第90章
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再びターシャの夢の中の世界ーーー
ターシャとストレンジャーは洞窟の更に奥へと入っていったヒッポ君を追う。
ターシャ「ミッチまでもこちらの世界に来ているなんて、一体どうなっているの?」
ストレンジャー「理由は分からないが恐らく僕らよりも先に来ているのは確かなんだろう。僕もまだ噂にしか聞いていないが、少年兵達の話では僕らが滞在しているこの1年間より更に1年前に来ていたそうだ。」
ターシャ「変ね、ターシャか入院し気を失ったのは昨日の話。ストレンジャーやヒッポ君と別れたのは一昨日だったのに、何故あれからそんなに時間が経過してしまったのかしら?」
ストレンジャー「僕らも不思議だったが、「呪い魔法のダイアリー」の中の世界の一日がこちらの世界では一年に相当するのだろう、と解釈している。」
ターシャ「アナタ正気?もしそれが本当だとすると、私達は急速に歳を取るってことよね?こちらに長く滞在していたら生きて元の世界に戻れるかも怪しいわよ……」
ストレンジャー「俺も始めはそうだと思ったが、体感的にはココの1日は十分1年に相当するんだ。」
ターシャ「だけど……分からない、だってそうなれば私は直ぐにおばあさんになってしまう。あなただってイケメンでいられる時間はあと僅かということになるのよ!」
ストレンジャー「そんなこと僕に言われても、僕だってもとに戻りたいんだけど、ダメなんだ……」
ターシャ「え、どうしてダメなの?」
ストレンジャー「ミッチの許可がいるって話さ。少年兵達が言うにはミッチはこの世界を制覇している存在で、とても僕らのような下々の者が交渉事など以ての外だと。但し彼女と同格のジユズッピならば平民の意見を構わず聞いてくれるらしい。ミッチ同様まだ出会えて居ないけどね。」
何故ミッチやジュズッピがこの世界を牛耳っているの?ターシャはストレンジャーの言葉を理解できないまま黙って俯く。
ストレンジャー「さぁ、先へ進もう。腹ペコでは何も解決策が浮かばないからね!それよりヒッポ君の料理すごいんだぜ!どうしてかこちらの世界に来て霊か何かに憑依されてからというもの、シェフ並みの腕前で皆を驚かせてるんだ。毎日のディナーが楽しみで楽しみで……それだけはこちらのほうが恵まれているな!」
ストレンジャーのその言葉に半ば呆れ顔のターシャではあったが、でもイケメン☆ヒッポ君の作る絶品料理にはちょっとだけ興味が湧くのでしたーーー
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ストレンジャー「おいヒッポ君もこっちに座って一緒に食べようぜ!」
忙しく仲間たちの料理を作り続けていたヒッポ君はストレンジャーに呼ばれターシャと3人でテーブルを囲む。
ターシャ「本当に全部貴方が作ってるの?凄いじゃない、こんな美味しいの滅多に戴けませんわ!」
ヒッポ君「そんなに褒めて頂けるなんて光栄です。しかし貴方のお名前をお聞きしていなかった。」
ターシャ「あら、私のことをお忘れナノね。あんなにあちらの世界で貴方のことが好きだったのに……」
ストレンジャー「こら、彼は記憶を無くしたんだからからかうなよな、ヒヒッ!」
二人にからかわれて困り顔のヒッポ君。
ヒッポ君「そういえばミッチ様が今度こちらへ凱旋されるって噂、知ってるかい?どうやら僕の料理の評判を従事が聞きつけたみたいで、一度お邪魔して堪能したいと申されたんだよ。ほら、この手紙に書いてある。」
二人は意外なことを口走るヒッポ君からミッチが宛てた手紙を読み上げるーーーー
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拝啓
歩兵連隊シェフ ヒッポ殿
貴殿のお噂は事あるごとにご拝聴させて頂いています。
来週そちらに諸用が御座いましてお立ち寄りしたいのでランチメニューの準備をお願い致します。
リクエスト等詳細につきましては事前に従事とお打ち合わせ下さい。
それでは楽しみにしております。
我が敬愛のイケメン☆ヒッポ君へ
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ストレンジャーとターシャは手紙の内容に動揺する。
ヒッポ君「なんか、一番最後の文章にある「敬愛」とか「イケメン」ってよくわからないんだけど、何を意味しているのかなぁ……」
ストレンジャー「即ち、ミッチは過去の君のことに好意を持っており、今でも君のことを覚えてるってことさ。覚えていないのはヒッポ君だけなんだよ!」
ターシャ「ダメよヒッポ君にそんな言い方しては!彼だって忘れたくて今の記憶喪失になったわけじゃないんだからね。ごめんねヒッポ君、驚かせちゃって……」
ヒッポ君「うん、大丈夫。僕も以前の僕のこと興味あるから何でも教えてよ!」
めげない性格だけは消えてなかったヒッポ君に二人はそっと胸を撫で下ろす。
ストレンジャー「それにしてもミッチの立場で僕らの事を分かっているのならさ、何故こちらの世界からの脱出を考えていないのかが疑問が残るんだよな。」
ターシャ「まさか、私達はミッチに呼び寄せられた、って事は考えられない?」
ストレンジャー「な、何だって……」
ターシャ「それにジュズッピもこちらの世界で
覇権を振るっているんだから、彼の可能性とも考えられるわね。一体私達に何を望んでいるのだろう……」
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三人はヒッポ君の手による絶品ディナーを堪能した後、彼の誘いで洞窟から高台に出るルートへと案内される。
ヒッポ君「ほら、ここだよ!」
ターシャ「わぁー、なんて綺麗なの〜!」
ストレンジャー「すげぇ星空だな、ほら、天の川まで見渡せてなんだか吸い込まれそうだよ!」
ヒッポ君「オイラ一人になりたい時はいつもここに来て空を眺めてるのさ。せいせいするだろ?」
ターシャ「ホントね、ありがとうヒッポ君。今日は一段とイケメンに磨きがかかって見えるわ!」
ヒッポ君「だからなんだよその「イケメン」って?」
意味がわからず困り顔のヒッポ君に二人は微笑むも、明日からのミッチの策略にどう向き合おうかと複雑な思いは、こちらの世界の星空でさえも癒せないでいたーーー
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女帝ミッチ「ジュズッピお父様、私はあなたが父であることをとっくに知っていましたよ。これまでも皆には内緒で胸に秘めておりましたが、それは貴方に復讐するためなのです!」
君主ジュズッピ「そうじゃないんだよミッチ、私達は大変だったんだ、お母さんが出ていってからというもの、一人でさえも食うや食わずの生活でとても可愛らしい娘の事が心配で心配で、そこで断腸の思いで王家にお前を預ける決心をしたんだよ、わかってくれ……」
ミッチ「そんなこと今更何よ。言い訳に過ぎないじゃない、でしたら私が何度か観たあのリッチな貴婦人との暮らしはどう説明する気よ。」
ジュズッピ「それは……ね、いずれ戻って来る娘には素敵な母親が必要で……ちと違うかな、そう、王家の生活とランクをあまり変えずに君がすんなり戻ってこれる環境を整備したのであって……」
ミッチ「なら、いつになったら迎えに来るのよ!戻って来いなんて一言も聞いた覚えなんてないわ、覚悟おしッ!」
その夜二人の軍勢の戦いは、二人の個人的な感情につきあわされている事すら知らない民兵によって最高潮となりつつあったのだったーーー
///to be continued!!!☆☆☆〜〜〜




