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魔女達に愛を  作者: アモーラリゼ
リーネ編②孤高の魔女

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孤高の魔女

「カリオペ様、大丈夫ですか!」


 ルーイとネラスが駆け込んだ。息を切らしながらも、すぐに周囲に警戒を張り巡らす。結界を張り、気配を探る。だが、どこにも異常は見当たらない。

 先ほどまで確かに、あの場には――人智を超えた“何か”がいたのだ。


 「今のは……一体?」

 

ネラスが蒼白な顔で呟く。カリオペの肩を支えながら、震えを隠せない。


 「分からない。ただ、あれは……」


 カリオペの声は掠れていた。彼女ほどの魔女が、ここまで動揺しているのは異例だ。

 

「ラグナの魔法、そのものだった。だが――ラグナは確かに、私たちと対立はしていた。だが、力を行使することはなかった」


 「じゃあ、今のは……?」

 

ルーイが問いかけると、カリオペは首を振る。

 

「違う。ラグナではない。だが、確かにラグナの力を感じた。……いや、それ以上だ」


 その言葉に、グルバルとハートウェルが顔を見合わせた。二人の老練の魔女でさえ、背筋が凍る。

 

「……何物なんだ?」

 

「健司なのか? 否……恐ろしく強い。あれは人間の域を超えている」


 恐怖。

 それは未知に対する畏怖でもあった。

 

「危険すぎる……」

 

ハートウェルの声は低く沈み、誰も反論できなかった。


 ――その一方で、リヴィエール。


 アナスタシアとラグナは、同時に顔を上げた。


 「……気づいた?」


 ラグナの低い声に、アナスタシアは頷く。

 

「ええ。まさか、あの魔女が……来たの?」


 「そうとしか思えない」

 

ラグナの表情が強張った。彼女は冷徹無比、カリスト随一の力を持つ“裁断者”として知られる。しかし、今はその瞳に微かな怯えすら宿っていた。


 「……あの魔女、って?」

 

クラリーチェが問う。彼女は常に冷静だが、今ばかりは眉根を寄せている。隣でリズリィも苛立つように唇を噛んでいた。


 「孤高の魔女――」

 

アナスタシアが静かに言い放った。


 「トップ4に入る、化け物よ」


 その場の空気が一変した。クラリーチェも、リズリィも、一瞬だけ言葉を失う。トップ4――その響きは特別だ。

 魔女たちの世界における序列。その頂点に立つのは数えるほどしかいない。その存在は歴史と伝説に混じり、恐怖と敬意の象徴だった。


 「孤高の魔女……」

 

クラリーチェは吐き出すように呟いた。

 

「西の勢力に属する一人、か」


 「そう。彼女は群れない。常に一人で動く。けれど、その一人が動く時、戦場は塗り替えられる」

 

ラグナの声は硬い。

 

「かつて、白い塔と西の連合軍が衝突したとき、彼女一人の参戦で戦況が逆転した。たった一夜で――都市がひとつ、消えた」


 「……化け物ね」

 

リズリィが舌打ちした。


 「けれど、なぜ今? なぜ、ここに?」


 アナスタシアが問いかけると、ラグナは目を細めた。

 

「理由は分からない。ただ……健司に引き寄せられた可能性はある」


 その名を聞き、場にいる全員が再び沈黙した。

 健司――

 彼の存在が、いまや魔女たちの均衡を崩しつつある。

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