第73章
ナディア「ケセラ、扉の鍵を開けなさい。なぜでてこないのです!」
ジェノベとマウリシオが見守る中、ナディアは娘ケセラの部屋の扉を叩く。しかしいつまでたってもケセラはでてくる様子がない。そこへナディアの執事シュミットが現れる。
シュミット「ナディア様、無駄で御座いますから、これ以上扉を叩くのはおよし下さい。お話がありますからこちらへどうぞ。」
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シュミットは一同を表へと案内し、よくケセラが散歩に使う小道を進みながら重い口を開く。
シュミット「先日ケセラ様が体調を崩された際に医師からお話を聞いてはいましたが、あまりに妙なことを話されたのでナディア様にはお伝えを控えておりましたが〜〜〜
診察の結果ケセラ様は突発性の自閉症ではないかと。担当した医師の話によると体調不良の原因は身体的なものではなく、遺伝的要素にあるうつ症状から引き起こされているのだろうとの事でした。
そのが根拠になる現象は、催眠治療を施した際にダイアリーの中の世界の内容の事を話しており、そこに記載された自分の名前の人物の未来像がさぞおぞましかったと話していたようです。そしてケセラは心を閉ざした、との事でした。ですから今、彼女は引きこもる事でダイアリーの中の世界と葛藤しているはずでありますので、どうかそっと見守ってあげてくださいませーーー」
ナディア「そうだったの、そんなに酷いことがあのダイアリーに描かれていたのね……わかりました、シュミットありがとう。しかし私はケセラが持っていったであろうあのダイアリーを取り返さなければなりません。なぜならば我がパリピメロン家の血筋にとって不幸な出来事ばかり引き起こして来たきっかけはいつもあのダイアリーでしたので、私が責任を持って処分いたします!」
シュミット「ナディア様、お待ちを。それは間違っておられます。もつとも私が直接内容を見たわけではありませんが、貴方のお母様である皇后様にダイアリーは代々大切にされて来たと申されていましたので。そして、かつてダイアリーを焼き払おうとした者が不幸な運命を辿ってしまったとも仰られておりました。それ以来、女系の親族のみ引き継ぎ必ず鍵のある状態で厳重に管理することになったのでした。ですから処分だけはおよし下さい。」
ナディア「そうでしたのね、ならば処分はしません。その代わり今後は私が厳重に管理することにします……ですからケセラの手からあの「呪い魔法のダイアリー」を引き渡してもらうしかありません!」
ナディアがそう言うと一同の顔が引きつった。呪い魔法?一体それは……そしてナディアはダイアリーの何を知っているのだろう、と。
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3日後シュミットがナディアの部屋に現れました。例のダイアリーを手にして。
シュミット「ナディア様、ようやくケセラ様に納得していただけました。こちらになります。」
ナディア「そうでしたか、済まなかったわねシュミット。で、このダイアリーの鍵は?」
シュミット「鍵と申しますと?」
ナディア「ほら、このダイアリーには鍵が掛けられる仕組みになっているのですよ、ほら、だから開かない状態に……」
シュミット「そうでしたか、ケセラ様はその件につきまして何も仰っておりませんでしたので私も権利が御座いませんから確認しておりませんでした。早速ケセラ様に掛け合ってみます。」
そう言い残すとシュミットは戸外へと駆け出してゆく。ナディアはケセラにある疑念を抱く〜〜〜ケセラが鍵を掛けたままのダイアリーを私に渡すと言うことは、おぞましい内容を私に見られたくなかったからだと。恐らくケセラの事ではなく、それは私に将来巻き起こるおぞましい内容に違いないのだろうと……
暫くしてシュミットが現れる。そして何故かケセラの姿も……
ケセラ「お母様、ご心配おかけしてすみません。もうすっかり気分が良くなりましたわ!あ、そうそう、ダイアリーの鍵でしたわね。」
ダイアリーの鍵を何の躊躇もなくにこやかに手渡されたナディアがしばしば動揺する。
ケセラ「ではお母様、今日は日和もよろしいのでお外でお散歩して来ますね。さ、シュミット一緒に行きましょう〜〜〜」
ケセラの後を追うシュミットは振り向きざまにナディアに苦笑いする。
ナディア「まぁどう言う事なので?するとケセラはダイアリーの事で悩んでいたわけではなかったのかしら?それとも私に心配させないために気を使ったのかしら……」
気になったナディアはダイアリーの鍵を回してみる。しかし一向に開く様子がない。不思議に思ったナディアが鍵を眺めると、そこには「No.0667」と刻印が記されています。そしてダイアリーの表には「No.0444」と表記されていました。
ナディア「ど、どうして違うナンバーが……一体ダイアリーは何冊あるというの?」
すると突然慌ただしくナディアの部屋の扉が開くや、先程二人で散歩に出ていった筈のシュミットが飛び込んできた。何を急いでいるのか息を切らせながら何かを言おうとしている。そしてケセラの姿はなかった。
ナディア「シュミット、何かあったの?それよりこのダイアリー、私の知らない物ですわ。鍵も見知らぬナンバーで……」
ようやく息を整えたシュミットが言う。
シュミット「ナディア様、大変です!ケセラ様が散歩の途中で消えてしまいまして……その場に残されていた彼女が持参していたバックの中には、なんともう一冊のダイアリーが御座いまして、こちらになります。」
受取ったダイアリーの表を見ると「No.0666」の表記。
ナディア「コレよ、私が知っているダイアリーは!でもどうして……あっ、鍵がかかっていないわ。」
シュミット「ワタクシもカバンの中や辺りを探したのですが、御座いませんでした……」
ナディアは受取ったダイアリーのページを恐る恐るめくってゆく〜〜〜するとケセラの一文が記載されているのに気づく。読み進めるうちにナディアの顔が次第に青ざめてゆく。
シュミット「ナディア様、如何なさいました?」
ナディア「これは……一体どうなっているの?まるでケセラがこのダイアリーの中の世界に入り込んでしまったかのような内容に書き換わっているのよ、どうして……シュミット、一体アナタは何をしたの!」
シュミット「と、申しますと?わたしはケセラ様とただお散歩をしていただけでして、そしたら急にケセラがカバンを残して忽然と……アッ、」
シュミットがそう話す途中で、突如ナディアの視界に煙幕のような煙に巻かれたかと思った次の瞬間、なんとシュミットは忽然と消えてしまったのでしたーーーー
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ジェノベは二人が失踪した後に気を失ったナディアを介抱していた。
ジェノベ「あ、ナディア様、気付かれましたね、良かった……一体何が起こったのでしょうか?こんな夜になってもケセラやシュミットも見当たらないのです。今マウリシオが辺りを探しておりますが。」
ナディア「そう、そうね、何から話したら良いのか……二人は今多分ダイアリーの中の世界に入り込んでしまったようなんです。」
ジェノベ「な、ナディア様御冗談を。とりあえずお気をしっかりとお持ちになってくださいませ。今宵はお疲れのようですからゆっくりお休みください。お食事はこちらにご用意できておりますのでーーー」
そう言うとジェノベは戸外へと出て行くのだったーーーー
///to be continued!!!☆☆☆〜〜〜




