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魔女達に愛を  作者: リーゼスリエ
リーネ編④救出に向けて

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白い塔へ

荒れ果てた平原の向こうに、雪のように白い塔がそびえ立っていた。

それは天空を突き破るかのごとく高く、どこまでも澄み渡る空を切り裂いていた。塔の周囲には城壁が幾重にも築かれ、まるで大陸そのものを支配する意志の象徴のようだった。


「──ここがホワイトヴェルだ。」


馬上のカリオペが低く告げた。その瞳には迷いはなかった。

健司たちは息を呑み、その塔を見上げる。圧倒されるような存在感に、胸の奥がざわめいた。


と、その時。

塔の根元から、一人の男が姿を現した。

深紅の外套をまとい、鋭い双眸を輝かせる。

領主──ブラッジ。ホワイトヴェルを治める男である。


「ようこそ、カリストの者たちよ。」


声は不気味なほど穏やかで、しかしどこか人を見下す響きがあった。


「そして……噂に聞く健司。アスフォルデの環を倒し、アナスタシアすら屈服させたという。なるほど、確かにただ者ではない。」


ブラッジの視線が健司を射抜いた。

その目に映るのは好奇か、それとも敵意か。

健司は自然と身構えた。


「返事を聞かせてもらおう。」


ブラッジの言葉は挑発そのものだった。


「我らと共に歩むか。それとも──敵として滅びるか。」


カリオペが一歩前に出る。

その声は凛として響き渡った。


「ノーだ。我々は妹を迎えに来ただけだ。戦うために来たのではない。」


一瞬の沈黙。

しかしブラッジは口角を吊り上げ、冷たく笑った。


「残念だ。」


その声には容赦の欠片もなかった。


「ならば──今ここが戦場となる。」


次の瞬間、白い塔の城門が開き、ホワイトヴェルの兵士たちが一斉に雪崩れ出た。

鋼鉄の甲冑をまとい、槍と剣を掲げ、戦鼓を鳴らして突撃してくる。その数は圧倒的で、地響きと共に大地を揺るがす。


「全軍、構えよ!」


カリオペの声が響く。

カリストの魔女たちが陣を張り、結界を展開した。青白い光が空を覆い、迫り来る兵の槍をはじく。だが敵は止まらない。幾千という兵士の波が、雪崩のように押し寄せてくる。


「健司!」


カリオペが叫ぶ。


「ブラッジを追え! 妹は塔の中にいる! 我らがここで兵を食い止める!」


「……わかりました!」


健司は頷き、仲間たちに振り返った。


「みんな、行くぞ!」


クロエが剣を構え、リセルが弓を引き絞る。

カテリーナは炎の魔法を纏い、エルネアが未来予測の光を周囲に放つ。ソレイユは静かに短剣を抜き、瞳に決意を宿した。

そして彼らと共に、リーネ、クラリーチェ、ノイエル、ヴァルディアら、かつて敵対した魔女たちも立ち上がる。


「過去を断ち切るために……!」


リズリィが叫び、月光の刃を振り抜いた。

その一閃が、突進してきた兵士の槍を粉砕する。


健司たちはその隙を突いて前へと駆け出した。

背後では轟音と怒号が渦巻き、火花と血飛沫が乱舞する。だが彼らの目はただ一点──白い塔の入口を見据えていた。


***


城門を抜け、塔の影に飛び込むと、冷たい風が肌を刺した。

塔の内部は異様な静けさに包まれている。外の激戦が嘘のようだった。


「この中に……」


健司は息を整えながら呟いた。


「カリオペさんの妹がいるんだな。」


「ええ。」


クロエが頷く。


「でも気をつけて。ブラッジが簡単に通すはずがない。」


その言葉通り、塔の奥から重々しい気配が迫ってきた。

やがて現れたのは──黒鎧に身を包んだ巨躯の戦士。

その背には巨大な戦斧が背負われていた。


「……四天王の一人だな。」


リセルが息を呑んだ。


男は名を告げず、ただ無言で槍を振り下ろした。

轟音と共に床石が砕け、破片が四散する。

健司はすんでのところで仲間を引き寄せた。


「来るぞ──!」


塔の中に、再び凄絶な戦いの火蓋が切って落とされた。

外ではカリオペとカリスト軍が血戦を繰り広げ、内では健司たちが四天王との死闘に挑む。

そして、その奥深くには──未だ知られざる真実が眠っている。


それを知る時、彼らの運命はさらに大きく揺れ動くのだった。

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