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Episode16-3

 「それで、何を騒いでいたんだい?」

 

 私は今リビングらしき場所に案内され、テーブルを囲みエルダが入れてくれたお茶を飲んでいる。最近、エルダのお茶を飲むとなんだかホッとするんだよなぁ。。エルダのお家は、決して大きくはないが綺麗に手入れがされており、どこか温かみを感じる。そんな場所だった。まるで、このお茶のようだ。


 「えっエルダが、お貴族様より偉いお貴族様? を連れてきちゃったの。私どうしたらいいのか分からなくって…。」

 「もう、インテ母さんったら。だからタツキはお貴族様じゃないんだってば!」

 「でも、エルダのちゃん。あなた、お貴族様より偉いって言ってたじゃない…。それに、あなたのご主人様だって。」


 どうやら二人ともお母さん呼びでいいらしい。…って、そうじゃなくて。


 「改めまして、タツキ・コテガワと申します。エルダの言う通り私は貴族じゃありませんので、どうかそんなに緊張しないでください。平民なのにラストネームを持ってるのは、故郷の風習なんです。」

 「インテ、落ち着いて。タツキ様が平民だとは理解しましたが、ご主人様だと言うのは?」

 「えーと。…私の故郷はとてもとても遠い所なんですけど、ひょんなことから私の親友とこの国に来たところ偶然国王様と出会いまして……。それで、運良く賓客として王宮で保護して頂ける事になったんです。ですので、エルダには侍女と言うより、大切なお友達としてお世話になっています。」


 この場で聖女召喚や異世界人だと言う事まで話しても、さらに混乱を広げるだけだろう。我ながら、事実を端的に話せたと思う。エルダの家族に嘘は吐きたくないからね。流石にエルダも異世界人だと言うことは、伏せてくれるつもりのようだ。


 「そうでしたか。いつもエルダがお世話になっております。」

 「混乱してしまい、恥ずかしい所をお見せしました。申し訳ございませんでした、タツキ様。」


 ミランお母さんとインテお母さんが、深々と頭を下げてくれる。だが、そんなに畏まられてしまっては決まりが悪い。このままずっとお母さんズを緊張させて、エルダの里帰りを台無しにしたくもない。


 「こちらこそ、急にお邪魔して申し訳ございません。混乱させるつもりはなくて…。ただ、お城でエルダの話しを聞いていたら、素敵なご家族だなぁと思ってお会いしてみたくなっちゃったんです。それに、さっき言ったように私はただの平民です。どうかそんなに畏まらず、ただのエルダの友達として普通に接して貰えませんか?」


 私達の会話をじっと聞いていた双子ちゃんが、おずおずと口を開く。


 「タツキお姉ちゃんは、エルダお姉ちゃんのお友達?」

 「…タツキお姉ちゃんは、怖い人じゃない?」

 「うん。私は、エルダのお友達だよ。それに、怖くもないよ? あなた達ともお友達になりたいんだけど、なってくれないかな?」


 私の言葉に、何かを確認するようにエルダを見上げる双子ちゃん。エルダが力強く頷くと、納得したように双子同士で顔を見合わせて小さくこくりと頷く。


 「「うん! タツキお姉ちゃんのお友達になる。」」

 「ありがとう。嬉しいなぁ。お二人のお名前はなんて言うのかな?」

 「ソルだよ。」

 「…ルナはルナ。」

 「ソルちゃんにルナちゃんかぁ。素敵なお名前だね。それじゃあ、これからよろしくね。」


 私が微笑みかけると、ソルちゃんは元気一杯に。ルナちゃんは、少し恥ずかしげに。二人とも可愛らしい笑顔を返してくれる。その様子を見守っていたお母さんズも、どうやらようやく安心してくれたようだ。


 「私は、インテ。エルダの母よ。よろしくね。タツキちゃんと呼ばせて貰ってもいいかしら?」

 「はい。もちろんです、インテさん。よろしくお願いします。」

 「私は、ミラン。今日は遊びにきてくれて嬉しいよ。タツキちゃん。」

 「ありがとうございます。ミランさんもよろしくお願いします。」


 普通に考えて、ただの平民が国王様に会うこともなければ賓客として国に迎えられることもない。そんな当然の疑問を呑み込み、エルダの友達として受け入れてくれるお母さんズ。想像していた通り、エルダのご両親らしい素敵で温かい人達だ。その優しさが、じんわりと心に染み込んでくる。


 「…タツキお姉ちゃんの肩にいる子猫ちゃんもお友達?」

 「ルナも気になってた! タツキお姉ちゃん、子猫ちゃんのお名前は?」


 ずっと気になっていたのだろう。そわそわと短い尻尾を揺らしながら、双子ちゃんが尋ねてくる。


 「この子は、トンコ。二人とも、仲良くしてあげてね?」

 「「うん!」」

 「エルダのいもうとたち、ボクはネコじゃないぞ、です。でも、オトモダチになってあげてもいいの、です。」

 「そうそう、トンコ様はケットシーなんだよ! タツキの従魔様なの。タツキは凄いでしょ!!」


 どやっ、と胸をはるトンコとエルダ。


 「「「「ねっねっね、ネコが喋ったあぁぁーーー!!!!」」」」


 …そうだったね。普通は猫は喋らないんだったよね。それもすっかり忘れていたよ……。


 「だから、ボクをネコあつかいしないで、です!!」

 「だから、トンコ様は猫じゃないんだってばーー!!」


 驚きの声と抗議の声が交差する。何はともあれ、エルダの家族が素敵な人達で良かったなぁ。

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