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Episode16-7

 「タツキちゃん、ごちそうさま。世の中には、こんなに美味しいものがあったのね。子供達にはずっと苦労をかけて来たから、今日はご馳走を食べさせて貰えてとても嬉しいの。本当にありがとう。」

 「私からも、お礼を言わせて欲しい。とても美味しかったよ。子供達がこんなに喜んでいるのは、久しぶりなんだ。本当にありがとう。」


 居住いを正して、真剣な顔でお礼を言ってくれるお母さんズ。私はただいつも通り料理を作っただけなのに、急に改めてお礼を言われると恐縮してしまう。


 「そんなこと…。いえ、皆んなに喜んでもらえて嬉しいです。こちらこそ、ありがとうございます。」


 自然と謙遜の言葉が口から出てしまいそうになり、私はそれを飲み込んだ。真剣なお礼に対して謙遜で返すのは違うと思い、素直にお礼の言葉を口にする。そんな私を見守る二人の顔はとても優しいものだった。


 私は今お布団の中にいる。あれから、双子ちゃんにねだられて一緒にお風呂に入った。せっかくだしエルダも誘ったのだが、なぜだか真っ赤な顔で断られてしまった。…エルダ、赤い顔して大丈夫なのかな。風邪じゃないといいけどな。


 …今日、エルダのお家に遊びに来て本当によかった。


 お風呂で温まったせいか、体がぽかぽかとする。なんだか胸の中まで温かくなったような不思議な感じだ。…今度は渼音も一緒に来れたらいいなぁ。隣のベットで寝息を立てている、エルダの顔を眺めながらいつの間にか眠りに落ちていくのであった。


 「本当にお世話になりました。とっても楽しかったです。」

 「タツキお姉ちゃん、行っちゃヤダっ!!」

 「…ソルもそう思う。タツキお姉ちゃん、行っちゃダメっ!!」


 小さな両手を使って、右足にぎゅーっと抱きついて離してくれないルナちゃん。同じく、左足にひしっとしがみ付いて離れてくれないソルちゃん。


 「…うーん。困ったなぁ。」


 そんな双子ちゃんの可愛らしいおねだりに、私はぽりぽりと頬を搔く。どうしたものかと思いながらも、自然と頬が緩むのが止められない。


 「ルナもソルも我が儘言っちゃダメでしょ! タツキはあたしと一緒にお城に帰らなきゃ行けないんだから。」


 腰に手を当てて、双子ちゃんをお説教するエルダ。そんな普段とは違うお姉さんエルダを見れたことでさえ、とても愛おしく感じてしまう。それぐらいエルダのお家は素敵で温かい場所だった。私はしゃがんで双子ちゃんに視線を合わせると、後ろ髪を引かれる思いで告げる。


 「ごめんね。本当はね、もっとここに居たいんだけど…。大切なお友達もお城で私の帰りを待ってるから、今日はもう帰らなきゃ行けないの。だけど、きっとまた遊びにくるよ。」

 「うー、ほんとうにぃ?」

 「…約束?」

 「うん。絶対に。約束だよ?」


 納得してくれたのか私を解放して、今度はトンコにぎゅーをする二人。


 「トンコ様も一緒?」

 「…トンコ様も一緒じゃなきゃイヤ。」

 「ボクもいっしょ、です。また、あそんであげるです!」


 そんな約束を交わしている、ちびっこ三人組を微笑ましく見守っていると、今度はお母さんズが優しく抱きしめてくれる。


 「タツキちゃん。エルダと一緒にいつでも帰って来てちょうだい。私達も待っているわ。ふふっ、なんだか娘がもう一人出来たみたいで本当に楽しくて嬉しかったのよ。」

 「ああ。ここはもうタツキちゃんの家だよ。家族に遠慮はなしだ。今度は、その大切なお友達も連れてくるといい。」


 家族か…。遊びに来てじゃなくって、帰ってきてか…。胸の奥がじんわりとして、視界が滲むのがわかる。


 「はい、ありがとうございます。私の家族は、遠い。とても遠いところにいて離れ離れになってしまったけど…。ここで皆んなに出会えて、家族って言って貰えて本当に嬉しかったんです。絶対にまた帰ってきます!」

 「…ええ、いつでも。待っているわ。」


 大きく手を振り、再会を誓う。私に出来た異世界の家族に向けて。

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