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魔女達に愛を  作者: リーゼスリエ
クロエ編②大地の一族 ラグナ

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ラグナ vs 野蛮の3魔女

静まりかえる森の静寂の中、マリエが笑った。

 あははは、と心底愉しげに。

 その笑いは恐怖でも絶望でもなく、純粋な狂気の響きを帯びていた。


 「何がおかしい?」

 

ラグナの声は静かだった。

 しかし、その静けさの中にこそ、恐ろしい重さがあった。


 マリエは口元を歪め、赤く燃える瞳をラグナへ向けた。

 

「おかしい? ふふ、あなたたちの“絶望”が滑稽でならないのよ。

  さっきの一撃、確かに強力だった。でも──私たちを甘く見たわね?」


 その言葉と同時に、隣のシミラが手を前に突き出した。

 彼女の掌が淡い黒光を帯びる。


 「──カウンターワープ」


 空間がねじれた。

 ラグナが先程放った重力波が、まるで鏡に反射するように彼女へ跳ね返る。

 重力の塊が逆流し、ラグナを中心に空間が軋んだ。


 「くっ……!」

 

クラリーチェが叫ぶ間もなく、衝撃波が弾ける。

 だが、それで終わらない。


 「時をずらせ──クロックマジック!」

 

マリエの詠唱が重なる。

 時空が歪み、跳ね返された重力が“時間差”で再びラグナ達を襲う。

 見えない重力が2度、3度と波状に押し寄せた。


 「リズリィ!」

 

ノイエルが叫ぶ。

 しかし次の瞬間、3人目の魔女──ブラットレインが静かに呟いた。


 「ブラッド・パワー」


 空気が赤く染まった。

 リズリィ達の足元に無数の血の紋様が広がり、そこから血が抜かれていくような錯覚が起こる。

 実際、彼女たちの頬は蒼白になり、身体がふらついた。


 「なっ……血が……抜けていく……!?」


 クラリーチェの声が掠れる。

 ラグナの護衛であるリズリィたちは次々に膝をついた。

 彼女たちの魔力は著しく低下し、立ち上がることすらままならない。


 「ラグナ様……! お逃げください……こいつら、やばいです……!」

 

ノイエルの懇願に、ラグナは静かに目を閉じた。


 そして──次の瞬間、開いた瞳の色が変わっていた。

 深紅。

 血よりも濃い、地の底を思わせる色だった。


 「……弱いものいじめ、か」


 マリエが肩をすくめる。

 

「これは戦いよ。弱者は切り捨てられる。それが、この世界の理」


 ラグナの口角がわずかに上がる。


 「理、か。では、お前たちは“理”に耐えられるか?」


 その声とともに、空間が軋んだ。

 まるで天地が逆転するように、重力が狂い始める。


 「──《グランド・ゼロ》」


 地面が波打つように盛り上がり、やがて浮き上がった。

 マリエたちの足元の土が生き物のようにうねり、空中に舞う。


 「な、なに……⁉」


 シミラが叫んだ。

 足元がなくなり、彼女は宙に浮く。


 「まだだ」

 

ラグナの声が響く。


 彼女が掌を握りしめると、上空から無数の影が落ちてきた。

 それは岩塊。

 大地を構成する礫のすべてが、まるで巨大な質量の雨のように落下する。


 「アース・パワー──」


 その重さは人間数人分どころではない。

 都市を押し潰すほどの“重み”が、空間ごとマリエたちにのしかかる。


 爆音が轟く。

 衝撃波が森を薙ぎ払い、木々を吹き飛ばした。

 クラリーチェ達は倒れたまま、ただその光景を見つめていた。


 「……まるで、世界が潰れるようだ……」

 

ノイエルの声は震えていた。


 マリエ達3人は、地面に叩きつけられ、砂塵の中で呻いた。


 「ぐっ……な、何だこれは……!? 重力の魔法じゃないのか……!?」


 ラグナはゆっくりと歩み寄る。

 その歩みは音すらも吸い込むように静かだった。


 「いつ、私が“重力使い”だと言った?」


 マリエが目を見開く。


 「なに……?」


 「土の魔法の応用だ。

  大地は重みを知っている。

  その“重さ”を操る術が、重力だ」


 マリエの顔が歪む。

 

「まさか……お前、大地の一族か?」


 ラグナはしばらく無言だった。

 風が、彼女の銀髪を揺らす。

 やがて、静かに答えた。


 「……昔の話だ」


 その一言に、リズリィ達が息を呑んだ。

 

「ラグナ様が血統の一族だったなんて!」


 マリエが血を吐きながら笑う。

 

「ふふ……大地の一族、ね。

  じゃあ、あなたも“あの戦争”の生き残りか……。

  なるほど、どうりで化け物じみてるわけだ」


 ラグナの目が細められる。


 「……それ以上は喋るな」


 その声には、怒りではなく悲しみが滲んでいた。


 「血統なんて、呪いだ。

  力を誇る者は、力に呑まれる。

  私がそれを証明しよう」


 マリエが魔力を練り直す。

 

「まだ、終わってないわ!」

 

シミラとブラットレインも立ち上がる。

 ボロボロの体で、それでも彼女たちは笑っていた。


 「いいわ。血統の魔女だろうが、神だろうが──壊すだけ」


 ラグナは静かに息を吐く。

 

「なら、来い」

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