなたはまだ“弱いまま”よ?」


「――ッ!!」

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