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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
リーネ編⑤四天王

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闇の双翼 ― クロエとリセル vs 死神ベルンド

死神ベルンドの鎌が振るわれた瞬間、空気そのものが悲鳴を上げた。

 重力さえ歪むような圧力に、クロエの黒衣がはためく。


「――《ダークイリュージョン》!」


 クロエの闇魔法が放たれる。

 その魔法は形を持たず、敵の精神に忍び寄り、幻影と恐怖を生み出す術。

 闇の靄がベルンドを包み込み、幻覚を見せようと誘う。


 だが、ベルンドの手にある死神の鎌が一閃されると、闇は切り裂かれ、霧散した。


「くだらん幻影だ」

 

ベルンドの瞳は一切の揺らぎを見せなかった。


 クロエの魔法は、確かに精神を揺さぶる。だが、強靭な意志と怒りを抱えるベルンドには通じにくい。


「ならば――わたしが行く!」


 リセルが前に躍り出た。

 彼女が操るのは、クロエのように掴みどころのない幻影の闇ではなく、現実を切り裂く刃としての闇。


「《ダークソード》!」


 闇が凝縮し、漆黒の剣がリセルの手に現れる。

 振り下ろされた一撃がベルンドの鎌と正面から交錯した。


 ――ギィンッ!


 甲高い音が響き、火花が散った。


 ベルンドは受け止めながら、口の端を歪めた。


「さすがに……アスフォルデの魔女たちか。だが――」


 瞳がぎらりと光る。


「男に恋したところで、幸せになるのは、一人だけだぞ」


 その言葉に、クロエの心が揺れた。

 リセルも目を見開いたが、すぐに健司へ視線を送り、決して退かない気持ちを取り戻す。


「健司が選んだのは……わたしたちを信じる道。だから、幸せは――みんなで掴むの!」


 リセルの声が、戦場に響いた。


 クロエは怒りに任せて闇魔法を放つ。

 濃密な闇がうねり、ベルンドを呑み込もうとする。


「《ダークイリュージョン・ノクス》!」


 その魔法は、幻影の極み。怒りに呼応して、闇は幾重にも重なり、鎖のようにベルンドへ絡みつこうとした。


 だが――。


 ベルンドは鎌を振るい、一撃で霧を散らした。


「感情に任せた魔法など、俺には届かん」


 クロエの目が悔しさに歪む。




その時、カテリーナが健司へ


「ねえ、健司」

 

背後からカテリーナが声をかけてきた。


「リセルとクロエの闇魔法の違い、わかる?」


 健司はベルンドを見据えながら、正直に答える。


「同じに見えるけど……」


「明確に違うのよ」


カテリーナが微笑む。


「クロエの魔法は“実態がない”。相手の心や認識を惑わせる、影の幻影。リセルの魔法は“攻撃”そのもの。闇を刃に変えて、現実を斬る」


 健司は息を呑んだ。


「そうなんだ……知らなかった」


「ふふ、勉強になったでしょ?」


 その会話を聞いたベルンドが、冷笑を浮かべる。


「くだらん。理解したところで、どうにもならん」





「これで終わりだ」


 ベルンドの鎌が振り下ろされる。狙いはクロエ。


 鎌が彼女の胸を貫いた――かに見えた瞬間、クロエの姿は闇に溶けて消えた。


「なっ……!」


 ベルンドの瞳に初めて動揺が浮かぶ。


「幻影だったのか……しまった。怒りはわざと……!」


 背後に気配。リセルが動いていた。


「これで――決める!」

 

リセルが闇を凝縮し、剣に封じ込める。


「《ダークスチール》!」


 漆黒の剣が鎌を絡め取り、そのまま押し砕いた。


 ガシャァァンッ!


 ベルンドの鎌が砕け散り、リセルの一撃が彼の胸をかすめる。

 闇の力が肉体を蝕み、膝をつかせた。





「ぐっ……負けた……か」


 ベルンドは地面に崩れ落ちる。

 虚ろな瞳でクロエとリセルを見上げた。


「魔女ごときに……俺が……」


 その声は悔しさよりも、どこか虚しさを帯びていた。


 クロエが一歩前に出る。


「あなたは……魔女に全てを奪われた。でも、わたしたちは違う。人と共に生きたいと願う魔女もいる」


 リセルも剣を収め、静かに言った。


「だから……あなたの憎しみを、これ以上広げさせない」


 ベルンドの目がわずかに和らぐ。


「……信じるのか……魔女と人の未来を……」


 その声は風に溶け、やがて戦いが終わった。


 戦場に静寂が訪れた。

 クロエとリセルは肩で息をしながらも、凛とした表情を崩さない。


 健司は二人に駆け寄り、無事を確かめた。


「二人とも……ありがとう。本当に強かった」


 クロエは少し照れながら、健司の視線を逸らした。


「わたしは……ただ、あなたを守りたかっただけ」


 リセルは微笑み、剣を消した。


「健司のために戦えるのなら、わたしはどんな敵にも負けない。」


 その言葉に、仲間たちも安堵の息をつく。


 しかし、誰もが理解していた。

 ――これで終わりではない。

 四天王を倒しても、その先にはまだ、さらに強大な敵が待っているのだと。


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