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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
リーネ編③ホワイトヴェル

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136/161

朝日が差し込む山道を、一行は進んでいた。

目的地はカリオペたちとの合流地点――カリスト。

その空気には、出発の時特有の緊張感と、どこか遠足のような浮つきが混ざっていた。


健司の両隣には、クロエとリセルが寄り添うように歩いていた。

クロエは涼しげな顔をしているが、時折ちらちらと健司の横顔を見ている。リセルはといえば、健司に小さな布袋を渡したり、水筒を差し出したりと、甲斐甲斐しく世話を焼いている。


「ねえ、クロエ。もうちょっと詰めすぎじゃない?」


リセルが頬を膨らませる。


「何よ、あなただってさっきから腕を絡ませようとしてるじゃない。……別にいいでしょ?」


クロエがあっさり返す。


「だって健司、疲れてるかもしれないんだもん。」


「それなら私だって同じ理由で隣にいるのよ。」


そんな言い合いを聞きながら、健司は苦笑していた。


「二人とも、仲良くしてね。」


だが、その光景を後ろからじっと見つめる影があった。


「ずるい。わたしだって歩きたいのに!」


カテリーナが両手を腰に当て、ぷんと頬を膨らませる。


「カテリーナ様、落ち着いてください。」


すかさずソレイユがたしなめる。


「落ち着いていられるわけないでしょう! あの二人ばかり特等席なんて。」


「……また始まった。」


エルネアが深いため息をついた。彼女は冷静に見えて、視線は時折健司の背中に向いている。


「カテリーナ、ボスとしての威厳を。」


「何よ、エルネアだって我慢してるくせに!」


カテリーナがずばりと指摘する。


エルネアの顔が一瞬赤く染まる。


「そ、それは……っ。私は仲間全体のことを考えて……!」


「ふふ、図星ね。」


カテリーナがにやりと笑い、ソレイユが


「はあ……」


とまた深いため息を漏らす。




その日の夕方、一行は森の中で一夜を過ごした。

狩ってきた鳥を焼き、パンを分け合い、静かな時間を過ごしていたが――やはり話題は「誰が健司の隣に座るか」になった。


「今日は私が隣よ。」


とカテリーナ。


「それなら昨日は私だったから、今日はクロエでいいんじゃないですか?」


とリセル。


「公平にするなら日替わりにすれば?」


とリーネが口を挟む。


「公平……でも私はボスだから優先されるべきよ!」


「威厳と特等席は別物だと思いますけど。」


「エルネア、あなたは黙ってなさい!」


焚き火を挟んで繰り広げられる軽口に、健司は


「はは……」


と笑うしかなかった。だが、心の奥底では不思議と温かさを感じていた。


争っているようで、皆が自分を大切に思ってくれている。その気持ちが伝わるからこそ、どんな言葉も苦にならない。




翌日、森を抜けたとき、道を塞ぐように巨大な熊が現れた。

全員が戦闘態勢を取るが――


「私がやるわ!」


「待って、ここは私が!」


カテリーナとリセルが同時に前へ出て、魔獣の前で言い合いを始めてしまう。


「ちょっと、今は喧嘩してる場合じゃ――」


と健司が制止する間もなく、魔獣が爪を振り下ろした。


瞬間、クロエの防御魔法が展開し、ソレイユの太陽が閃いた。


「全く……どっちが健司のために戦うか、じゃなくて倒すのが先でしょ!」


クロエの声に、二人ははっと我に返り、息を合わせて攻撃に転じた。


結果、熊はあっさりと倒され、仲間たちは肩を落として苦笑した。


「……ごめん、つい。」


「わ、わたしも……。」


カテリーナとリセルが同時に謝り、健司は優しく微笑んだ。


「二人とも、ありがとう。僕のためにって思ってくれるのは嬉しい。でも無理はしないでくれな。」


その言葉に二人は顔を赤らめ、黙って頷いた。



夜空を仰ぎながら、健司はふと思った。


「……僕は幸せ者だな。」


隣で横になっていたクロエが問い返す。


「どうして?」


「こんなに大勢の仲間に支えられて、守られて……。みんなの気持ちを受け止められるように、強くならないとって思うんだ。」


クロエは少しだけ黙り、そして微笑んだ。


「そうね。……でも、強くなりすぎて私たちを置いていかないで。」


「置いていくわけないよ。」


健司はそう答え、クロエの頭を軽く撫でた。


火の粉がぱちぱちと舞い上がり、仲間たちは次々と眠りについていく。

だが、その胸の奥には、互いへの想いと、これから待ち受ける試練への覚悟がしっかりと宿っていた。




カリストは遠く、まだ見えない。

だが、一行の絆は少しずつ強まり、時に笑い合い、時にぶつかり合いながら、確かに歩みを進めていた。


それぞれの心には、「健司と共にある」という強い願いが芽生えている。

その願いが、次なる戦いに立ち向かう力になることを、まだ誰も知らなかった――。

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