合体魔法
その瞬間、審問官たちが一斉に動いた。
彼女らが紡ぐ詠唱が重なり、森を赤く照らす炎の幻影が広がっていく。
「――《イリュージョンフレア》!」
複数人が同時に放つ範囲魔法が、森全体を焼き尽くすかのように迫ってきた。
地面が揺れ、熱風が肌を裂く。幻想と現実が交錯し、逃げ場をなくすような圧力が仲間たちに覆いかぶさった。
ラグナが冷然と言い放つ。
「これで終わりだ」
だが、その言葉の直後。
アスフォルデの環の魔女たちが前に躍り出た。カテリーナを中心に魔法陣が展開され、青白い光が彼女らを包み込む。
「――《プロクテションウォール》!」
防御の魔法が壁となって、押し寄せる炎を受け止めた。
轟音と共に衝撃が弾け、光と炎が激しくぶつかり合う。
仲間たちの衣を揺らす熱風。だが、壁は砕けない。
カテリーナが薄く笑みを浮かべた。
「……この程度で?」
その挑発に、審問官たちの表情が歪む。
だが、ラグナは動じず、ただ一言、低く命じた。
「リズリィ。奴らに現実を見せてあげろ」
「承知しました」
リズリィが一歩前に進み出る。月光を思わせる冷ややかな魔力が辺りを覆い、空気が凍りつく。
その姿に、セレナの瞳がぎらついた。彼女の胸の奥に宿る記憶――失われた姉の姿と、あの夜の絶望が鮮烈に蘇る。
「……私に行かせて」
セレナが前に出た。
その声は震えていなかった。燃えるような憎しみと、仲間を守る覚悟がその瞳に宿っていた。
「健司。リズリィは、私が倒す」
健司は彼女を見つめ、深く息をついた。
彼女の中にある決意を、彼は理解していた。止めることはできない。彼女が歩むべき道だと、感じていた。
「……いいよ。セレナ。君に任せる」
その言葉を受けた瞬間、セレナの瞳が一層鋭さを増した。
彼女は仲間たちの前に立ち、リズリィと真正面から向き合う。
森の空気が震えた。
すべての者が、次に訪れる衝突を予感していた。




