Episode14-3
「ボクはおなかがへったのだ、です。」
どうやら子猫ちゃんのお腹の音だったようだ。再び、ぴょんとジャンプし渼音の肩から私の膝に帰って来ると、えへんと胸を張りそう告げる。こんなに小さな体で、あんなに大きな音が出るんだね…。
「これは失礼致しました。実はちょうど良い肉が手に入りましたので、手土産として持って参りました。ダークポルコのロース肉でございます。どうぞこちらをお召し上がりください。」
「ボクこれだいすきなやつ、です! ヒメニンゲンはいいひとなんだね、です!!」
大きな木の板に乗せて差し出された巨大な肉塊に、すぐさま齧り付く子猫ちゃん。はぐはぐと、夢中で食べている。よっぽどお腹が空いていたんだね。その食べっぷりに圧倒されていると、ステファニア様が私に言葉を掛けてきた。
「久しいな、タツキ。いつもコルネーリアが世話になっているようで、すまない。あれは、我儘な所があるからな。迷惑をかけていないか?」
「お久しぶりです。ステファニア様。いえいえ、そんな事ありません。仲良くして頂き有り難いです。」
「そう言って貰えると助かる。ケットシー様に関しても、よく我が城へお連れしてくれた。これは、その礼だ。」
そう言って差し出されたの、子猫ちゃんが食べているものと同じ肉塊だった。
「タツキは料理が得意と聞いている。このダークポルコは、豚系の魔物で非常に美味なのだ。ぜひミオンと食べてくれ。」
「ありがとうございます。」
「わー! ありがとうございます。龍貴ちゃん良かったね!」
「うん。せっかくだから、早速夕飯に使わせてもらおうか?」
「ほう。それはぜひご相伴にあずかりたいものだ。」
え? っと私はステファニア様をみる。
「先程も言ったが、コルネーリアから散々自慢されていてな。タツキの作る菓子などは絶品だと。なに心配ない。王宮の料理長には伝えてあるし、私はもう立派な大人だ。母上やティエリーの許可など必要ない。自分の食事くらい自分で決めるさ。……そうだな。問題があるとすれば、私がコルネーリアより先にタツキの料理を食べたと知れば、あやつが顔を真っ赤にして悔しがることくらいか。」
くっくっくっと、愉快そうに笑うステファニア様。料理長に伝えていることと言い、これは初めからそのつもりでお肉を持って来たんだね。完璧な周囲への根回しと、用意周到さに舌を巻く。ステファニア様は、物凄く仕事が出来るお姉様のようだ。ここまでされては、断る理由が見つけられない。
「…わかりました。お口に合うか分かりませんが、私の料理で良ければご一緒しましょう。」
「ボクも! ボクもタツキのリョウリたべる、です! さっきのおかしも、とってもおいしかったです!!」
「いやいや、君はもう沢山お肉を食べたでしょ? それにさっきも言ったけど、猫に人間の食べ物は体に悪いんだよ。」
「だから、ボクをネコあつかいしないで、です!」
「うむ。タツキ、それに関しては問題ないだろう。実際、ケットシー様は見た目こそ猫に近いが、聖獣様なのだ。その強大な魔力量と魔力の扱いの上手さは、数いる聖獣の中でもトップクラス。そのため、魔法に関してはドラゴンをも凌駕すると言われている。そんなお方なのだから、人間と同じ食べ物を食すくらいなんでもないだろう。」
「そうなんですね。…それなら。だけど、お料理を食べたいなら、それ以上そのお肉は食べないで。いくら聖獣でも、食べ過ぎは体に良くないよ?」
「わかったのだ、です!」
「ふふふ。龍貴ちゃんとケットシーちゃんは仲良しさんだね。」
むしろ渼音と子猫ちゃんこそ、これから仲良しになっていくんだろう。話しを聞く限り、子猫ちゃんがニステルローイ王国まで来たのは渼音の魔力が気に入ったからだ。聖女様が聖獣や幻獣をテイムするのは定番な気がするし、ドラゴンより凄い魔法の使い手が渼音の傍にいてくれれば私も安心できる。
「うーん。どうかな? それより料理を作り始めようか。今日はポークチャップにしよう。」
「龍貴ちゃんの大好物だね! 私も久しぶりに食べたいなぁ。」
「うむ。それは楽しみだ!」
「ボクも! ボクもたのしみ、です!!」
後方では、密かにエルダもクビをブンブンと縦に振っている。大丈夫。エルダ達の分も、ちゃんと作るからね?
みなさん、こんばんは。しっぽと申します。
先回の後書きで、エピソード14は1-4になる予定と書きましたが予想外に文量が増えてしまいそうな感じです…。
そのため、予定を変更して1-6になると思いますが、よろしくお願い致します。
追伸
私はこのお話しが処女作なのですが、なんと先日初めて評価を付けて頂けました。
私の作品を読んでくださる方が、1人でもいるだけで嬉しいにブックマークを付けて頂いたり評価まで頂けるなんて思ってもおらず、なんだか胸がドキドキしております。
この場をお借りし全ての読者様に感謝を。いつもありがとうございます。