第60章
メチル女王とヒッポ君がリストランテの食事中に何故か消え去ってしまった事でその場に取り残された貴公子ジェノベ。
彼は古びたリストランテの屋内を進みながら、自分が奇妙な媚薬魔法の罠に閉じ込められていることに気付きましたーーーー
リストランテは彼を迷宮のような地下へと引きずり込み始めると、通路が次第に狭くなり、尚一層不気味な雰囲気が漂い始めました。
ジェノべは自分を取り巻く状況に恐れを感じながらも、冷静さを失わず、出口を見つけるために探索を続けました。
ーー***ーー
すると通路の先にいくつもの扉が現れました。それはまさに分岐点のようにジェノベには思えました。
そして何処からともなく先程のリストランテオーナーの妖精の声が聞こえてきました。
まるでVRミッションの時と同じように。
「あなたは遂にリストランテに捕食されてしまったようですね!此処は人で言う喉の中なのかもしれません。
あなたにはいくつもの扉が見えますね。
どの扉を選ぶのかはあなた次第なのです。そしてあなたが決めた扉の中へ入った途端、扉は消滅し元には戻れなくなってしまいます。
どの扉があなたにとって正解なのかは私にもわかりません。
あなたの選択次第では、このまま動かないこともできますが。
しかし、それではあなたの道は開かれないどころか、そのうち黙って捕食されることになるでしょう。
さぁ、あなたの未来への道は、あなたが掴み取るのです!」
オーナーの声はそう言うと聞こえなくなるーーーー
ジェノベはオーナーの言葉を聞きながら、心を落ち着かせて五つの扉の前に立ちました。
彼は慎重に考え、一つの扉を選ぶことに決めました。
扉を開けると、そこには巨大なイボガエルモンスター夫婦が待ち構えていました。
驚いたジェノベは、しかしすぐに落ち着きを取り戻しました。
「あなたたちは…?」
ジェノベが言いかけると、夫婦は豪快に笑いながらジェノベに近づいてきました。
「ようこそ、冒険者よ!我々はリストランテの守護者、イボガエルモンスター夫婦だ!ここではプロレスバトルが開催されるぞ!」
ジェノベは少し驚きながらも、夫婦の元気な様子に安心しました。
「さて、冒険者よ!我々とのプロレスバトルに挑戦する覚悟はあるゲロかい?勝者には素晴らしい賞品が待っているゲロ!」
夫婦は興奮気味に言いました。
ジェノベは微笑みながら、プロレスバトルに挑む覚悟を決めました。
彼は力強く立ち向かう事を誓うと、いよいよ夫婦との激しい戦いが始まりましたーーーー
ーー**ーー*
又もや何処からともなくリストランテオーナーの興奮気味なマイクの声がダンジョン中に響き渡ります。
オーナーのプロレスバトルの実況中継が始まります。
「さあ、皆さん!この壮絶なプロレスバトルを生中継します!
オット!ジェノベがイボガエルモンスター夫婦と激闘を繰り広げていますッ!」
彼の声が響き渡る中、ジェノベは巧みな技でイボガエルモンスター夫婦と対峙しました。
ジェノベは一瞬の隙も見せず、エビ固めからダイビングエルボードロップ、そしてラリアットへと連続技を決めてゆきます。
「ややッ、見事な連続技の連続!
ジェノベが圧倒的なパフォーマンスを見せつけてきまっす!」
しかしイボガエルモンスター夫婦も容易には屈しない様子で、迫力のあるパワームーブでジェノベを追い詰めます。
「イボガエルモンスター夫婦もやる気満々!見事なスープレックスでジェノベを追い詰めていまッす!」
リストランテオーナーの実況はプロレスバトルの熱気とともに盛り上がり、ダンジョンの熱気も最高潮に達しました。
果たしてこのプロレスバトルの勝者は誰なのか?
するとジェノベは戦いの最中だというのにも関わらず、突然足元に生えてきたほうれん草を見て驚きました。
彼はすぐにその意味を悟りました。
「ほうれん草か?これは……栄養補給のチャンスなのだ!」
ジェノベは一瞬ためらいつつも、ほうれん草を食べ始めました。
一口、また一口と食べるうちに彼の体力が回復していくのを感じました。
「お腹いっぱいに食べて栄養を取ることができれば、このプロレスバトルも楽勝だ!」
ジェノベは栄養を取りながら、イボガエルモンスター夫婦との戦いを続けました。
力強いほうれん草のパワーを受けて、彼の技はさらに磨きがかかり、ついには夫婦を撃破しました。
「ジェノベが見事に勝利を収めました!ほうれん草の力が彼を支えました!」
リストランテオーナーの実況は大歓声に包まれ、ジェノベの勝利が称えられました。
そしてプロレスバトルの勝者として彼には特別な賞が授与されることになりました。
ーー***ーー
ジェノベが勝利を収めると、イボガエルモンスター夫婦は喜び勇んで彼に例の特別な賞として、クラーケンのイカスミスパゲッティをご馳走しました。
ジェノベは何が特別なのかはわかりませんでしたが、その美味しそうな料理を見て思わず興奮してしまい、次から次へと瀑食いトライアルをしてしまいましたッ!
「ああ、これぞ至福の味だ!」
しかし食べ過ぎてしまったジェノベはお腹いっぱいになりすぎて動けなくなってしまいました。
「おおっ、ジェノベ冒険者よ!君の勝利を祝して、我々の自家製クラーケンのイカスミスパゲッティをご用意したが、君の食べ過ぎは予想外だったゲロッ!」
イボガエルモンスター夫婦は笑いながら、ジェノベの姿を見ていました。
すると、彼らはさらなる挑戦をジェノベに提案しました。
「しかし、冒険者よ、これで終わりではないゲロ。我々が君に次なる試練を与えゲロようッ!」
夫婦の提案に興味津々のジェノベは、彼らのクイズ形式のクエストに挑むことに決めました。
果たして、そのクエストとは一体何なのだろうか?ーーーー
***ーーーー
突然、イボガエルの奥さんから第一のクエストが出されます。
「あなたは今「呪い魔法のダイアリー」の中の世界へと旅をしている途中にこのような試練を与えられていますケロが、さてケロ、このような試練とは、一体誰が仕組んだのでしょうケロかッ?」
何ともヘンテコなクエストにジェノべは思わず吹き出すと、イボガエルの旦那が怒り出すのであった。
「ウ〜ン、チミねぇ、ちょっと違うんだよねぇ!
人が真剣に質問しているのにそれは無いだゲロゲロッ!」
すると君の事をチミと言われたジェノべがさらに吹き出すや、今度はイボガエルの奥さんが興奮して言う。
「もう、いいケロわよ!アンタなんか今後どうなっても知らないんだケルケロゥ!」
あまりにも強烈な怒りっぷりに、ジェノべは思わず適当な名前を上げてしまいます……
「わ、わかったよぅ、答えればいいんだろぅ?じゃ、マウリシオ、とか言っちゃったりして……」
すると夫婦が意外な答えをジェノべが呟いたことに対して、イボガエルなのに鳩が豆鉄砲を食らったようにポカンと口を開けるや、暫くそうしているではないかッ!
それはジェノベの軽率な答えに、イボガエル夫婦は驚きと共に口を開けてしまったのでした。
その様子にジェノベは戸惑いながらも、彼らの反応を見て少し安堵しました。
「え、えっと…マウリシオっていうのはただの名前であって、そのぅ…」
しかしイボガエル夫婦の口からは一向に収まる様子もなく、止めどなくヨダレが溢れ出してゆきます。
ジェノベは驚きのあまり後ずさりしながらも、次の言葉をつぶやきました。
「ご、ごめんよぅ……でもね、本当に答えがわからないんだよぅ……」
イボガエルの奥さんは垂れ流しながらも半狂乱で激怒し、ジェノベに向かって叫びました。
「もう、いいわよ!アンタなんか今後どうなっても知らないんだケルケロッ!」
ジェノベは見てはいけないものを見た様子で、慌てて謝罪しようとするものの、その時、イボガエル夫婦の顔に驚くべき変化が起こりましたッ!
そして彼らの表情が一変し、洪水のようにヨダレが溢れ出したではありませんか!
「な、なんなんだよぅ〜〜〜これは…?」
ジェノベが叫び声を上げると、イボガエル夫婦は何かを思い出したように笑い始めるのですーーーー
ーーー****ー
「実はねぇ〜〜〜、アンタの答えは……正解!」
夫婦のヨダレがたれ流れ続ける中で、次第に床一面がヨダレで溢れる。
そしてこのダンジョン中が満たされて、ジェノべは溺れそうになります。
遂にはヨダレの胃酸の影響なのか、徐々に壁が決壊し始めます。
やがてジェノベはヨダレに溺れそうになりながらも、イボガエル夫婦からの意外な回答に驚きました。
「え、まさか……本当に正解なの!?」
マウリシオが自分に試練を与えてってるとは、一体どゆこと?謎は深まるばかりのジェノべ。
相変わらず夫婦の笑顔とヨダレの流れる中、ジェノベはジワジワと壁が溶けて決壊する音に怯えました。
胃酸で溶けた壁が崩れる中、ジェノベとイボガエル夫婦は更に散り散りに何処かへと流されていきました。
皆は流される中、ジェノベは次なるダンジョンへと辿り着きました。
すると再びリストランテのオーナーの妖精の声が聞こえてきますーーーー
「よ〜くやったぞよ、ジェノベよ!試練を乗り越えた君には、次なる挑戦が待っているぞい!」
ジェノベは事の成り行きに混乱しながらも、次なる試練へと臨む覚悟を決めるのでした。
果たして次なるダンジョンで彼を待ち受ける試練とは一体何なのでしょうかッーーーー
///to be continued!!!☆☆☆




