第68章
ターシャは母メチル王女とそのお付一行がいつまで経っても到着しないことに心配でならなかった。
そこで今や透視魔法のスペシャリストであるザマンサおばさんに母へのアクセスを依頼することにしたのでしたーーーー
ターシャ「ねぇザマンサ、一行は無事に此処「呪い魔法のダイアリーNo666」のルートを見つけることができたのかしら?」
ザマンサ「それがね、メチル王女の情報によると、お付の一人、元イケメン執事候補生だったVRマウリシオという男が厄介者らしいのよ……」
ターシャ「だけどお母さんが一行の人選したんじゃなかったの?」
ザマンサ「メチル王女の脳波からは、執事ジェノべの旧友であるマウリシオがひょっこり現れてこの「呪い魔法のダイアリー」へのツアーに流れ的に参加することになったそうなの……」
ターシャ「それで……何が厄介者なのかしら?」
ザマンサ「メチルの脳波からの情報を要約すると〜〜〜〜マウリシオは、なんとパリピメロン家の血筋を引き継いで居る事が発覚したそうなの。このため魔法の能力を携えているのは愚か、魔力の中でも強力なことで有名な「鬼っ子血統」の祖先も彼の血筋に居たらしいのよ。」
ターシャ「へぇ、そうなの。でも何故そんなに厄介なのかしらね?まさか母たちへの危害ないでしょうね?」
ザマンサ「いえね、その辺りはジェノべの旧友だから大丈夫だと思うけれど、マウリシオがそのうち地下世界を牛耳るまでになるかもしれないから、その時は執事ジェノべはマウリシオに従うことになりそうね。」
ターシャ「なんですって、彼がそんな事を考えているなんて……どうしよう」
ザマンサ「今のところは大丈夫そうね。
しかし一行に「注入魔法」をかけてみたり、地下世界が生き物のようにうごめいているからルートを見つけることが出来ないと虚をついたり、「呪い魔法のダイヤリー」の入口までのマップを隠すなどの奇行をみると、まんざら乗っ取るつもりでやっている可能性もあるわね。」
ターシャ「え、嘘ついてたの?だって皆も地下世界がうごめいていると錯覚してマップを探すのをあきらめたんですよね?」
ザマンサ「そこが「注入魔法」の恐ろしさなんです!この魔法にかかった者は思考力を失い幻覚症状を見たりする訳なのです。
そのせいで地下世界がうごめいていると思い込んでいるのでしよう。その証拠に同じパリピメロン家のメチル王女は免疫を持っているから、世界がうごめいて見える幻覚症状は見えなかったし、至って冷静にマウリシオを警戒していたようね。
だけどね「注入魔法」の解毒の為に効果のある薬草を試みたそうなの。その際魔法がかかってもいないのに薬草があまりに美味しそうたのでつい飲んじゃったみたいなの。
その後副作用が酷かったようだから、今の彼女の判断がすべて正しいかはわかりませんね〜〜〜」
ーーー***ーー
ザマンサの透視魔法の内容に、ターシャは母メチル王女の置かれている状況に危機感を覚えると親友ケセラに相談を持ちかけるのでしたーーー
ケセラ「まぁ大変!それじゃあヒッポ君もマウリシオに騙されて地下世界を彷徨うように仕向けられているのね。これではいつまで経っても到着する筈がないじゃない。ワタシ今から助けに行かなきゃ。」
ターシャ「ちょっと落ち着いてケセラ。ヒッポ君が気になるのは分かるけど、ただ感情的になってもしょうがないでしょ。先ずはプランニングが大事よ。地下世界からこちらに辿りつくことも難解なのに、こちらから向こうの世界に行くのがいかに大変かはアナタもわかるでしょ?」
ケセラ「それもそうね。ワタシも若い頃は体力があったからよく行き来できたけど、いつからか人魚魔法が使えなくなったからそれも無理ね。誰かに御願いするとしたら……
あっそうだ、居るじやない!彼よ、あの祈祷師ジュズッピ。彼なら容易く時空を超えて行き来することが出来るよね。最初にこちらのダイアリーの世界に私たちを案内したのも彼だったし……」
ターシャ「え、アイツいんちき祈祷師だったんじゃなかったの?そのせいで皆に仲間外れにされて一人何処かへ旅立っちゃったじゃないの!」
ケセラ「ああ、あの時の話は〜〜〜ワタシの作り話でして〜、皆を騙したのは、実はワタシの方であって〜〜〜」
ターシャ「ちょ、ちょっとお前、どゆこと〜?何よ、アタシが悪役令嬢で、かつての侍女だったあなたに色々と無理なことをお願いしてたからってその腹いせにそんな事をしたのかしら?せっかく仲良しの親友だと思っていたのに〜中々お主やるのぅ!」
ケセラ「ち、違うんですぅ〜ターシャ様。というのも、ジュズッピがあの島のバルのマスターをやっていた時に、皆の料理に眠り薬を入れてザマンサの巨大帆船を盗もうとしたのが許せなくって……」
ターシャ「そうなの、アナタそんなにまでザマンサの事を思って……疑ったりしてごめんなさいね、ケセラ。」
ケセラ「いえいえ、あの時ターシャ様や皆さんが長い船旅でヘトヘトに疲れていたのに、眠ることを妨害したのが許せなくって……
そんなずる賢いところのあるお茶目な祈祷師ジュズッピではありますが、きっと今なら私たち、分かりあえるような気がしますぅ!」
ターシャ「へ、今度は何なの?メロドラマじゃあるまいしぃ〜〜〜
でもねケセラ。アナタがいんちき祈祷師呼ばわりしたせいで、傷ついた彼は私たちと絶交して気づいたら何処かへ旅立って行ってしまったじゃないのよ。何処から探せばいいのよ!」
ケセラ「そうですよね、ターシャ様。ワタシの落ち度のせいで申し訳ございません。今思えば、この素敵なダイヤリーの中の世界に我々を案内してくれたんですもの、本音はきっと良いお方なのですね。しかし探すとなると、コチラの世界なのかあちらの世界にいらっしゃるのか、皆目見当もつきませんわね!」
するとケセラの居室の扉から何者かが忍び込んできた。慌てる二人の目の前に突如として現れたのは、なんと今噂していたばかりの張本人、ジュズッピだったではありませんかっ!
祈祷師ジュズッピ「よう、呼んだかい?」
ターシャ「あ、アナタって人は……ホントに鼻がイイのね。」
ジュズッピ「いやね、久々に皆の顔が見たくなっちゃって、ちょっと寄り道しただけだよ。直ぐに御暇しますから悪しからず。」
ケセラ「いいえ、良いのよジュズッピ。いつぞやはアナタのこと詐欺師呼ばわりしてごめんなさいね。」
ジュズッピはケセラの言葉に照れくさそうに苦笑いする。ターシャはまだ彼に対しての警戒心が吹っ切れて居ない様子。
ターシャ「あのう、私的には〜、少しばかり登場するタイミングが良過ぎはしないかと勘ぐるのでありましてぇ〜、もしかしてアナタまたまた良からぬお考えで私たちを困らせようとなさりに来られたのではないでしょうね?」
ジュズッピ「いえいえ、滅相もありません。貴方がたを騙したりする目的では決して御座いません。
しかしですねぇ……私は各地の異世界を渡り歩いて旅を続けて来たのですが……実のところ少しばかり懐が寂しくなりまして……今夜泊めていただけないでしょうか?」
ケセラ「ターシャ様。彼の哀れな様子から察しますと〜〜〜大分疲労困憊な様子でして、もしかしたら何も食べて居ないのではないでしょうか?なので彼の言葉に偽りはなきかなと思えます……」
ターシャ「そうねぇ〜〜〜じゃあ泊めてあげるのも考えてあげても良いんだけどぅ〜〜〜こんなのはどう?泊めてあげる交換条件として、私たちと一緒にナディア邸の地下世界への旅の案内役になってもらうというのは?中々悪くないと思うな、キャピッ!」
///to be continued!!!☆☆☆〜〜〜




