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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
リーネ編④救出に向けて

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四天王

高原を越え、岩山の隙間を抜けた先に広がるのは、純血主義国家と呼ばれたカリストの大地だった。

規律と秩序を感じさせる拠点があった。そこが今やカリオペの拠る根拠地である。


健司たちが到着すると、広場に整然と並ぶ魔女たちが出迎えた。その姿は、まるで一つの国家のようだった。


「相変わらず……」


クロエが小声でつぶやく。


「やっぱりカリオペの統率力は尋常じゃないわ。まるで国を率いる女王みたい。」


健司も頷いた。彼の目にも、カリオペの軍勢は単なる寄せ集めではなく、信念によって結ばれた集団に見えた。

やがて広場の奥から、白銀の髪をなびかせたカリオペが現れた。背筋を伸ばし、鋭い眼差しで一同を見渡すその姿は、凛然として美しい。


「よく来てくれた。」


その声には、不思議な威厳と温かさが同居していた。


「健司、そしてアスフォルデの環の者たち。今こそ手を携える時だ。」


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


健司は一歩進み出て頭を下げた。


「では……」


カリオペは静かに言葉を区切る。


「いよいよ、ホワイトヴェルに向かう。」


その言葉に、広場がざわめいた。

ホワイトヴェル──白い塔を中心とした聖域にして要塞。数多の魔女や勇士が挑み、誰一人として成果を挙げられなかった場所。そこに足を踏み入れるというのだ。


「ですが……その前に。」


カリオペは健司を見据えた。


「あなたに伝えておかねばならぬことがある。」


「……何でしょうか?」


「ホワイトヴェルの戦力だ。」


その瞬間、場の空気が緊張で張り詰めた。

カリオペは手を組み、ゆっくりと告げる。


「なぜ我らがこれまで手を出せなかったのか。その理由の一つが──四天王の存在だ。」


「四天王……?」


リセルが息をのむ。

クロエも険しい表情になる。


カリオペは頷いた。


「四天王は、ホワイトヴェルの領主ブラッジが配下とした四人の守護者。実力で言えば、私の側近──グルバルやハートウェルに匹敵する。」


「なるほど……。」


健司は腕を組み、考え込んだ。


「そうなると、一筋縄ではいきませんね。」


「そうだ。」


カリオペの声は低く、だが揺るぎなかった。


「彼らはただの戦士ではない。ホワイトヴェルの根幹を支える柱だ。それぞれが一国の軍勢に等しい。だが──それを突破せねば、塔に囚われた者たちを救えぬ。」


「囚われた者……」


健司の脳裏に、昨夜聞いた名がよぎった。レディア。カリオペの妹であり、聖光魔法を継ぐ存在。


「だからこそ協力が必要なのだ。」


カリオペは健司の瞳を覗き込む。


「あなたの力が。」


健司は少しだけ視線を逸らし、仲間たちを見回した。クロエ、リセル、カテリーナ、エルネア、そしてソレイユ。彼らは皆、期待と不安の入り混じった目でこちらを見ている。


「……わかりました。」


健司は小さく息を吐き、頷いた。


「僕にできることがあるなら、全力でやります。」


「ありがとう。」


カリオペの表情が一瞬だけやわらぐ。

だがすぐに、その目は再び戦う者のものに戻った。


***


その夜、健司たちはカリストの本拠地の宿に泊まった。。

電気の光の下で、仲間たちはそれぞれの思いを語り合う。


「四天王か……」


リセルが火を見つめながら呟く。


「私たちだけで勝てる相手なの?」


「勝つしかないんだよ。」


クロエが真剣な表情で言い切った。


「健司は一人じゃない。私たちもいる。」


「でも……」


カテリーナが腕を組んでそっぽを向いた。


「やっぱり健司ばかり頼られるの、面白くないわ。」


「ふふ、素直じゃないんだから。」


エルネアが苦笑する。


「でも、私も同じ気持ちよ。健司が無茶をして倒れるのは嫌。」


健司はそのやりとりを聞きながら、胸の奥に温かさを感じていた。仲間の声が、自分を支えてくれる。だから戦える。

しかし同時に、胸の奥でひっそりと疼く不安があった。


──四天王。

──そしてブラッジ。

──さらなる「真実」とは何なのか。


フクロウの鳴き声が、夜空に小さく響いた。

そのフクロウの鳴き声が消えゆくと同時に、健司の胸の奥にも不穏な影が広がっていった。


***


翌朝。

隊はついにホワイトヴェルへ向けて進発した。白い塔の姿はまだ見えない。だが空気が冷たく、どこか張り詰めている。草木さえ息を潜めているようだった。


「これからが本番だ。」


カリオペが馬上から声を放つ。


「皆の力を合わせねば、必ず打ち砕かれる。だが、共に行けば必ず道は開ける!」


魔女たちが声をあげた。その響きは山々に反響し、一つの意思を形作っていく。

健司もまた心に誓った。

──僕はこの道を歩む。仲間と共に。


しかしその先に待つのは、ただの戦いではなかった。

ホワイトヴェルの白い塔には、四天王だけでなく──健司達に関わる隠された真実が眠っている。

そしてそれが明かされた時、健司たちの信じてきたものさえ揺らぐことになるのだった。

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