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魔女達に愛を  作者: リーゼスリエ
リーネ編⑦野蛮な魔女達

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孤高の魔女、真の姿

セイラは愉快そうに肩をすくめた。


「よくもまあ、ここまで踊ってくれたな。愛だの希望だのと騒いで……だが、私が望むのは反転だ。流した血はすべて力と化し、おまえ達を苛む。なぜ我らが“野蛮”と呼ばれるか……分かったか?」


「ふざけんなあああ!」

 

カテリーナが叫ぶ。


 しかし、セイラは楽しげに微笑むだけだった。


 ルネイアが一歩進み出る。


「カテリーナ……久しぶりだな。どうだ、自分だけ生き残った気分は? あの村を滅ぼした日のこと、忘れちゃいないだろう?」


「――おまえは……!」


 カテリーナの瞳に怒りが宿る。

 その怒りは長い年月の奥底に封じられてきたもの。だが、いま再び炎となって燃え上がっていた。


 野蛮な魔女たちが一斉に邪悪な笑みを浮かべる。

 監獄の空気は絶望で塗りつぶされ、息をするのさえ苦しい。


 その中で、セイラの声だけがやけに澄んで響いた。


「愛……くだらない。くだらないからこそ、壊す価値がある。おまえ達が信じる愛を、私は絶望に変える。それが私の存在理由だ」


「……なるほど」

 

健司が口を開いた。

 その声は震えていなかった。むしろ、誰よりも静かで、真実を突き刺す響きを持っていた。


「あなたは……愛が憎いんですね。自分が手に入れられなかったから」


 セイラの笑みが一瞬で消える。

 空気が揺らぎ、魔力の奔流が膨れ上がる。


「……何を……言った?」

 

その声は怒りと動揺に震えていた。


 ルネイアが慌ててセイラの肩を抑える。


「落ち着け、セイラ様!」


 だが、健司は止まらない。


「分かりますよ。昔、あなたは人間と魔女のカップルになろうとした。でも……叶わなかった。別の魔女がその人と結ばれたから。あなたはその瞬間、愛を呪った。だから“野蛮”に堕ちた」


「……っ!」


 セイラの雰囲気が一変する。

 狂気とも絶望ともつかぬ感情が溢れ、監獄の壁を軋ませた。


「おまえは異常だな、健司。痛覚を消して戦いながらも、なお愛を語るか……。そうだ。おまえの魔法は――思考具現。思った通りになる魔法だったな」


 セイラが手を掲げる。

 圧倒的な力が蠢き、空間そのものが軋みを上げる。


「――風魔法フシーウォーム。すべてを刻む風だ」


 切り裂き、刻み、命を塵に変える魔法が発動しようとした――その瞬間。


 空気が凍りつく。


「……誰だ?」

 

ブラッジが思わず声を漏らす。


 全員が感じた。

 異質な、孤独で冷たい、しかし確かな“魔女”の気配を。


 暗がりの中から、一人の影が歩み出る。

 その姿を見て、セイラの瞳が大きく見開かれた。


「まさか……おまえ……」


 彼女だけが知っていた。

 現れたその魔女の正体を。


「――孤高の魔女」


 監獄の空気が一変した。

 愛を語る健司の存在すら霞むほどの、絶対的な孤独と静謐を纏って――孤高の魔女が、真の姿を現した。

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