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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
アスフォルデの環①ヴェリシアとローザ

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南へ

焚き火の残り火が、ほのかに赤く揺れていた。

夜の空には満天の星が広がり、静寂の中に虫の声が微かに響いている。


旅の途中に立ち寄った小さな丘の上、健司たちは今夜も野宿をしていた。

クロエ、ルナ、ミイナ。それぞれに違う過去を持ち、違う恐れを抱えながらも、確かにひとつの灯の下にいる。


その夜、健司はいつもよりも真剣な顔をしていた。


「……そろそろ、住む場所を決めようか」


唐突にそう言った彼の声に、クロエが顔を上げた。

ルナもミイナも、焚き火の炎越しに健司を見つめる。


「ここまで旅をしてきて、いろんな魔女と出会ってきたけど……ずっとこのまま旅を続けるのは、限界があると思うんだ。特に……」


健司はちらりと、ルナとミイナに目を向けた。


「ふたりはまだ子どもだ。ちゃんと寝られる場所、安全な暮らし……それがあって初めて、自分の未来も考えられるようになるんじゃないかって、思ってる」


ルナは驚いたように目を見開いたが、すぐにうなずいた。


「うん……うれしい。健司くんと一緒に旅できるの、楽しいよ? でも……本当は、ちゃんとしたベッドで寝たいって思ってた……わがままかなって、言えなかったけど……」


ミイナも小さな声で続いた。


「私も……夜が怖くなくなってきたけど、やっぱり、灯りのある家が欲しい。夢が見られる場所が、あったらいいなって」


クロエはその様子を見て、少し微笑んだ。

けれど、その表情はどこか寂しげでもあった。


「……そうね。ふたりの気持ち、ちゃんと受け止めるべきだった。私も、大人のつもりでいて……過去ばかり見ていたのかもしれない」


健司は首を振る。


「クロエも、ずっと僕たちを守ってくれてたよ。誰よりも先に動いてくれてた。それに……これからだって、みんなで考えて決めていけると思うんだ。だから……僕たちに、家を探させてくれないか?」


クロエはその言葉に、真っ直ぐな瞳で応えた。

そして、少し思案するように空を見上げて言った。


「……南へ、行こうか」


「南……?」


ルナが小さく首をかしげる。


クロエは頷いた。


「ええ。南には、昔、一度だけ立ち寄ったことがある小さな村があるの。山と湖に囲まれた、静かな土地。魔女に偏見の少ない人が多かった。……まあ、十年以上前の話だけど」


ミイナが少し目を輝かせた。


「そこって……暖かい?」


「そうね。北のような雪は降らないし、海に近いから風も穏やか。植物もよく育って、薬草を集めるにはうってつけだったわ。あの時は長居できなかったけど……もしかしたら、今なら……」


健司が口を開いた。


「今なら、僕たちが変えられるかもしれないって、そう思ってる?」


クロエは静かに笑った。


「あなたに出会ってから、そういう希望を持つのが、少しだけ怖くなくなったわ」


ルナはパッと顔を輝かせた。


「じゃあ! 家はどんなのがいいかな? お花が咲く庭がいいな!」


「私は……月が見える窓があるといい。夜でも、ちょっとだけ外を見られるように」


ふたりの言葉に、健司も笑った。


「じゃあ、それを探す旅だ。僕たちの住む場所を、みんなで見つけよう」


クロエは、遠くの星を見ながら、かすかに頷いた。

彼女の目には、もう後ろではなく、未来を見つめる光が宿っていた。


「南へ向かいましょう。まだ見ぬ未来の家へ。私たちが安心して、暮らせる場所へ」


その言葉に導かれるように、夜が少しずつ明けていく。

新しい旅立ちが、また始まろうとしていた。


彼らの足は、いずれ“家”へとたどり着くだろう。

それは、ただ雨風をしのげる場所ではなく、誰もが「自分でいていい」と思える、心のよりどころとなるはずだった。

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