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Episode14-2

 「ただいまー。」

 「おかえり、タツキ! 少し遅かったから、エルダ心配してたんだよ!?」

 「ごめん、ごめん。なんだか気持ちの良い天気だったからお散歩してきたんだ。」

 「えー、だったらエルダも一緒に行けば良かった。」

 「エルダはお仕事があったんでしょ?」

 「そうだけどー!」


 エルダに帰宅を告げソファに座ると、会話をしながらも手早く入れたお茶を出してくれる。一応賓客扱いの私に付けられた侍女だけあって、実はとても優秀なエルダさんなのだ。普段話していると忘れそうになるけどね。


 「そうそう。この世界の猫って喋れるんだね。私、びっくりしちゃったよ。さっきお散歩してたら、可愛い子猫ちゃんと会ってさー。」


 お散歩中に出会った子猫ちゃんの話しをしようとすると、エルダが不思議そうに首を傾げる。


 「タツキ、何言ってるの? 大丈夫?? 猫が喋る訳ないじゃん…。」

 「えっ!? だってさっき…。」

 「ネコがしゃべるわけないだろ、です。」

 「そうそう。……って! ねっ、ねね、ねっ猫が!? 猫がしゃべってるー!!」


 見事な程のノリツッコミをかますエルダ。…この世界にもノリツッコミってあるんだね……。ってそうじゃなくて!!


 「なんで君がここにいるのさ!?」

 「ニンゲンのおかし、おいしかったの、です! ニンゲンのこと、きにいったの、です。それに、ここは、やさしいまりょくをつよくかんじる、です!」

 「本当に猫が喋ってるよぉー!」

 「ネコニンゲン、うるさい、です。ボクをネコあつかいするな、です!」

 「ほっ、ほっ報告しなきゃ。ロレーナさんに、報告しなきゃ! またタツキがやらかしたー!!」


 そう叫びながら走って部屋から出ていくエルダ。またってなんだよ。またって。別に私はやらかした事などないし、今回だって子猫ちゃんが勝手に付いてきただけだ。一人部屋に残され手持ち無沙汰になった私は、子猫ちゃんを膝に乗せて喉をころころと撫でるのであった。


 「ニンゲン、そこなの。そこをもっとなでろなの、です。」

 「はいはい。私の名前は、人間じゃなくて龍貴って言うのよ。君にも龍貴って呼んで貰えると嬉しいな。」

 「わかった、です。タツキとよんであげる、です。とくべつ、です。」


 気持ちよさそうに目を細め、ゴロゴロと唸りながら了承してくれる子猫ちゃん。ちょっとだけ生意気な所も本当に可愛いなぁ。


 「はいはい。ありがとうございます。ところで、君のお名前は何て言うの?」

 「なまえはまだない、です。こうきなボクに、なづけをできるニンゲンなんかめったにいないんだぞ、です。」

 

 偉そうに言っているが、私の膝の上でお腹を見せて気持ち良さそうにだらんと寝そべっている姿は、とても高貴なお猫様には見えない。だけど、変ではあるが敬語を使おうとしてるし、そもそもこの世界の猫も普通は話しをしないらしい。不思議な子猫ちゃんである。


 その時だった。勢いよく扉を開けて、入って来たのは、なんとステファニア様だった。後ろには、ロレーナさんとエルダを従えている。どうやらエルダから話しを聞いたロレーナさんが、王族へ報告をあげたらしい。ロレーナさんとエルダの更に後ろには、渼音もいる。


 ステファニア様は部屋に入ると、脇目も振らず私達が座っているソファに向かって歩いてくる。優雅な所作で歩いているから分かりにくが、ものすごく早い。競歩の選手並みに早いよ。私の目の前で立ち止まると恭しくカーテシーをし、跪いた。


 「お初にお目にかかります。私はニステルローイ王国が第一王女、ステファニアと申します。所用で不在の国王に代わり、名代としてご挨拶に参りました。突然のご訪問、大変ご無礼かとは存じますが何卒ご容赦頂きたく…。」


 …!? あのう、私達は初対面じゃないんですけど…。久しぶり過ぎて忘れられちゃったのかな。コルネーリア様とは薬師団で頻繁に会っているけど、ステファニア様とはあの初対面の日以来会っていなかったしね。だとしても、ちょっとショックかも…。突然のことに目を白黒させていると、子猫ちゃんが膝の上で居住まいを正した。


 「であるか、です。」

 「噂に名高い聖獣である、ケットシー様とお会いでき光栄でございます。」

 

 …私に話しかけてたんじゃなかったよ!!


 まさか、ステファニア様が子猫ちゃんに話しかけているとは思わなかったよ…。それよりも、今聖獣って言わなかった?


 「不躾ですが、ケットシー様はなぜ我が国へ参られたのでしょうか?」

 「うーん。それはねえ、ここからやさしいまりょくがながれてたからなの、です。そこのニンゲン、こっちにきて、です。」

 「えっ、私?」


 子猫ちゃんの視線を辿ると、そこには渼音がいる。突然指名された渼音が驚きながらもソファの傍まで歩いてくると、子猫ちゃんはぴょんとジャンプし渼音の肩に乗っかる。そして、渼音の首筋に鼻を擦り付けて、くんくんと匂いを嗅いでいる。


 「やっぱり、です。やさしいまりょくは、このニンゲンからあふれている、です。」

 「そうですか…。このミオンは、聖属性魔法の適正を持つものです。恐らく、それがケットシー様の仰る優しい魔力の原因でしょう。」

 「ふーん、なのです。ボクはここがきにいったよ、です。しばらく、ここにすむ、です。」

 「なんと! それは光栄な事でございます。心ゆくまで我が国にご滞在頂ければ幸いです。」


 展開の早さについていけない私と渼音を置いてけぼりにして、子猫ちゃんとステファニア様の間ではどんどん話しがついていく。


 「ちょ、ちょっと待ってください!」


 私が思わず口を挟んだその時、ぐーっと大きな音が部屋の中に響き渡り、私の言葉を遮った。


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