表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/43

Episode11-2

 「それじゃあ、今日はジャムクッキーを作ります!」

 「「わーい!!」」


 私の宣言にコルネーリア様と、なぜかエルダが歓声をあげる。


 「エルダも食べたいならお手伝いしてね?」

 「うん!エルダもお手伝いするよ!!」

 「わたくしもお手伝いするわ!!」


 エルダは最近遠慮がなくなって来て嬉しいな。一人称が私ではなく、エルダになってる所に気を許してくれてる感じがするよ。


 「まずは、常温に戻したバターを練り混ぜていくよ。少し力がいるから、これはエルダに頼もうかな。」

 「任せて!!」


 猫獣人であるエルダは、その愛くるしい見た目に反してかなりの力持ちだ。


 「そう。上手だよ。そしたら、ここに砂糖を加えて白っぽくなるまでよくすり混ぜる…。」


 そこに卵を加えて更によく混ぜ、アーモンドパウダーを加えてまた混ぜる。アーモンドパウダーは滋養強壮材として薬師団にあった物を少し譲って貰ったのだ。これを入れる事により、焼き上がりに香ばしい香りがして美味しくなるんだよね。


 次に、薄力粉とベーキングパウダーを合わせてふるい混ぜ合わせていく。


 「じゃあ、ここからはコルネーリア様にもお手伝いをお願いして良いですか?」

 「もちろんよ!!」


 先程から、手を出したくて仕方がないと言った表情をしていたコルネーリア様が、喜び勇んでエプロンを侍女に着けてもらっている。その間に私は、クッキングペーパーは流石にないので、天板に油を塗り生地が張り付かないようにしておく。


 「二人ともよく見ててくださいね。スプーンで生地をすくって一つにまとめ、天板の上に載せてください。焼いた時に隣のクッキーと張り付かないように、しっかりと間隔は空けましょう。そうしたら、水で濡らした棒で生地の真ん中を少し窪ませてください。」


 真剣な表情で私のお手本を見つめる二人。見様見真似でやってみているが、悪戦苦闘している。


 「あぁもう、タツキ姉みたいに綺麗な形にならないわ!このスプーンで掬って丸くするのが難しいのよね。」

 「うぅぅ。コルネーリア様、あたしのクッキーも変な形になっちゃいます!」

 「大丈夫。二人とも初めてにしては上手に出来てますよ。」


 そもそも市販のクッキーのように、きちんと円形にならなくても少し歪な形になるくらいが手作りの味が出て私は好きだしね。二人を横目で見ながら、私はジャムを入れる部分をハート型にした物も幾つか作っておく。少しは見た目に変化があった方が面白いよね。


 「それでは、生地をへこませた部分にジャムを入れていきましょう。」

 「タツキ姉、ジャムって何?」

 「この瓶に入った物です。果物の砂糖煮みたいな物ですね。砂糖で煮る事によって、保存が効くんですよ。私の世界では主にパンに塗って食べたりします。あとは紅茶に入れたり、変わったところではこれを調味料代わりにして肉の味付けに使ったりしますね。」

 「あたし、知ってます!甘くて、果物の風味がして、幸せの味がするんです!!」


 耳と尻尾を立てて、えへんとドヤ顔で説明するエルダ。


 「それは楽しみね!」


 どこの世界でも甘い物は女の子に人気だね。ちょうど色んな種類のジャムを作っておいてよかったよ。

 

 「赤いものがストロベリー。紫のものがブルーベリー。橙色はオレンジで、黄色がレモンのジャムになってます。せっかくなので、全種類均等に作って食べ比べをしてみましょう。」

 

 ジャムを入れたら、あとは180℃のオーブンで15分程度焼くだけだ。オーブンを見ていると180℃になった事が分かる。鑑定スキルはとても便利なのだ。火傷に気をつけて、天板をオーブンの中へ入れる。初めての料理が楽しいらしいコルネーリア様と、異世界のお菓子に興味津々なエルダは焼き上がるまでじっとオーブンの前で待機していた。


 「それでは改めまして。コルネーリア様、回復薬の成功おめでとうございます。それではいただきましょう。」


 エルダとコルネーリア様の侍女さんにお茶を入れて貰い、待望のおやつタイムだ。


 「ありがとう、タツキ姉。それにしても、本当に綺麗ね!宝石みたいで食べるのがもったいないわ。」


 お姫様に出すお菓子だから、多少見栄えのする物をと思いジャムクッキーにしたのは正解だったみたいだ。艶のある赤・紫・橙・黄の四色が華やかで見た目も楽しませてくれる。こう言う時の作法は分からないけど、毒味代わりに私が先にマーマレードのジャムクッキーを一つ口に運ぶ。


 …うん。焼き加減もバッチリ。結構美味しく出来てるね。


 どうやら正解だったらしく、コルネーリア様は私が食べるのを見届けた後に、自分もジャムクッキーに手を伸ばした。


 「おっ、美味しいですわ!生地の部分はサクッとしててほんのり甘くて香ばしい。このクッキーと言う生地だけでも絶品なのに、ジャムの果物の風味豊かな強い甘味が加わると…。ジャムの部分はしっとりしてて、食感が変わるのもなんだか面白いですわ!!」


 お姫様らしく、小さくお上品にジャムクッキーを一口齧ったコルネーリア様が目を丸くしている。


 「甘味と風味が豊かなストロベリーとブルーベリー!このオレンジの皮を使ったマーマレードの甘味と苦味も!!レモンのキュンと甘酸っぱい爽やかな味も!!!全部、全部美味しいです!!!!こんなに美味しいお菓子は初めてです。エルダの言う通り、本当に幸せの味だわ!!」


 最初のお上品さは影を潜め、はぐはぐと次から次にジャムクッキーを頬張るコルネーリア様がリスみたいで可愛らしい。思わず笑みが溢れてしまう。その様子を、王女様とお茶の同席は出来ないからと後ろで控えているエルダが物凄い顔で見ている。


 …ちょっとエルダ!ヨダレ!ヨダレが垂れてるよ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ