表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女達に愛を  作者: リーゼスリエ
セレナ編⑨あの国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/192

帰還

数日後、健司たちは無事にリヴィエールの街へと戻ってきた。

高原の街スラリーから帰ってくる道は、長く、そして不思議と短くも感じられた。戦いの緊張感や、ソールの謎めいた言葉、ラグナやリズリィとのやりとりが、すでに遠い出来事のように胸の奥で反芻されていく。


石畳の道を進み、見慣れた門をくぐったとき、街の空気はどこか安らぎに満ちていた。人々のざわめき、露店の匂い、そして子供たちの笑い声。すべてが懐かしく、そして温かい。


「――あっ!」


いち早く駆け寄ってきたのは、ルナとミイナだった。


「健司! 無事に帰ってきたんだね!」


「みんなも! 怪我はない?」


小さな体で抱きついてくる二人に、健司は自然と笑みを浮かべる。


「ルナ、ミイナ……会いたかったよ。本当に」


彼の言葉に、二人はぱっと笑顔を咲かせた。長い遠征を乗り越え、再会の温もりはなにものにも代えがたい。


リヴィエールの街には、健司たちが暮らす家が用意されている。仲間たちとともに過ごすために、アナスタシアやアウレリアの助力もあって整えられた拠点だ。

扉を開けた瞬間、木の香りと暖炉の残り火の匂いが広がり、胸の奥にじんわりと安心感が広がっていく。


――戦いのあとに帰る場所がある。

その当たり前が、こんなにも尊いものだったのかと、健司は改めて噛みしめた。


夜、皆がくつろぎ、それぞれの時間を過ごしているなか。

健司はセレナと向かい合って、静かに腰を下ろした。


「セレナ」


呼びかけると、セレナは少し驚いたように瞬きをした。


「なに?」


「レリアとまた会うことができたし……リズリィとも、決着をつけられた。本当に、よかったなって思うんだ」


その言葉に、セレナは少しだけ遠くを見るように目を細め、そして微笑んだ。


「そうだね。……私ね、今が幸せだなって思うの」


頬に指を添えながら、彼女の声は静かに、しかし確かに震えていた。


「お姉ちゃんがずっと夢に見ていた存在で……もう会えないって思ってた。でも、健司のおかげで……また一緒にいられる。こんな日が来るなんて、思ってなかったんだ」


「……」


健司はただ頷き、その横顔を見つめる。セレナの表情には、かつての影はない。過去の痛みも、憎しみも、いまは穏やかな光に溶けている。


けれど、彼女はくすりと笑って続けた。


「ただね……お姉ちゃんが健司を見る目が……ちょっと気になるかな」


「えっ?」


健司が目を瞬かせると、セレナはわざと拗ねたように唇を尖らせる。


「なんていうか……私が気づかないふりをしてるだけなんだけど。お姉ちゃんの目、前と違うんだよね。優しさだけじゃなくて……何か、大事に想ってる感じがするの」


「……」


「だから、健司。あんまり鈍感なこと言ってたら、私が怒るからね」


そう言って、セレナは頬を赤く染め、視線をそらした。


健司は苦笑しながらも、その言葉を真剣に受け止める。

――彼女の気持ちが冗談ではないことは、ずっと一緒に旅をしてきたからこそ、痛いほどにわかっていた。



翌朝。

街の光はやわらかく、風は澄んでいた。リヴィエールに暮らす魔女達、精霊の声が、遠くから響いてくる。


家の前に立つセレナは、陽射しに髪をきらめかせながら、そっと振り返った。


「ねえ、健司」


「ん?」


「私……これからも一緒にいたいよ。お姉ちゃんやみんなと過ごせる今がすごく大事で……それを守りたい」


その声には迷いがなかった。過去に囚われ、復讐に囚われていた少女はもういない。いまここにいるのは、未来を望む、一人の強い女性だった。


健司は静かに笑い、力強く頷いた。


「もちろんだ。僕たちは仲間だから」


その答えに、セレナは胸を撫で下ろし、微笑む。


――こうして、セレナの過去に決着がついた。

彼女は姉と再会し、健司たちとともに歩む未来を選んだ。


幸せと、少しの切なさを胸に抱えながら。

セレナの物語は、ここで一つの幕を閉じる。



その夜、リヴィエールの空には満天の星が広がっていた。

セレナは窓辺に立ち、ひときわ輝く星を見上げる。


「お姉ちゃん……私、幸せだよ」


呟きは夜風に溶け、静かに流れていく。

彼女の胸には、これからの日々への希望と、確かな絆が灯っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ