合体魔法サンムーン
先手を取ったのはソレイユだった。
「――サンフレア!」
黄金の光が爆ぜ、火球の嵐がカイリを焼き尽くそうと迫る。
だが、カイリは無造作に足を踏み出した瞬間、爆炎の中から突風のように姿を現した。
「遅い!」
瞬速の蹴りが閃光となり、ソレイユの体を吹き飛ばす。
「っ……!」
壁に叩きつけられたソレイユが苦しげに呻いた。
間髪入れず、セレナが月光を纏わせた魔法を放つ。
「――ムーンマジック!」
銀色の矢が幾筋も飛翔し、影を裂きながらカイリを射抜かんとした。
しかし。
「軽い!」
カイリは軽やかに身を翻し、矢を躱しながら拳を繰り出す。硬質な音が響き、セレナの防御結界が砕け散った。
床に倒れ込むセレナ。
「ぐっ……!」
圧倒的だった。力の差は歴然――。
「弱いな。この程度で世界を変えるだと?笑わせるな」
カイリが冷笑を浮かべる。
仲間たちの背後で健司が前に進み出ようとしたが、リセルとクロエが彼を制した。
「健司、今は見守って」
「彼女たちの戦いよ」
健司は拳を握りしめた。
「……確かに、以前の彼女たちなら勝てないだろう。でも、今の二人は違う。トラウマを乗り越え、自分を信じる力を掴んだ。だから――できる!」
その声に、ソレイユとセレナの胸が震えた。
「戯言を……!」
カイリが空気を震わせた。殺気が塔を満たし、床石が砕け散る。
「お前たちは“真の絶望”を知らない。教えてやろう」
両の拳に黒炎のような気が宿る。カイリの奥義――《魔女殲滅掌》が発動した。
一瞬で間合いを詰め、二人に同時に拳を叩き込む。
轟音。
ソレイユとセレナの体が宙を舞い、壁へ叩きつけられた。
「がっ……は……!」
「まだ……!」
血が滲み、膝が震える。それでも二人は立ち上がろうとした。
「どうして立つ?もう勝ち目はない」
「……違う」
ソレイユの声は震えていなかった。
「私たちは……逃げない」
「かつては、過去の痛みに縛られていた」
セレナが続ける。
「でも今は――健司がいて、仲間がいて、支え合える。だから!」
二人が互いに手を取り合った。
「「――サンムーン!」」
光と闇、相反するはずの魔法が重なり合い、塔全体を震わせた。
太陽の炎が月の輝きと融け合い、黄金と銀の輝きがひとつの極光となってカイリを呑み込む。
「なっ……!相反する属性が、融合……だと……!?」
轟音と閃光。
カイリの肉体を光が貫き、巨躯が崩れ落ちる。
床に膝をつきながら、カイリは血を吐き、なおも笑った。
「……ばかな……こんなことが……あり得るのか……」
「魔女と……人間が……互いを信じ合ったからこそ……か……」
塔の静寂を破るように、ソレイユとセレナは互いに倒れ込み、肩で荒い息をついていた。
「ソレイユ……やった……ね……」
「ええ……セレナ……ありがとう……」
二人の目に涙が滲む。健司が駆け寄り、傷を癒やしながら抱きしめた。
「よく頑張った……二人とも……最高だった」
仲間たちは歓声を上げ、重苦しい塔の空気が少しだけ和らいだ。




