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Episode14-4

 子猫ちゃんを渼音に預けてキッチンに入ると、さっそくダークポルコを切り分けていく。まずは、端っこを薄切りにして味のチェックだ。ステファニア様の話によると豚系の魔物らしいので、今日のメニューはポークチャップで問題ないと思うが、味見をしてみないことにはわからない。


 肉の切れ端をフライパンでしっかりと焼き、塩を少しだけ振って食べてみる。旨味が凝縮された赤身と、蕩けるような脂身の甘さが口の中一杯に広がる。


 「なにこれ!? …凄い。」

 「美味しいだろう? 魔物の中には、家畜より美味しいものが沢山いるんだ。そのダークポルコは豚系の魔物の中でも一二を争う美味さと言われている。」

 「そうなんですね…。本当に美味しいです。びっくりしました。」

 「ふふっ。喜んでもらえて何よりだ。それにしても、この対面式オープンキッチンとやらは面白いな。料理人と会話しながら、調理過程を見れる所が実に良い。市井の飲み屋では、このようなカウンターがあると聞いた事があるが、これは良いものだな。」


 物珍しいキッチンに嬉しそうなステファニア様と会話しながら、ダークポルコの肉を厚切りにしていく。切り分けた肉を、筋切りし塩と胡椒をふっておく。玉ねぎも薄切りにしておこう。


 「それで、ポークチャップとはどのような料理なのだ?」

 「えーと。この前、薬師団で調味料を作ったのはご存知ですか?」

 「くすくすくす。ああ、アドリアーナやコルネーリアから話しは聞いているよ。この国始まって以来初の歴史に残る快挙だとね。」


 可笑しそうに返事をするステファニア様。恥ずかしくて、顔から火が出そうだ。だって、調味料は作るのが大変だから仕方ないんだもん!


 「…その時作った調味料を使う料理です。せっかくなので、使ってみようと思いまして……。」

 「ほう。異世界の調味料を使った料理か。それはますます楽しみだ。味見だけでも随分と美味しかったと聞いているよ。」

 「龍貴ちゃんが好きな、ケチャップと言う調味料と豚肉の相性が絶妙で美味しんですよ!」


 子猫ちゃんと遊んでいた渼音が説明してくれる。もう随分と仲良しになったみたいで何よりだ。


 …この世界では揚げ物は好評だから、トンカツでも喜んで貰えるだろうけど、せっかく調味料を作ったのにトンカツにソースをかけるだけって言うのもなんだしね。

 

 それに渼音の言う通り、私はマヨラーならぬケチャラーだったりする。さすがに度が過ぎたマヨラーのように白米にかけようとは思わないけど、目玉焼きにはケチャップ派だし、一番好きなパスタはナポリタンだ。中華料理屋さんやファミレスで唐揚げにケチャップが添えてあると、ここのお店は分かってるなって思うよ。


 話しをしながら、熱したフライパンに油を入れ玉ねぎをさっと炒めて端に寄せておく。そこに、先程厚切りにしたダークポルコの肉を入れ、両面がキツネ色になるまで焼いていく。


 「いいにおいがするよ、です! ニンゲンがするリョウリというのはおいしい、ですか?」

 「皆んなが美味しく作れる訳じゃないけど、タツキちゃんの料理は美味しいよ!」

 「タツキが作れる料理はどれもとっても美味しいです! 幸せの味がして、あたしもとっても大好きです!!」


 えへんと、胸を張る渼音とタツキ。どうやら子猫ちゃんは、調理された食べ物を食べた事がないらしい。…喜んで貰えると良いけど、聖獣が喜ぶ味なんてわからないからいつも通り作るしか出来ないよね。


 お肉が良い感じの焼き色になってきた。水とケチャップ、ウスターソース。それに顆粒タイプのコンソメを混ぜ合わせておいた味付け用ソースをフライパンに流し込む。実は、顆粒コンソメも作っておいたんだよね。この世界のスープは美味しくないけど、コンソメスープこそ一から作るのは手間がかかるし、顆粒コンソメはこうして料理の味付けにも大活躍する。やはり作っておいて正解だった。この際、多少の恥は仕方がないと諦めよう。


 ソースを入れたフライパンからは、ジュワァと食欲を唆る音と匂いが溢れ出す。ステファニア様は興味深そうにカウンターから身を乗り出してこちらを見ているし、子猫ちゃんとエルダはシンクロした動きで、耳をピンと立て尻尾をフリフリしている。


 更に盛り付け、彩にトマトとブロッコリーを添えたらポークチャップの完成だ。


 「渼音、お皿を運ぶの手伝って。エルダは、パンとスープを持って行ってね? 今日はテーブルで食べるから、そっちにお願いね。」

 「「はい!!」」


 二人とも元気よく返事をし、お手伝いをしてくれる。なんだかこういうのっていいなぁ。まるで家族のようだ。


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