第71章
〜〜〜その頃ナディア邸の地下世界で彷徨う一行は尚も生き物のように変化し続けているVR空間では、マウリシオの魔力に脅威を隠せないジェノベが救いを求めて祈りを唱えていましたーーー
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ジェノベ「おお、神々よ。貴方が本当にいらっしゃるのでしたら是非とも私の願いを叶えては下さいませんかーーー
私が今まで行ってきた数々のワガママを全て懺悔しますのでどうかこのマウリシオの創造している奇妙なVR空間から脱出させて下さいませ〜〜〜
そのためには我が人生の今後をすべてかけてでも償いますので。」
すると空から一筋の光が差し込むや、焦点をジェノべを目掛けて照らし始めたではないか。
そばでうたた寝していたヒッポ君もその神秘的な光景に目が覚める思いで見つめる。
ヒッポ君「ジェノべさん、一体何をなさったのですか?コレは……」
ジェノべ「おお、やはり神々はおいでなかったようだ!ありがたや〜〜〜」
上空から差し込む御光はみるみる光り輝き、やがて二人を包んでいった〜〜〜と、その状況マウリシオが気付かされるまでにそう時間はかからなかった。察しのよいマウリシオのこと、ジェノべが逃げ出すための手段を講じたのだと。
マウリシオ「ジェノべ、そうはいかないよ!オマエと俺の長い付き合いだろ?まだまだ旅は長いのだからお前たちだけズルして逃げようだなんて考えないほうが良いと思うよ。そんなことしちゃうと僕ちゃんなにするか分かんないから〜〜〜!」
不敵な笑みを口元に携えながらウィンクするマウリシオは、とっさにヒッポ君を捕まえると何処かへと引っ張ってゆく〜〜〜
ヒッポ君「な、なにするんだヨ、マウリシオ!やっぱりお前はこのVR地下世界に僕らを閉じ込め続けることを考えていたんだな!」
マウリシオ「黙れ、お前は何が不満なんだ?コチラの世界のほうが美味しいものも食べられて気候も一年通して温暖だし、ビーチもあるし、何不自由なく暮らせるというのに。なぜあの「呪い魔法のダイアリー」の中の世界へと戻ろうとするのさ?」
ヒッポ君「だって楽しいんだぜ、ココも悪くはないけど、なんていうのかなあ、君の顔がえているアトラクションと僕らが欲している世界観が異なるって事かな、端的に言うと。」
マウリシオ「なるほど、君はそんな事を考えていたんだな。だけど良く考えてみろよ、あの「呪い魔法のダイアリー」の世界観はまるでデスダイアリー的なものなんだよ。
要するにダイアリーの中に記載されている内容がその人の未来に起こる出来事なんだからね。君たちは未来に起こる不幸な出来事を変えるためにアチラの世界に飛び込んだのだろうけど、実際にそんな事可能なのかな?もし君たちがアチラの世界に飛び込んで行ったために予想打にしないような悪い出来事が起こってしまったら、未来は変えないほうがよかった、ということにならないのかな?」
すると御光が差していたジェノべが光の塊とともに上空へと昇って行くのでしたーーー
ヒッポ君「あ、ジェノべ……俺を置いてかないで〜〜〜っ。もうッ、オマエのせいだからな!」
マウリシオ「ハイハイわるかったですね~!だからさっきの話に戻るけど、こっちにいたほうが変な災いに見舞われることがないからさ、良いと思うよ。」
ヒッポ君「でも、この生き物のように変化し続けているコチラの世界はマウリシオの創造した世界観なんだろ?いくらVRだからってこんな奇妙さにはついて行けないよ。」
マウリシオ「え、オマエもしかしてこの奇妙な世界を俺が作ったと思ってたの?ハハハ、御冗談を。だってこの地下世界に一番滞在期間が長いのはあのジェノべなんだぜ。だからアイツの好きなように操ってるじゃないか、ほら、さっきの上空へ消えていったのもみんな彼の思い描いたものなんだよ。」
ヒッポ君「そ、そんな〜、確かにマウリシオがこの世界観を描いたと語っていたのを僕が鵜呑していたのかもしれないけど、じや、アチラの世界に中々辿り着けないのも彼が操っていたからなのかな?」
マウリシオ「そうに決まってるだろ。俺がそんな事するようなやつに見えるか?」
ヒッポ君「見えなくもない。けど、今度はジェノべがこの世界から何故脱出していったんだ?しかも神々に祈ったら連れて行ってくれるみたいだし、それも彼がVRを操っているから出来たの?」
マウリシオ「まあその辺は僕だってヒッポ君がこの世界に来るちょっと前に戻って来たのだから良くわからないけど、多分ジェノべが出ていった理由は、アレだな。」
ヒッポ君「アレって、何のこと?」
マウリシオ「飽きたから。」
ヒッポ君「そんな簡単な理由ってある?だって彼は何十年もナディアに仕えて来たのだから、あの歳になってからそんな変化を求めるのだろうか?」
マウリシオ「求めるさ。ほらこの世界は常に奇妙な生き物のように変化し続けているじゃないか!それが彼の世界観なんだろうな。」
ヒッポ君「ということはだ、今度は「呪い魔法のダイアリー」の中の世界へ辿り着けた暁には、彼の未知の魔法スキルによって如何様にも変えてしまう可能性はあるということ?」
マウリシオ「そう、ある意味正解!でも彼は別にダイアリーの中の世界に興味など持っていない可能性もあるから、もしかしたらVRから脱却し現実世界へと逃避する可能性も無いとは言えないだろう。
私が知っている幼い頃見てきた彼の性格は、そういう風変わりな奴だったからね。」
///to be continued!!!☆☆☆〜〜〜




