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Episode14-6

「くっくっくっ、タツキは可愛いな。それに人気者だ。」

 「ステファニア様、もう勘弁してください…。」

 「ボクも! ボクもタツキがとてもきにいった、です!!」


 それまで我関せずと、夢中ではぐはぐポークチャップを食べていた子猫ちゃんが、突然口を挟んでくる。


 「ありがとう。君は可愛いね。」

 「キミじゃない、です。キミは、イヤ、です。」

 「でも、名前はないんでしょ? なんて呼べばいいのかな…。」

 「タツキがかんがえてもいいよ、です。ボクがゆるすの、です。トクベツなの、です。」


 子猫ちゃんからの名付けの依頼に驚きながらも、首を捻り考える。


 …うーん。いきなりだと何も思いつかないなぁ。せっかくポークチャップを気に入ってくれたみたいだし、それに関連する名前にしようか。ポーク、ポーク、豚、ブタ、ぶた…。


 「じゃあ…トンコ。君の名前はトンコでどうかな?」

 「…龍貴ちゃん。それはちょっと…。そうだっ、この子は男の子だよ。トン子だとちょっと女の子っぽくないかな? もう少し考えた方が…。」

 「…この国基準だと女の子っぽいかは、わからないけど……。でもエルダも、もうちょっと考えた方がいい気がするよ…。」

 「変かな? 豚肉が好きな子猫ちゃんだから、トンコなんだけど…。」


 どうやら、渼音とエルダには不評のようだ。ステファニア様とロレーナは、先程からずっと驚いたような唖然としたような顔で成り行きを見守っている。自分にこういうセンスがないのは知ってるけど、流石にそんな顔をされる程だろうか。


 「どうかな? トンコじゃ嫌かな。」

 「わるくないの、です。ボクはきょうからトンコとなのるのだ、です。」

 「「えーっ!?」」


 子猫ちゃん、もといトンコからの了承に渼音とエルダが驚きの声をあげる。二人とも、ちょっと失礼だと思うよ…。トンコは満足してくれたらしく、尻尾をフリフリさせご機嫌な様子だ。


 「それじゃあ、トンコ。これからよろしくね?」

 「うん、なのです。タツキはボクのトクベツだから、です。」


 トンコの頭を撫でてあげる。毛並みが良いもふもふが心地よい。…その時だった。撫でている手から魔力がずわっと吸い取られ、辺りが光に包まれる。


 「え? なにこれ!?」

 「けいやくだよ、です。」

 「契約って?」

 

 魔力が吸われたのには驚いたが、私もトンコもなんでもないようだ。だけど、トンコの言っている意味がわからない。


 「恐らく、ケットシー様。いえ、トンコ様とタツキさんの従魔契約の事でしょう。」

 「ああ、魔物や幻獣、もちろん聖獣も含むが、それらに名を与えるという事は、基本的にそうなる事を意味するのだ。今回の場合は、トンコ様がタツキを特別と認めタツキもそれに応えて名を与えた。そして、自分の魔力を分け与える事で従魔契約が成立したのだ。……やはり分かっていなかったようだな。」

 「そんな…。」


 だから、二人ともさっきから変な顔をしてたんだね。てっきり、私の名付けセンスの無さに呆れているのかと思ってたのに。


 …そうならそうと教えて欲しかったよ!!


 「従魔って…。ねえ、トンコは本当にそれでいいの? 私は何の力もないし、トンコにとって良いご主人様になれないかもしれないよ。それにトンコは、渼音の魔力に惹かれて遠い所からわざわざここまで来たんでしょ。なにも私なんかの従魔にならなくても…。」


 そうなのだ。そもそもトンコは、渼音が持つ魔力に惹かれてニステルローイ王国まで来たと言っていた。その話しを聞いた時に、渼音にとって理想のパートナーになってくれるんじゃないかという確信めいた予感があったのに…。


 「だいじょうぶ、です。タツキがよわくてもボクがまもるよ、です! ボクはつよいんだそです!! そのかわりタツキはいっぱいボクにリョウリをつくってたくさんゴハンをちょうだいね、です。」

 「んー。本当にトンコがそれでいいなら、お料理を作るくらいはなんでもないけど…。だけど、あんまり食べすぎちゃダメだよ?」

 「それはやくそくできないかも、です。」

 「まあ…とりあえず、これからよろしくね。」


 溜め息混じりに、食いしん坊な子猫ちゃんの喉を撫でる。


 「龍貴ちゃんは本当に凄いね。伝説の聖獣さんと従魔契約しちゃうなんて。やっぱり龍貴ちゃんは私のヒーローだよ。」

 「ロレーナさん、またタツキがやらかしましたね。タツキがやることは不思議だらけで、あたし付いて行くのが大変です…。」

 「ええ、エルダ。貴方も大変ですね…。心中察します。」

 「くっくっくっ、聖獣様と従魔契約を結ぶなど聞いた事がない。タツキは本当に面白いな。ますます興味が湧いてきたよ。」


 私は現実逃避気味に、トンコをもふもふして四人の会話を聞き流す。お散歩から始まったひょんな出会い。それがまさか、こんなことになるなんて。それでも今は、この新しい出会いを喜ぼうと思うのだった。

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