第15章
メチル女王がターシャと部屋で呪いのダイアリーの内容に不思議にも変化が見られたことで、驚きを隠せないままに読み進めてゆくーーーー
そこへターシャの兄のアーサーと姉のベルリーナが入ってきた。
久々の家族水入らずの時間が始まった。メチル女王はにこやかに迎え入れた。
「それにしてもターシャまでここに来るなんて、さぞかしお父様も驚かれたことでしょう。本当にこれで良かったの、ターシャ?」
ターシャは母メチルの問いかけに答える。
「いいえ、お母様。私はどうしても家族仲良く一緒に暮らしたいだけなのです。だからお迎えに上がりました。」
困った様子のメチルに変わって兄のアーサーが呟いた。
「なあターシャ、今回の家出はそもそもお父様が原因なんだよ。
お母様はこれ迄幾度となく我慢なされていたのですが、お父様の女癖が治らないことにとうとう我慢できなかったのさ。
最近は収まっていたのだが、どうやら侍女たちにも手を出していたようだからね。ああ、こんな話君にはまだ早かったかな…」
アーサーの言葉に付け加えるように姉のベルリーナが切り出した。
「あの人、私達の母親を取り替えただけでも重罪なのに、ちっとも子供の気持ちなんか考えもしないのよね!だからターシャ、私達はあの国には二度と戻るつもりはありませんわ!」
にこやかだったメチルは悲しそうな表情に変わる。
「ターシャ、私達の事は心配要らないわ。ほら、この旧友ザマンサもいつまでもここに居て良いと言ってくれてるし。
だからお前はそろそろお年頃なのだから、自分の進路の事だけ考えていれば良いのよ。学費はきっとお父様が引き受けるでしょうから、感情的にならずに利用するのよ!」
するとターシャの海馬には、母の言った「進路」という言葉に反応し、まるで過去に起こったようなある出来事が蘇ってくるのだった……
ー☆☆☆ーーー
私は確かにあの海の岸壁から飛び降りてしまった。
そう、「進路」につまづいてしまった事が原因だった。
そんなちょっとした気の迷いが引き金となって発作的に飛び込んだのだったのね。
嗚呼、私はなんて愚かなことをしてしまったのかしら……
私は裕福な家庭で小さな頃から何不自由のない生活に馴染んでいたせいで、そう、兄や姉も世間からチヤホヤされていたっけ。
私の一家が露頭に迷った事でこんな結末になってしまった。
ある日、父親が会社の倒産で家に火を放ち無理心中を図ったーーーー
母親と二人の兄妹にも一遍に先立たれたばかりか、その日から借金取りが頻繁に催促し始める。
これまでチヤホヤしてくれた隣人達も、本当の所、私達家族の生活を以前から快く思わなかったようで、私に冷たく接したのだった……
私は受験勉強の最中だったが、唐突に進路を失ったことで生きる気力さえも失っていった。
だから私は早まってしまったのだった……
ーー☆☆☆ーー
そう、あの時、私は岸壁から飛び降りてしまい、激しい波に飲み込まれそうになりました。
暗闇に包まれ、とても深い奈落へと沈んでいく感覚が怖ろしかった。
しかしその時、何かが私を引っ張り上げてくれたようで、奇跡的に生きていました。
その出来事から数年が経ち、私は新しい人生を歩み始めていました。
経済的に困難な状況にあったけれど、私の失踪をきっかけに再出発を果たし、少しずつ生活は安定してきました。
学費は学校側で奨学金として引き受け、私は再び学びたいと思っていました。
転校した場所で新しい友達と共に、私は自分の進路を考える機会を得ました。
無理心中のことは頭から離れず、進路につまづいた過去を振り返りました。
この経験を踏み台として、私は自分の人生を前向きに考え、困難に立ち向かう覚悟を持つことに決めました。
その後私は大学に進学し、社会に出て自分の道を切り開いていきました。
それからも過去の出来事から学んだことを大切にし続けました。
逆境に立ち向かい、進路を見つけるための苦難の経験が、私の人生を形作る大きな要因となりました。
ーーー☆☆☆ー
しかしそんな日々も長くは続くはずもなく、とうとう私はあの岸壁から身を投げてしまったのでした……
そして気がつくとその記憶もない状態でこの世界のアンティークショップの長椅子で目醒めたのだった〜〜〜
そして私はこちらの世界でも悪役令嬢として嫌われ者で…何とか過去の汚点は解消したようだけど、こちらの王家でもどうやら以前の私の過去のように、このままでは一家離散が待ち受けているような気がしてならなかったのだった……
ー☆☆☆ーーー
ある日、私はアンティークショップで目を覚ました後、新たな世界での生活に適応しました。
最初は過去の記憶を失っていたことに戸惑いましたが、この世界での自分を見つけていくことが重要だと理解しました。
新しい世界では、私は悪役令嬢としての運命から逃れるために、慎重に行動しました。
以前の私が隣人からの嫌われ者であったように、こちらの王家でも同じ道をたどることは避けたかったのです。
新しい友人たちと絆を深め、自分の過去の汚点を解消し、良い方向に進むよう努力しました。
王宮の人々との交流も増え、過去の私とは異なる関係を築いていきました。
しかし今、過去の経験からくる不安が空回りし始めたのか、一家離散の危険が忍び寄ることを恐れ始めたのでした。
私は自分自身の進路を開拓しなければ、新しい世界で幸せを見つけるたにもーーーー
ーーー☆☆☆ー
「ねぇターシャ、大丈夫?急にここに眠り込んでうなされてしまって……」
メチルの声掛けで目を醒ますと、アーサーとベルリーナも心配そうに見つめている。
嗚呼ーーーー私は白昼夢を見てしまったようだ。あ、そうだ。もしかしてこちらの世界では私達の未来についてあの呪いのダイアリーに何かしらの謎が秘められているのかもしれない!
「お母様、それであのダイアリー、今度はどう変わったの?」
///to be continued!!!☆☆☆




