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5)師弟愛

「そいで儂のところにきたわけか」

まずは一人目だ。私はコンスタンサの育ての親の一人、コンスタンサの剣の師匠クレトを選んだ。コンスタンサに結婚を申し込みたい。育ての親の承諾が欲しいという私に、クレトが不思議な笑みを浮かべた。


『あなたはコンスタンサの育ての親の一人だと私は思う』

どちらかというと祖父かもしれないが、些細なことにこだわっても意味がない。


「まぁ、儂は剣の師匠やなぁ。やってみるかと言うた時に、はいって言うてから教えとる。非力なのはどうしようもないが、一生懸命やし、筋のえぇ弟子や」

クレトは自身の腕前もそうだが、指導者としても優れている。非力なコンスタンサに、戦って逃げろと教えてくれたことには感謝している。辺境伯家の騎士団も、動きがよくなった。前も悪くはなかったが、改善されると前に気づいていなかった問題点が見えてくる。


『あなたのお陰でコンスタンサは助かった。礼を言う。ありがとう』

「湖か? 泳ぎを教えたのは儂やない。村の子供たちや」

『コンスタンサは活発だ。うちはクレト爺ちゃんの弟子やとよく言っている。あの活発さは、あなたのおかげだろう。だから泳ぎも覚えることが出来た』

もうちょっと泳ぎが上手やったら、引きずり込んだのになどと、物騒なことをコンスタンサは言っているが、わざわざそれを育ての親に言いつける必要はないだろう。


「お転婆に育てやがってと言われるかと思ったわ」

クレトが呵呵と笑った。

『それはない。お転婆でなかったら、今頃、大地母神様の御許に還ってしまっていた。危険な目に合わせたことは、申し訳なく思っている』

「湖に突き落としたんは、あのくそ阿婆擦あばずれ王妃や。お前が気にすることやない」

阿婆擦あばずれと罵る言葉は何度も耳にしていた。さすがにそれにさらにもう一言付け加えるなど、クレトは相当あの女パメラを嫌っているのだろう。


「儂は黒真珠の君にお会いしたことがある。儂は国境地帯から王都まで、警護申し上げた部隊の一員やった。お美しい方で、ただの警護の騎士にも、優しく言葉をかけて下さった。儂は、孫娘の一人にその御方の名前を少しだけいただいて、フロラと名付けた」

初めて聞く母の話だった。


「お前を拾ってしばらくした頃な、どっかで見たことある顔やと思った。色々悩んだけど、どうにも思い出せん。座長が、今回拾った奴は辺境伯様のお屋敷でお世話になる。コンスタンサは手伝いに置いていくと言うた時に思い出した」

クレトが私を見ていた。

「苦労しはったやろう。そやけどな、貴方様が苦労しはったからといって、コンスタンサを巻き込んで苦労させる言い訳にはならん」

手厳しい一言だが、その通りだ。私が誰かを知りながら、それを口にできるクレトは逸材だ。


『わかっている。苦労はあるだろう。だが、できるだけ少しでもそれを少なくして見せる』

情けないが、まだ若い将来の王弟には、そのくらいの約束しか出来ない。

「正直なやっちゃ」

クレトが微笑んだ。

「もうちょい稽古にこい。儂の弟子を任せるために鍛えたるわ」

一瞬クレトの言葉の意味を考えた。コンスタンサを任せるが、もう少し鍛えろという意味だろうか。


『朝でいいだろうか』

日中はあれこれと会合がある。

「まぁ、儂に勝てとは言わん。せいぜい儂に認められるくらいには頑張れ」

若干前途多難だが、まずは一人、私はコンスタンサの育ての親の了承を得たと考えて良いだろう。

『よろしくお願いします』

「しかしまぁ、コンスタンサも珍しいもんを拾ったなぁ」

何処か気の抜けたクレトの言葉に、私も一緒になって笑ってしまった。



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